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第64話 仲良くね
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学校に到着し、私は校門前で二人の手を取って馬車から降りる。
二人とはユリアとジェラルドさんの手だ。
……うーむ。やはりこれは目立つ気が。
二人に支えられて降りる私を登校してきた他の生徒たちが、ちらちらと見ているような気がする。ただでさえ、王家の紋章が入った馬車で登校していて目立っているのに、扱いまで上級貴族のお嬢様っぽくなっている!
こうなると下手すると、上級貴族にまで目を付けられてしまうかもしれない。その方々が相手となると対処の仕方が難しくなる。これはまずい。非常にまずいぞ。
同乗はともかく、降車の付き添いをジェラルドさんに控えていただいた方がいいかもしれない。
私はこくんと一つ息を呑むと、ジェラルドさんに笑顔を向けた。
「ジェラルド様、いつもエスコート、ありがとうございます。ですがユリアもおりますし、ジェラルド様は殿下の護衛官様でございますし、わたくしの様な者にまでお付き添いいただくのは大変心苦しく思っております。どうか馬車の中でお待ちいただければ」
お願いしますお願いしますお願いします。
願いを込めて訴えてみる。
「いいえ。降車の際が一番危険なのです。私は殿下のご命令により、ロザンヌ様の身の安全をお守りするよう遣わされております。何よりも女性にロザンヌ様の差添えをお任せして、私が馬車の中からご降車を見届けるなど、とんでもないお話です」
「で、ですよねー」
私はひきつった笑いを返して、今度はユリアに振り返って愛想笑いを浮かべてみせた。
「え、えっと。あのね、ユリア。確かに今までやってもらっていたけれど、今はジェラルド様がしてくださっているし、ユリアまで先に降りて付き添ってくれなくてもいいのよ?」
「はい? 何でしょうか」
聞こえていないフリをして、ユリアお得意の無表情かつ無言の圧力で問われ、私はイエ何でもありませんでしたと呟く。
どっちも頑として譲りそうにない。私は本日の説得は諦めることにした。
「では行って参ります……けど。ユリア、あ、あのね」
「何でしょうか」
「ジェラルド様と仲良くね?」
ユリアはぴくりと眉を上げる。
「……仲良く? しがないただの侍女とエルベルト殿下直属のお偉い護衛官長様と仲良くとは一体」
「うっ!?」
反論されて言葉に詰まる。
思わず横のジェラルドさんを見ると、彼も少し困った様に微笑んでいらっしゃる。
「あの。私は決して偉いわけではありませんので、できましたら普通に接していただけると」
「普通? 普通とは人によって基準が異なります。あなたにとって普通ではなくても、これが私の普つ――」
私はユリアの口を手で慌てて押さえた。
「も、もう。ユリアったら本当に無器用なんだからっ! ジェラルド様、申し訳ありません。ユリアは有能なのですが、人との接し方だけは本当に無器用でして」
「いいえ」
お気遣いなくと笑ってくださるジェラルドさんは大人だ。
「ユ、ユリア。ジェラルド様はね、気さくにどうぞとおっしゃってくださっているだけなのだから甘えさせていただいて」
ユリアは納得したという体を決して見せないけれど、一応かしこまりましたと言葉にだけは出した。
「では。それでは行って参ります」
「行ってらっしゃいませ」
「はい。ロザンヌ様、どうぞお気を付けて」
それぞれ挨拶を頂いて私は前を向いて歩き出し、しばらくは我慢して振り返らなかった。けれどやはり気になって肩越しに後ろを窺い見ると、ユリアはジェラルドさんの手を取らずにさっさと馬車に乗り込む姿が遠くに見えた。
あぁぁぁっ。
確かにユリアは元々人との距離が遠いけれど、ジェラルドさんにはとりわけそっけない。他の護衛官の方も同乗してくださったことがあるけれど、そこまでじゃなかったのに。と言うより全くの無関心というべきか。
いや、待ってよ。考えようによってはジェラルドさんには特別意識しているとも言えるわけで。――いやいやいや! そっけなさが他の人より高いのは決して喜ばしいことではない。
私がいなくなった馬車の中で、二人の間にどんな会話が繰り広げられているのだろうか。いや、会話など一切無いかもしれない。ぴんと張り詰めている空気を想像すると。
「ううぅっ。息苦しい……」
私の喉やら胸やらが、きゅうっと苦しくなった。
二人とはユリアとジェラルドさんの手だ。
……うーむ。やはりこれは目立つ気が。
二人に支えられて降りる私を登校してきた他の生徒たちが、ちらちらと見ているような気がする。ただでさえ、王家の紋章が入った馬車で登校していて目立っているのに、扱いまで上級貴族のお嬢様っぽくなっている!
