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第65話 この笑顔守ってみせる
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「おはようございます、ロザンヌ様」
「おはようございます」
教室に入って席に着くなり、数人の女子生徒が駆け寄ってきた。
行儀見習いとは言え、王宮入りすることが明らかになって以来、友達が増えたなと思う。
単に王宮内部を知りたいために興味本位で近付いてくる子もいれば、王家とお近づきになりたいという下心を持って来る子もいる。片や遠巻きとは言え、それをいまだに面白く思わずに睨み付けてくる子もいる。
私は何一つ変わっていないのに、自分の周りだけが目まぐるしく変化する状況に、少しため息をついた。
友達とそうではない線引きは難しい。今後、私が王宮と何の関係も無くなった時、一体どれだけの人が残ってくれるのかと思う。
……まあ、大半が去っていくだろうとは予想できるものの、もしかしたら自分の努力次第で本当の友達を作ることも可能かもしれない。ただ、その過程で信じていた誰かに裏切られて傷ついたり、泣いたりすることもあるのかなと考えると、友達作りとは大変なものだと憂鬱になる。
「――と思わない?」
「え、ええ。そうですね」
私は思考から戻り、慌てて笑顔で会話に参加した。
「マリエル様、一緒に移動教室に参りましょう」
「ロザンヌ様。え、ええ。今日は朝のご挨拶ができなくて申し訳ありません」
「いいえ。こちらこそ」
今朝は私が他のクラスメートと話していたので、遠くから笑みを浮かべてくれただけで近付くのは遠慮したようだ。控えめなマリエル嬢は、さっきのクラスメートの輪の中にはきっと馴染めないと思ったのかもしれない。
このクラスでは既にいくつものグループが出来上がっていて、私とマリエル嬢はそれらのどれにも属しておらず、二人で行動していた。このままの状態で行くと、彼女が孤立してしまいかねない。
それに……。
カトリーヌ・クレマン伯爵令嬢に視線をやる。
今は少なくとも私に表立っては手出しできない彼女らだが、まだ私への敵意は消えていないだろう。直接私に手出しできないとなると、その矛先をマリエル嬢に変えてくる可能性だってある。人間、弱い所を攻撃してくるものだ。
「ロザンヌ様?」
常に彼女と行動を共にしてはいるけれど、いつ何時狙われるか分からない。
この学園生活を心穏やかに過ごしたいと思うのならば、一人でも多くの味方を作るのではなく、一人でも敵を少なくすることの方が重要だ。
こんな打算的な考えをしなければならないかと思うと、また一つ心の中で息を吐く。
王族や上級貴族の人たちは日常茶飯事のことだろう。ほんの少しだけ、お気持ちが分かった気がした。
「ごめんなさい。今日は授業で先生に当てられるのではないかと思うと、気持ちが落ち着かないの。逃げ出したいくらいです」
「まあ」
マリエル嬢はころころと可愛らしく笑う。
守ってみせるぞこの笑顔!
私は拳を作って決意を新たにした。
「カトリーヌ様。折り入ってお話がありますの。少しお付き合いいただけますか? 二人きりで」
昼休み、私から近付くと彼女は警戒したようだった。周りのお友達も敵愾心を露わにしている。
何と言うか、分かりやすい人たちだ。
「二人きりですって?」
眉を上げ、目を細めて睨み付けてくるカトリーヌ嬢に、私は余裕の笑みを浮かべてみせた。
「ああ。もしかしてお一人で心細く思われるのでしょうか。でしたら、お友だ――」
「誰が心細いって言うの。一人で行くわよ」
「そうですか。失礼いたしました。では参りましょう」
軽く挑発したらあっさりと乗ってきてくれた。こういう場合は周りに人がいると気が大きくなるし、周りが下手に煽ったりするから一対一の方がやりやすい。
と言うわけで前回、私が連れ込まれた校舎裏へと向かったわけですが、カトリーヌ嬢は少し顔を引きつらせておりました。きょろきょろと辺りを探っています。
きっと、私を連れ出した時の事を思い出されたのでしょう。でも私はあなた方みたいに卑怯ではありませんから、仲間を引き連れてくるなんてことはありませんよ。
「カトリーヌ様、どうかなさいました?」
「べ、別に。何もないわよ。それで話とは何!?」
