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第20話 一番甘いご褒美を
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騒動の元凶である二人が連行された後、広場には爆発的な歓声が戻ってきた。
「すげぇぞ! あの化け物を一瞬で消しちまった!」
「やっぱり『陽だまり亭』の店主さんは女神様だ!」
「辺境伯様もかっこよかったなぁ!」
恐怖が去った安堵感と、悪が成敗された高揚感で収穫祭の盛り上がりは最高潮に達していた。
私の屋台の前には、先ほど以上の長蛇の列ができている。
「女神様のメンチカツをくれ! ご利益がありそうだ!」
「こっちは10本だ!」
もはや「美味しい惣菜」ではなく「聖なる開運フード」のような扱いになっている気がするけれど、まあいいか。
私は苦笑しながらも、次々とカツを揚げ続けた。隣では、最強の騎士団長様が相変わらず真剣な顔で紙袋詰めをこなしてくれている。
「……袋は要るか? 熱いから気をつけろ」
その手際は、開店当初よりも格段にレベルアップしていた。
***
やがて日が暮れ、街に魔法の灯りがともる頃。
用意していた五百本のメンチカツは、見事に完売した。
「ふぅぅ……終わったぁー!」
私は大きく伸びをした。
体はクタクタだけど心地よい疲労感だ。屋台の片付けを終え、私は隣でパイプ椅子に座って休んでいるクラウス様に声をかけた。
「クラウス様、本当にお疲れ様でした。おかげさまで完売です!」
「……ああ。悪くない時間だった」
彼は満足げに頷いた。
その横顔を魔法のランプの灯りが柔らかく照らしている。ふと、昼間の言葉が蘇り、私の心臓がトクンと跳ねた。
『彼女は、俺が見つけた宝だ』
あの時は勢いに押されていたけれど、改めて思い返すと、とんでもない告白だったのではないだろうか。
私は急に顔が熱くなるのを感じながら、モジモジと切り出した。
「あの……昼間のことなんですけど」
「ん?」
「その……『宝』って……」
私が口ごもると、彼はハッとしたように目を見開いた。そして、みるみるうちに耳まで真っ赤になり、視線を泳がせ始めた。
「あ、あれは……その、勢いというか……いや、嘘ではないのだが!」
彼は咳払いを一つし、それから覚悟を決めたように私を真っ直ぐに見つめた。
「お前が来てから、俺の世界は変わった。灰色の砂を噛むようだった毎日が色鮮やかで温かいものになったんだ。……それを『宝』と言わずして、なんと言う」
直球だ。
変化球なしの、ど真ん中ストレート。
胸がキュンとして、嬉しくて、泣きそうになる。
「……クラウス様は、本当にずるい人ですね」
「む? 何か間違ったか?」
「いいえ。……私も、ここに来てよかったです。クラウス様に会えて、本当によかった」
私が微笑むと、彼は眩しそうに目を細めた。
二人の間に言葉はいらなかった。ただ見つめ合うだけで甘い空気が流れる。
と、その時。
グゥゥゥ~~。
盛大な腹の虫がロマンチックな空気をぶち壊した。
「あ……」
音の出処は、もちろんクラウス様だ。
そういえば彼は休憩なしで働き通しで、お昼のメンチカツ一本しか食べていない。
「す、すまん……」
彼が顔を覆って縮こまる。
私は吹き出しそうになるのを堪えて、屋台の奥から小鍋を取り出した。
「ふふ、働き者の騎士様には、ご褒美が必要ですね」
小鍋の中身は、売れ残ってしまったホットワインと自分用に取っておいた最後のメンチカツ、そしてパンだ。
「ここで食べていきましょうか。二人だけの打ち上げです」
「……!! 是非!」
彼の目が輝きを取り戻す。
星空の下、祭りの余韻に浸りながら二人で分け合う食事は、どんな高級レストランのディナーよりも美味しくて特別な味がした。
こうして波乱万丈の収穫祭は幕を閉じたのだ。
「すげぇぞ! あの化け物を一瞬で消しちまった!」
「やっぱり『陽だまり亭』の店主さんは女神様だ!」
「辺境伯様もかっこよかったなぁ!」
恐怖が去った安堵感と、悪が成敗された高揚感で収穫祭の盛り上がりは最高潮に達していた。
私の屋台の前には、先ほど以上の長蛇の列ができている。
「女神様のメンチカツをくれ! ご利益がありそうだ!」
「こっちは10本だ!」
もはや「美味しい惣菜」ではなく「聖なる開運フード」のような扱いになっている気がするけれど、まあいいか。
私は苦笑しながらも、次々とカツを揚げ続けた。隣では、最強の騎士団長様が相変わらず真剣な顔で紙袋詰めをこなしてくれている。
「……袋は要るか? 熱いから気をつけろ」
その手際は、開店当初よりも格段にレベルアップしていた。
***
やがて日が暮れ、街に魔法の灯りがともる頃。
用意していた五百本のメンチカツは、見事に完売した。
「ふぅぅ……終わったぁー!」
私は大きく伸びをした。
体はクタクタだけど心地よい疲労感だ。屋台の片付けを終え、私は隣でパイプ椅子に座って休んでいるクラウス様に声をかけた。
「クラウス様、本当にお疲れ様でした。おかげさまで完売です!」
「……ああ。悪くない時間だった」
彼は満足げに頷いた。
その横顔を魔法のランプの灯りが柔らかく照らしている。ふと、昼間の言葉が蘇り、私の心臓がトクンと跳ねた。
『彼女は、俺が見つけた宝だ』
あの時は勢いに押されていたけれど、改めて思い返すと、とんでもない告白だったのではないだろうか。
私は急に顔が熱くなるのを感じながら、モジモジと切り出した。
「あの……昼間のことなんですけど」
「ん?」
「その……『宝』って……」
私が口ごもると、彼はハッとしたように目を見開いた。そして、みるみるうちに耳まで真っ赤になり、視線を泳がせ始めた。
「あ、あれは……その、勢いというか……いや、嘘ではないのだが!」
彼は咳払いを一つし、それから覚悟を決めたように私を真っ直ぐに見つめた。
「お前が来てから、俺の世界は変わった。灰色の砂を噛むようだった毎日が色鮮やかで温かいものになったんだ。……それを『宝』と言わずして、なんと言う」
直球だ。
変化球なしの、ど真ん中ストレート。
胸がキュンとして、嬉しくて、泣きそうになる。
「……クラウス様は、本当にずるい人ですね」
「む? 何か間違ったか?」
「いいえ。……私も、ここに来てよかったです。クラウス様に会えて、本当によかった」
私が微笑むと、彼は眩しそうに目を細めた。
二人の間に言葉はいらなかった。ただ見つめ合うだけで甘い空気が流れる。
と、その時。
グゥゥゥ~~。
盛大な腹の虫がロマンチックな空気をぶち壊した。
「あ……」
音の出処は、もちろんクラウス様だ。
そういえば彼は休憩なしで働き通しで、お昼のメンチカツ一本しか食べていない。
「す、すまん……」
彼が顔を覆って縮こまる。
私は吹き出しそうになるのを堪えて、屋台の奥から小鍋を取り出した。
「ふふ、働き者の騎士様には、ご褒美が必要ですね」
小鍋の中身は、売れ残ってしまったホットワインと自分用に取っておいた最後のメンチカツ、そしてパンだ。
「ここで食べていきましょうか。二人だけの打ち上げです」
「……!! 是非!」
彼の目が輝きを取り戻す。
星空の下、祭りの余韻に浸りながら二人で分け合う食事は、どんな高級レストランのディナーよりも美味しくて特別な味がした。
こうして波乱万丈の収穫祭は幕を閉じたのだ。
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