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第24話 衝撃的な告白
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サラスティナは、静かにレーモンドの方へ目を向けた。
「ねえ、レイ。……あなたは、巻き戻る前のこと、どれくらい覚えているの?」
その問いに、レーモンドの心は一瞬、深い水底に引き込まれたようだった。自分だけが、"前"の世界を覚えているのだと、ずっと思っていた。だが、その確信は今、ぐらりと揺らいだ。
――サラスティナも、記憶を持っているのか?
「……最後の記憶は、サラスティナとアイザック殿下の挙式の前夜だ」
そう口にした瞬間、胸の奥にしまい込んでいた痛みが、まざまざと蘇る。
「どうしようもない後悔ばかりが胸を支配して、酔いも回らず、あてどもなく飲み屋街を歩いていた。そんな時だった。『夜行蝶』っていう、灯りの暗い小さな店に引き寄せられるように入って、マスターと少し言葉を交わした。それから……記憶は、騎士団の寮のベッドの中だった。寝坊して、慌てて挙式会場に向かおうとした途中で、同僚から日付を聞いて……その時にようやく、自分が時間を巻き戻っていることに気付いたんだ。ちょうど、父上がリュモン子爵家に『白い結婚』の話を持ちかけた、その日だった」
そう語り終えたレーモンドを、サラスティナはしばらく黙って見つめたまま動かなかった。
その瞳には、何とも言えない複雑な光が宿っていた。
やがて、ふと遠くを見つめるように目を細めると、静かに、けれど確かに微笑んだ。
「……私はね、これで三度目なの」
その一言に、時の流れが静止したようだった。
どこか遠い過去をたぐり寄せるように、サラスティナはゆっくりと語り出した。
「一度目も、デュランお父様が"白い結婚"を持ちかけてきたの。正直……すごく嬉しかった。だって、私あなたに片想いをしていたから。やっと近づけると思って、心の底から喜んだ。レイにふさわしいレディになるために努力したわ。学園では首席をキープして、自分磨きも怠らず、毎日を必死に生きた。でもね、普通に通っていたにも関わらず、アプローチや告白、嫌がらせ、呼び出し……本当に、いろいろあった。私はただ、学んでいただけなのに…」
言葉の合間に、懐かしさと痛みが入り混じった吐息がこぼれる。
「卒業式のあと、白い結婚から私はあなたとの道を選んだの。最初は兄妹みたいな距離感だったけど、それでも嬉しかった。ほんの少しでも、レイのそばにいられることが……何よりの幸せだったのよ」
その幸せは、やがて希望へと変わった。――正式な夫婦となり、すれ違いの生活の中でも、心通わせる日を夢見ていた。だが――
「あなたは、職務に追われて、なかなか家に戻ってくる事がなく、私も、デューお父様と一緒に領地や家の管理に奔走して、忙しさの中で毎日が過ぎていったの。それでもね、妻として、あなたを支えるのが当然だと思ってたの。寂しさは……ずっと胸の奥に閉まって我慢していた」
そう語るサラスティナの目元がふとゆるみ、少しだけ柔らかな光を灯す。
「2年目に赤ちゃんができたと分かったとき、私は本当に嬉しかったの。ようやく、妻として認められた気がして……あなたも、とても喜んでくれたわ。でも……あの日…あなたの熱心なファンだった子に観劇の帰り、階段から突き落とされたの」
胸元をぎゅっと押さえ、苦しみを悲しみを堪えるように言葉を紡ぐ。
「……赤ちゃんを守れなかった。あなたに、抱かせてあげられなかった。ごめんなさいって……謝りながら、後悔を抱いたまま…きっとそのまま亡くなったのね……」
静かな沈黙の後、また言葉がこぼれる。
「気がついたら、また"あの日"だった。お父様が白い結婚を提案しに来た、あの日」
ふっと息を吐き、わずかに肩を揺らしながら、
「それが、私の一度目。そして……二度目は、あなたも知ってるでしょう?もうね、どこかで、あなたからの愛は諦めていたの。だから、最初から期待なんてしなかった。レイは私に会おうともしなかったし、私はただ、静かに時が過ぎるのを待つしかなかったの」
それでも――
「アイザック殿下の真っ直ぐな想いに心を動かされたわ。ようやく、新しい人生を歩めるかもしれない、そう思った矢先、また……巻き戻ったの。『何なのよ、もう!』って……本気で叫びたかった」
その声は、どこか笑いを含みながらも、涙のにじむ響きだった。
「神様は、私に何を望んでいるのかしらね?」
そう呟いたサラスティナの頬を、静かに涙が伝った。レーモンドはただ、黙ってその言葉を受け止めた。
その中に込められた想いの重さが、胸に突き刺さる。
「サラ……君は、二度目の人生で、俺を諦めたと言っていた。でも、あの時計を……あの“特別製”の時計を贈ってくれただろ? あれは……俺を、完全に捨てきれなかった証なんじゃないか?最後まで、信じてくれてたんじゃないのか?」
サラスティナは、そっと涙をぬぐい、微笑んだ。
「……違うのよ、レイ。あれはね、最後の足掻きだったの。諦めきれずに、でも、どうしても吹っ切れなくて。あの時計でダメだったら、もう全部手放そう、そう思ってたの。……結果として、あなたは手に取らなかった。そして、私はあなたを諦めたのよ。じゃなきゃ、アイザック殿下との未来を本気で考えたりしないわ」
そう言って、彼女はレーモンドの目を真っ直ぐに見つめた。
「そして、三度目の今回……あなたへの想いは真っさらだったの。何も残っていなかった。ただの空っぽの心、無関心。だけどね、レイ……あなたの言葉が、優しさが、少しずつ積もっていったの。気づけば、息が苦しくなるほど、あなたの愛が心に降り積もっていた」
そして、静かに、しっかりと、未来への扉を開くように言った。
「レーモンド様。……わたくしサラスティナは、あなたを、もう一度愛してしまいました。これからの人生を、共に歩んでいただけますか?」
その瞳に映る想いの深さに、レーモンドは言葉を失いかけた。
込み上げる涙を何とかこらえながら、まっすぐに答えた。
「……サラスティナ。私、レーモンドは、たとえ幾度時が巻き戻ろうとも、何度でも、君を愛し続ける。だから……これからも、ずっと、俺のそばにいてくれ。サラ」
その言葉と共に、レーモンドはサラスティナを強く、優しく抱きしめた。
それは、過去のすべての痛みと、未来への祈りを包み込むような、ぬくもりだった。
「ねえ、レイ。……あなたは、巻き戻る前のこと、どれくらい覚えているの?」
その問いに、レーモンドの心は一瞬、深い水底に引き込まれたようだった。自分だけが、"前"の世界を覚えているのだと、ずっと思っていた。だが、その確信は今、ぐらりと揺らいだ。
――サラスティナも、記憶を持っているのか?
「……最後の記憶は、サラスティナとアイザック殿下の挙式の前夜だ」
そう口にした瞬間、胸の奥にしまい込んでいた痛みが、まざまざと蘇る。
「どうしようもない後悔ばかりが胸を支配して、酔いも回らず、あてどもなく飲み屋街を歩いていた。そんな時だった。『夜行蝶』っていう、灯りの暗い小さな店に引き寄せられるように入って、マスターと少し言葉を交わした。それから……記憶は、騎士団の寮のベッドの中だった。寝坊して、慌てて挙式会場に向かおうとした途中で、同僚から日付を聞いて……その時にようやく、自分が時間を巻き戻っていることに気付いたんだ。ちょうど、父上がリュモン子爵家に『白い結婚』の話を持ちかけた、その日だった」
そう語り終えたレーモンドを、サラスティナはしばらく黙って見つめたまま動かなかった。
その瞳には、何とも言えない複雑な光が宿っていた。
やがて、ふと遠くを見つめるように目を細めると、静かに、けれど確かに微笑んだ。
「……私はね、これで三度目なの」
その一言に、時の流れが静止したようだった。
どこか遠い過去をたぐり寄せるように、サラスティナはゆっくりと語り出した。
「一度目も、デュランお父様が"白い結婚"を持ちかけてきたの。正直……すごく嬉しかった。だって、私あなたに片想いをしていたから。やっと近づけると思って、心の底から喜んだ。レイにふさわしいレディになるために努力したわ。学園では首席をキープして、自分磨きも怠らず、毎日を必死に生きた。でもね、普通に通っていたにも関わらず、アプローチや告白、嫌がらせ、呼び出し……本当に、いろいろあった。私はただ、学んでいただけなのに…」
言葉の合間に、懐かしさと痛みが入り混じった吐息がこぼれる。
「卒業式のあと、白い結婚から私はあなたとの道を選んだの。最初は兄妹みたいな距離感だったけど、それでも嬉しかった。ほんの少しでも、レイのそばにいられることが……何よりの幸せだったのよ」
その幸せは、やがて希望へと変わった。――正式な夫婦となり、すれ違いの生活の中でも、心通わせる日を夢見ていた。だが――
「あなたは、職務に追われて、なかなか家に戻ってくる事がなく、私も、デューお父様と一緒に領地や家の管理に奔走して、忙しさの中で毎日が過ぎていったの。それでもね、妻として、あなたを支えるのが当然だと思ってたの。寂しさは……ずっと胸の奥に閉まって我慢していた」
そう語るサラスティナの目元がふとゆるみ、少しだけ柔らかな光を灯す。
「2年目に赤ちゃんができたと分かったとき、私は本当に嬉しかったの。ようやく、妻として認められた気がして……あなたも、とても喜んでくれたわ。でも……あの日…あなたの熱心なファンだった子に観劇の帰り、階段から突き落とされたの」
胸元をぎゅっと押さえ、苦しみを悲しみを堪えるように言葉を紡ぐ。
「……赤ちゃんを守れなかった。あなたに、抱かせてあげられなかった。ごめんなさいって……謝りながら、後悔を抱いたまま…きっとそのまま亡くなったのね……」
静かな沈黙の後、また言葉がこぼれる。
「気がついたら、また"あの日"だった。お父様が白い結婚を提案しに来た、あの日」
ふっと息を吐き、わずかに肩を揺らしながら、
「それが、私の一度目。そして……二度目は、あなたも知ってるでしょう?もうね、どこかで、あなたからの愛は諦めていたの。だから、最初から期待なんてしなかった。レイは私に会おうともしなかったし、私はただ、静かに時が過ぎるのを待つしかなかったの」
それでも――
「アイザック殿下の真っ直ぐな想いに心を動かされたわ。ようやく、新しい人生を歩めるかもしれない、そう思った矢先、また……巻き戻ったの。『何なのよ、もう!』って……本気で叫びたかった」
その声は、どこか笑いを含みながらも、涙のにじむ響きだった。
「神様は、私に何を望んでいるのかしらね?」
そう呟いたサラスティナの頬を、静かに涙が伝った。レーモンドはただ、黙ってその言葉を受け止めた。
その中に込められた想いの重さが、胸に突き刺さる。
「サラ……君は、二度目の人生で、俺を諦めたと言っていた。でも、あの時計を……あの“特別製”の時計を贈ってくれただろ? あれは……俺を、完全に捨てきれなかった証なんじゃないか?最後まで、信じてくれてたんじゃないのか?」
サラスティナは、そっと涙をぬぐい、微笑んだ。
「……違うのよ、レイ。あれはね、最後の足掻きだったの。諦めきれずに、でも、どうしても吹っ切れなくて。あの時計でダメだったら、もう全部手放そう、そう思ってたの。……結果として、あなたは手に取らなかった。そして、私はあなたを諦めたのよ。じゃなきゃ、アイザック殿下との未来を本気で考えたりしないわ」
そう言って、彼女はレーモンドの目を真っ直ぐに見つめた。
「そして、三度目の今回……あなたへの想いは真っさらだったの。何も残っていなかった。ただの空っぽの心、無関心。だけどね、レイ……あなたの言葉が、優しさが、少しずつ積もっていったの。気づけば、息が苦しくなるほど、あなたの愛が心に降り積もっていた」
そして、静かに、しっかりと、未来への扉を開くように言った。
「レーモンド様。……わたくしサラスティナは、あなたを、もう一度愛してしまいました。これからの人生を、共に歩んでいただけますか?」
その瞳に映る想いの深さに、レーモンドは言葉を失いかけた。
込み上げる涙を何とかこらえながら、まっすぐに答えた。
「……サラスティナ。私、レーモンドは、たとえ幾度時が巻き戻ろうとも、何度でも、君を愛し続ける。だから……これからも、ずっと、俺のそばにいてくれ。サラ」
その言葉と共に、レーモンドはサラスティナを強く、優しく抱きしめた。
それは、過去のすべての痛みと、未来への祈りを包み込むような、ぬくもりだった。
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