辺りに人の気配がないことを確認できたのか、カトリーヌ嬢は強気の姿勢でこちらに振り返った。
「おはようございます」
教室に入って席に着くなり、数人の女子生徒が駆け寄ってきた。
行儀見習いとは言え、王宮入りすることが明らかになって以来、友達が増えたなと思う。
単に王宮内部を知りたいために興味本位で近付いてくる子もいれば、王家とお近づきになりたいという下心を持って来る子もいる。片や遠巻きとは言え、それをいまだに面白く思わずに睨み付けてくる子もいる。
私は何一つ変わっていないのに、自分の周りだけが目まぐるしく変化する状況に、少しため息をついた。
友達とそうではない線引きは難しい。今後、私が王宮と何の関係も無くなった時、一体どれだけの人が残ってくれるのかと思う。
……まあ、大半が去っていくだろうとは予想できるものの、もしかしたら自分の努力次第で本当の友達を作ることも可能かもしれない。ただ、その過程で信じていた誰かに裏切られて傷ついたり、泣いたりすることもあるのかなと考えると、友達作りとは大変なものだと憂鬱になる。
「――と思わない?」
「え、ええ。そうですね」
私は思考から戻り、慌てて笑顔で会話に参加した。
「マリエル様、一緒に移動教室に参りましょう」
「ロザンヌ様。え、ええ。今日は朝のご挨拶ができなくて申し訳ありません」
「いいえ。こちらこそ」
今朝は私が他のクラスメートと話していたので、遠くから笑みを浮かべてくれただけで近付くのは遠慮したようだ。控えめなマリエル嬢は、さっきのクラスメートの輪の中にはきっと馴染めないと思ったのかもしれない。
このクラスでは既にいくつものグループが出来上がっていて、私とマリエル嬢はそれらのどれにも属しておらず、二人で行動していた。このままの状態で行くと、彼女が孤立してしまいかねない。
それに……。
カトリーヌ・クレマン伯爵令嬢に視線をやる。
今は少なくとも私に表立っては手出しできない彼女らだが、まだ私への敵意は消えていないだろう。直接私に手出しできないとなると、その矛先をマリエル嬢に変えてくる可能性だってある。人間、弱い所を攻撃してくるものだ。
「ロザンヌ様?」
常に彼女と行動を共にしてはいるけれど、いつ何時狙われるか分からない。
この学園生活を心穏やかに過ごしたいと思うのならば、一人でも多くの味方を作るのではなく、一人でも敵を少なくすることの方が重要だ。
こんな打算的な考えをしなければならないかと思うと、また一つ心の中で息を吐く。
王族や上級貴族の人たちは日常茶飯事のことだろう。ほんの少しだけ、お気持ちが分かった気がした。
「ごめんなさい。今日は授業で先生に当てられるのではないかと思うと、気持ちが落ち着かないの。逃げ出したいくらいです」
「まあ」
マリエル嬢はころころと可愛らしく笑う。
守ってみせるぞこの笑顔!
私は拳を作って決意を新たにした。
「カトリーヌ様。折り入ってお話がありますの。少しお付き合いいただけますか? 二人きりで」
昼休み、私から近付くと彼女は警戒したようだった。周りのお友達も敵愾心を露わにしている。
何と言うか、分かりやすい人たちだ。
「二人きりですって?」
眉を上げ、目を細めて睨み付けてくるカトリーヌ嬢に、私は余裕の笑みを浮かべてみせた。
「ああ。もしかしてお一人で心細く思われるのでしょうか。でしたら、お友だ――」
「誰が心細いって言うの。一人で行くわよ」
「そうですか。失礼いたしました。では参りましょう」
軽く挑発したらあっさりと乗ってきてくれた。こういう場合は周りに人がいると気が大きくなるし、周りが下手に煽ったりするから一対一の方がやりやすい。
と言うわけで前回、私が連れ込まれた校舎裏へと向かったわけですが、カトリーヌ嬢は少し顔を引きつらせておりました。きょろきょろと辺りを探っています。
きっと、私を連れ出した時の事を思い出されたのでしょう。でも私はあなた方みたいに卑怯ではありませんから、仲間を引き連れてくるなんてことはありませんよ。
「カトリーヌ様、どうかなさいました?」
「べ、別に。何もないわよ。それで話とは何!?」
辺りに人の気配がないことを確認できたのか、カトリーヌ嬢は強気の姿勢でこちらに振り返った。
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