こうなると下手すると、上級貴族にまで目を付けられてしまうかもしれない。その方々が相手となると対処の仕方が難しくなる。これはまずい。非常にまずいぞ。
同乗はともかく、降車の付き添いをジェラルドさんに控えていただいた方がいいかもしれない。
私はこくんと一つ息を呑むと、ジェラルドさんに笑顔を向けた。
「ジェラルド様、いつもエスコート、ありがとうございます。ですがユリアもおりますし、ジェラルド様は殿下の護衛官様でございますし、わたくしの様な者にまでお付き添いいただくのは大変心苦しく思っております。どうか馬車の中でお待ちいただければ」
お願いしますお願いしますお願いします。
願いを込めて訴えてみる。
「いいえ。降車の際が一番危険なのです。私は殿下のご命令により、ロザンヌ様の身の安全をお守りするよう遣わされております。何よりも女性にロザンヌ様の差添えをお任せして、私が馬車の中からご降車を見届けるなど、とんでもないお話です」
「で、ですよねー」
私はひきつった笑いを返して、今度はユリアに振り返って愛想笑いを浮かべてみせた。
「え、えっと。あのね、ユリア。確かに今までやってもらっていたけれど、今はジェラルド様がしてくださっているし、ユリアまで先に降りて付き添ってくれなくてもいいのよ?」
「はい? 何でしょうか」
聞こえていないフリをして、ユリアお得意の無表情かつ無言の圧力で問われ、私はイエ何でもありませんでしたと呟く。
どっちも頑として譲りそうにない。私は本日の説得は諦めることにした。
「では行って参ります……けど。ユリア、あ、あのね」
「何でしょうか」
「ジェラルド様と仲良くね?」
ユリアはぴくりと眉を上げる。
「……仲良く? しがないただの侍女とエルベルト殿下直属のお偉い護衛官長様と仲良くとは一体」
「うっ!?」
反論されて言葉に詰まる。
思わず横のジェラルドさんを見ると、彼も少し困った様に微笑んでいらっしゃる。
「あの。私は決して偉いわけではありませんので、できましたら普通に接していただけると」
「普通? 普通とは人によって基準が異なります。あなたにとって普通ではなくても、これが私の普つ――」
私はユリアの口を手で慌てて押さえた。
「も、もう。ユリアったら本当に無器用なんだからっ! ジェラルド様、申し訳ありません。ユリアは有能なのですが、人との接し方だけは本当に無器用でして」
「いいえ」
お気遣いなくと笑ってくださるジェラルドさんは大人だ。
「ユ、ユリア。ジェラルド様はね、気さくにどうぞとおっしゃってくださっているだけなのだから甘えさせていただいて」
ユリアは納得したという体を決して見せないけれど、一応かしこまりましたと言葉にだけは出した。
「では。それでは行って参ります」
「行ってらっしゃいませ」
「はい。ロザンヌ様、どうぞお気を付けて」
それぞれ挨拶を頂いて私は前を向いて歩き出し、しばらくは我慢して振り返らなかった。けれどやはり気になって肩越しに後ろを窺い見ると、ユリアはジェラルドさんの手を取らずにさっさと馬車に乗り込む姿が遠くに見えた。
あぁぁぁっ。
確かにユリアは元々人との距離が遠いけれど、ジェラルドさんにはとりわけそっけない。他の護衛官の方も同乗してくださったことがあるけれど、そこまでじゃなかったのに。と言うより全くの無関心というべきか。
いや、待ってよ。考えようによってはジェラルドさんには特別意識しているとも言えるわけで。――いやいやいや! そっけなさが他の人より高いのは決して喜ばしいことではない。
私がいなくなった馬車の中で、二人の間にどんな会話が繰り広げられているのだろうか。いや、会話など一切無いかもしれない。ぴんと張り詰めている空気を想像すると。
「ううぅっ。息苦しい……」
私の喉やら胸やらが、きゅうっと苦しくなった。
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