253 / 360
四
しおりを挟む
ナルキッソスがすでにリィウスの身に起こったことを知っていることなど、リィウスは知る由もない。
「まぁ、私もときどきは様子を見に来るわ。次の宴の夜にまた来ることになるでしょうし。ああ、また新しい娼婦を連れてこないとね。頭が痛いわ」
タルペイアの呟きなど聞いていられなかった。リィウスは――普通のときなら決してしないが――己の不幸にすっかり落ち込んでしまった。涙をこぼさないでいるだけまだましだ。
そんなリィウスの様子を見てどう思ったのか、タルペイアが溜息を吐く。
「まぁ、ウリュクセスの相手はせずにすむでしょうけれど、これからは彼の連れてくる客の相手をすることになるわね」
タルペイアのリィウスを見下ろす目は、さすがに哀れみがこもっていた。
リィウスは唇を噛みしめていた。柘榴荘にいたときはディオメデスの相手だけですんだが、これからはそうもいかなくなるのだ。
見知らぬ男たちに抱かれる自分を想像して、リィウスは絶望のあまり叫びたくなる。
「もう少ししたらベレニケを連れて帰るけれど、おまえはこのままここにいるといいわ。もう、おまえは柘榴荘に戻らなくていいのよ」
柘榴荘を出たい、とは望んでいたが、こんな形で出ることになるとは。獄舎が変わっただけで、リィウスにとっては、なんの慰めにもならない。
背を向けて去っていくタルペイアに、ついリィウスは縋りたくなったが、できるわけもなく、黙って彼女を見送った。粗造りの木の扉のところで、お別れを告げるようにタルペイアが一度だけ振り返り、出ていく。
静まりかえった室内で、リィウスはしばし呆然としていた。
これからはこの屋敷であの恐ろしい男女の慰み者になるのかと思うと、気が遠くなりそうだ。
身体がひどくだるい。昨夜の心身の疲れはまだ取れていない。取れるときなどないかもしれない。
リィウスは横になり、もう一度眠りの神ソムヌスの腕に身をゆだねようとした。だが、閉じた瞼に一人の男の横顔が浮かび、身を起こしていた。
「まぁ、私もときどきは様子を見に来るわ。次の宴の夜にまた来ることになるでしょうし。ああ、また新しい娼婦を連れてこないとね。頭が痛いわ」
タルペイアの呟きなど聞いていられなかった。リィウスは――普通のときなら決してしないが――己の不幸にすっかり落ち込んでしまった。涙をこぼさないでいるだけまだましだ。
そんなリィウスの様子を見てどう思ったのか、タルペイアが溜息を吐く。
「まぁ、ウリュクセスの相手はせずにすむでしょうけれど、これからは彼の連れてくる客の相手をすることになるわね」
タルペイアのリィウスを見下ろす目は、さすがに哀れみがこもっていた。
リィウスは唇を噛みしめていた。柘榴荘にいたときはディオメデスの相手だけですんだが、これからはそうもいかなくなるのだ。
見知らぬ男たちに抱かれる自分を想像して、リィウスは絶望のあまり叫びたくなる。
「もう少ししたらベレニケを連れて帰るけれど、おまえはこのままここにいるといいわ。もう、おまえは柘榴荘に戻らなくていいのよ」
柘榴荘を出たい、とは望んでいたが、こんな形で出ることになるとは。獄舎が変わっただけで、リィウスにとっては、なんの慰めにもならない。
背を向けて去っていくタルペイアに、ついリィウスは縋りたくなったが、できるわけもなく、黙って彼女を見送った。粗造りの木の扉のところで、お別れを告げるようにタルペイアが一度だけ振り返り、出ていく。
静まりかえった室内で、リィウスはしばし呆然としていた。
これからはこの屋敷であの恐ろしい男女の慰み者になるのかと思うと、気が遠くなりそうだ。
身体がひどくだるい。昨夜の心身の疲れはまだ取れていない。取れるときなどないかもしれない。
リィウスは横になり、もう一度眠りの神ソムヌスの腕に身をゆだねようとした。だが、閉じた瞼に一人の男の横顔が浮かび、身を起こしていた。
0
あなたにおすすめの小説
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
ふたなり治験棟 企画12月31公開
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる