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第4話 冒険者ギルドへのご挨拶
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翌朝、目が覚めると胸元にずっしりとした重みを感じた。
目を開けると、そこには真っ白な毛玉――昨日拾った子犬のルルが幸せそうな顔で眠っている。
「ん……おはよ、ルル」
『クゥン!』
私が体を起こすと、ルルは元気よく尻尾を振った。昨夜のオムライス効果か、毛並みが昨日よりもさらにフワフワで輝いている気がする。
抱きしめると極上の触り心地だ。
これぞ辺境スローライフの醍醐味、癒やしの「もふもふ」タイムである。
「さて、今日も頑張りましょうか!」
着替えを済ませて一階へ降りると、マーサとハンスが呆気にとられた顔で立ち尽くしていた。
「れ、レティシア様……これは……」
二人が驚くのも無理はない。
昨日は埃まみれだったダイニングホールが見違えるほど綺麗になっているからだ。
実は昨夜、興奮して眠れなかった私は、前世の記憶にある掃除テクニックと貴族として学んだ初歩的な生活魔法『クリーン』を組み合わせて、一晩中掃除をしていたのだ。
窓は曇りひとつなく磨き上げられ、朝の日差しが店内に満ちている。古びた木の床も飴色に輝き、温かみのある空間が広がっていた。
「この雰囲気にぴったりの名前を思いついたの。カフェ『陽だまり亭』。どうかしら?」
「『陽だまり亭』……。素敵なお名前です。まるでレティシア様の笑顔のようですね」
マーサが嬉しそうに微笑む。
よし、屋号は決まった。
次は食材の調達とこの町での営業許可だ。
「行ってきます、マーサ、ハンス。ルルはお留守番をお願いね」
『クゥ~ン……』
「だめよ。まだこの環境に慣れてないんだから」
悲しげに鳴くルルをマーサに託し、私は屋敷を出た。
私たちの屋敷があるのは、国境を守る要衝の地、ノルドの町外れだ。
町へ向かって歩くこと二十分。石造りの堅牢な建物が並ぶ、活気ある通りに出た。
王都のような華やかさはないけれど、行き交う人々は皆、逞しい。武具を纏った冒険者や分厚いコートを着た商人が大声で行き交っている。
「ここなら、きっとお腹を空かせた人がたくさんいるはずだわ」
私は期待に胸を膨らませながら、町の中心にある大きな建物――『冒険者ギルド』の扉を押し開けた。
ガヤガヤしていた喧騒が一瞬にして止まる。
店内の視線が入り口に立った私に集中した。
無理もない。
武骨な男たちの中に場違いなフリル付きのワンピースを着た令嬢が迷い込んだのだから。
「……なんだぁ? お嬢ちゃん、迷子か?」
昼間から酒樽を傾けていた大柄な男がニタニタと笑いながら声をかけてきた。背中に巨大な斧を背負った、いかにも強そうな冒険者だ。
「いいえ。商売の登録をしに来ましたの。この町でカフェを開こうと思って」
「カフェェ? おままごとの間違いじゃねえのか?」
男の言葉に周囲の冒険者たちがドッと笑う。
「見ろよあの細い腕。鍋一つ振れねえだろ」
「王都のお嬢様が、気まぐれで田舎暮らしごっこかよ」
「悪いこたぁ言わねえ。怪我しないうちに王都へ帰りな」
嘲笑と侮蔑の視線。
でも、不思議と腹は立たなかった。
彼らの顔色は悪く、目の下にはクマができている。痩せこけている者も多い。
この辺境は魔物が多く、常に緊張を強いられる過酷な環境なのだ。王都のように美味しい食事を楽しむ余裕などないのだろう。
(……ふふん。今は笑っていればいいわ)
私は心の中で不敵に笑った。
料理バカの血が騒ぐ。
――そんなに疲れた顔をしているなら、私の料理で黙らせてあげる。一口食べれば、その減らず口も「おかわり!」しか言えなくなるんだから。
「ご忠告感謝しますわ。でも、私の店『陽だまり亭』は明日オープンです。美味しいご飯を用意して待っておりますので、ぜひお越しくださいませ?」
私は彼らに優雅にお辞儀をして見せると、堂々と受付カウンターへ向かった。
背後で「なんだあいつ……」とざわめく声が聞こえるが、もう気にならない。
明日のメニューは決まっている。
疲れた男たちの胃袋を鷲掴みにする、とびきりの『アレ』だ。
目を開けると、そこには真っ白な毛玉――昨日拾った子犬のルルが幸せそうな顔で眠っている。
「ん……おはよ、ルル」
『クゥン!』
私が体を起こすと、ルルは元気よく尻尾を振った。昨夜のオムライス効果か、毛並みが昨日よりもさらにフワフワで輝いている気がする。
抱きしめると極上の触り心地だ。
これぞ辺境スローライフの醍醐味、癒やしの「もふもふ」タイムである。
「さて、今日も頑張りましょうか!」
着替えを済ませて一階へ降りると、マーサとハンスが呆気にとられた顔で立ち尽くしていた。
「れ、レティシア様……これは……」
二人が驚くのも無理はない。
昨日は埃まみれだったダイニングホールが見違えるほど綺麗になっているからだ。
実は昨夜、興奮して眠れなかった私は、前世の記憶にある掃除テクニックと貴族として学んだ初歩的な生活魔法『クリーン』を組み合わせて、一晩中掃除をしていたのだ。
窓は曇りひとつなく磨き上げられ、朝の日差しが店内に満ちている。古びた木の床も飴色に輝き、温かみのある空間が広がっていた。
「この雰囲気にぴったりの名前を思いついたの。カフェ『陽だまり亭』。どうかしら?」
「『陽だまり亭』……。素敵なお名前です。まるでレティシア様の笑顔のようですね」
マーサが嬉しそうに微笑む。
よし、屋号は決まった。
次は食材の調達とこの町での営業許可だ。
「行ってきます、マーサ、ハンス。ルルはお留守番をお願いね」
『クゥ~ン……』
「だめよ。まだこの環境に慣れてないんだから」
悲しげに鳴くルルをマーサに託し、私は屋敷を出た。
私たちの屋敷があるのは、国境を守る要衝の地、ノルドの町外れだ。
町へ向かって歩くこと二十分。石造りの堅牢な建物が並ぶ、活気ある通りに出た。
王都のような華やかさはないけれど、行き交う人々は皆、逞しい。武具を纏った冒険者や分厚いコートを着た商人が大声で行き交っている。
「ここなら、きっとお腹を空かせた人がたくさんいるはずだわ」
私は期待に胸を膨らませながら、町の中心にある大きな建物――『冒険者ギルド』の扉を押し開けた。
ガヤガヤしていた喧騒が一瞬にして止まる。
店内の視線が入り口に立った私に集中した。
無理もない。
武骨な男たちの中に場違いなフリル付きのワンピースを着た令嬢が迷い込んだのだから。
「……なんだぁ? お嬢ちゃん、迷子か?」
昼間から酒樽を傾けていた大柄な男がニタニタと笑いながら声をかけてきた。背中に巨大な斧を背負った、いかにも強そうな冒険者だ。
「いいえ。商売の登録をしに来ましたの。この町でカフェを開こうと思って」
「カフェェ? おままごとの間違いじゃねえのか?」
男の言葉に周囲の冒険者たちがドッと笑う。
「見ろよあの細い腕。鍋一つ振れねえだろ」
「王都のお嬢様が、気まぐれで田舎暮らしごっこかよ」
「悪いこたぁ言わねえ。怪我しないうちに王都へ帰りな」
嘲笑と侮蔑の視線。
でも、不思議と腹は立たなかった。
彼らの顔色は悪く、目の下にはクマができている。痩せこけている者も多い。
この辺境は魔物が多く、常に緊張を強いられる過酷な環境なのだ。王都のように美味しい食事を楽しむ余裕などないのだろう。
(……ふふん。今は笑っていればいいわ)
私は心の中で不敵に笑った。
料理バカの血が騒ぐ。
――そんなに疲れた顔をしているなら、私の料理で黙らせてあげる。一口食べれば、その減らず口も「おかわり!」しか言えなくなるんだから。
「ご忠告感謝しますわ。でも、私の店『陽だまり亭』は明日オープンです。美味しいご飯を用意して待っておりますので、ぜひお越しくださいませ?」
私は彼らに優雅にお辞儀をして見せると、堂々と受付カウンターへ向かった。
背後で「なんだあいつ……」とざわめく声が聞こえるが、もう気にならない。
明日のメニューは決まっている。
疲れた男たちの胃袋を鷲掴みにする、とびきりの『アレ』だ。
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