燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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(トュラクスはどうしているだろう?)
 地下にいると聞いたが、辛い目に合っていないだろうか。人のことなど心配している状況ではないはずなのに、彼のことが心配になる。
 リィウスは考えだすと、そのことが気になって仕方ない。おなじ建物のなかにいるのだと思うと、このまま眠っていられなくなった。
(様子を……確かめないと)
 寝台から下りると、いてもたってもいられず、まるで何かに憑かれたようにリィウスは疲れた身体に掛け布を被り、よろよろと室を出た。


 見知らぬ屋敷であっても、貴族の家の造りはだいたい似ており、召使部屋から地下へつづく廊下はすぐに見つかった。
 屋敷のなかは人気もなく静まりかえっており、幸運なことにリィウスは誰にも見咎められずに地下へ下りることができた。
 暗い石造りの穴倉のような場所へ、石段を下りて恐る恐る進んでみる。かなり頑丈なつくりである。地下室がただの貯蔵庫として使われているのではなく、怪しい企みのために造られたことは確かだ。
 冥界へと下りていく錯覚を覚えながら、それでもリィウスは薄暗いなかを、おぼつかない足取りで進んだ。
 わずかだが光と空気を入れるための隙間があるらしく、ぼんやりと辺りが見えてくる。
 何かしら嫌な匂いが臭ってきた。獣じみた体臭に、リィウスはそこに人がいることに気づいた。
「……誰だ?」
 声とともに、何かが動く気配と、かすかな音が聞こえた。
 声の主がまちがいなくトュラクスだと確信したリィウスは、緊張しながら返事をした。
「わ、私だ……、リィウスだ」
 名を名乗った途端、どっと言い知れぬ羞恥の情感に襲われ、リィウスは来たことを後悔した。
 昨夜の異常な状況と行為を思い出すと、いくら強制されたことだとはいっても、どんな顔をしてトュラクスと顔を合わせればいいのか……。今になってそんなことを考えて怯えている自分を叱咤するものの、足が進まない。
「おまえは、昨日の……?」
 トュラクスはたしかトラキア出身だと聞いているが、蛮族に〝おまえ〟呼ばわりされても不思議と腹は立たない。むしろ、あからさまに拒絶されなかったことにリィウスは安堵したのだが、そのことを自覚していなかった。
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