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第174話 護衛騎士としてのジェラルド様の顔
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王宮に戻り、馬車の停留場所でジェラルドさんと別れ、私たちは部屋へと向かった。
着替えが終わって少し休憩したらまた執務室へ行かなければならない。
昨日は殿下と気まずい雰囲気になったことは否めないので、少し憂鬱だ。最近、殿下との距離の取り方を測りかねているような気がする。
侍女服に着替えてため息をついていると。
コンコンッ。
普段はこの時間帯には鳴らされない扉のノック音がし、私とユリアは多少警戒しながらも扉の前に立つと、ジェラルド・コンスタントですと名乗るのが聞こえた。
ユリアは私を見る。
ジェラルドさん!?
先ほど別れたばかりで、もう間もなく執務室に行こうというのに、もしかして殿下に何か。
扉の前には護衛官が立っているし、確認はされているだろう。また、ユリア自身もジェラルドさんだと確信したため扉を開けた。
「ロザンヌ様、ご休憩なさっているところ、失礼いたします」
「いえ。殿下に何か」
部屋の中でも思わず囁き声になってしまったけれど、ジェラルドさんはきちんと聞き取ってくれて硬い表情で頷く。
「ご一緒に来ていただけますか」
「もちろんです。ユリア、あとお願いね」
「承知いたしました」
私はジェラルドさんと共に部屋を出る。
いつも私の歩調に合わせてくれるジェラルドさんも今日ばかりは、やや早足だ。私は若干、小走りとなる。
「申し訳ございません、ロザンヌ様」
「いいえ」
こんな時にまで気にかけてくださるジェラルドさんに対してこそ、申し訳ないと思う。
「どういった状態でしょうか」
人気はないものの、私は小声で尋ねる。
「私が戻りました時にご挨拶するためにノックしたのですがお返事がなく、入室させていただきました」
ジェラルドさんにも自分からの返事がない場合は入ってくれと、殿下からあらかじめ言われているのだろう。
「そこで殿下はソファーで横になられていたので、眠っていらっしゃるのかと思っていたのですが、顔色が悪く、呼吸も荒く、お声がけさせていただくと殿下は」
そこまで言ってジェラルドさんは足を止めて私に振り返る。
「ロザンヌ様をお呼びするよう命じられました。お医者様ではなく、あなた様を」
ただ真っ直ぐに見つめられているだけなのに、尋問されている気分になる。それはジェラルドさんの護衛騎士としての本質のようで、私は気圧された。けれど、彼の疑問に対して私から答えを出すわけにはいかない。
視線を落として口を噤んでいると、ジェラルドさんから息が一つ落とされる。おずおずと視線を上げると、いつもの彼の穏やかな表情に戻っていた。
「職務内容を口外することは禁止されていましたね。私も与えられた権限以上のことを行使しようとしてしまい、本当に申し訳ございません」
「いいえ」
ジェラルドさんは殿下のご容体を見て、お医者様をお呼びしたかったのだと思う。それなのに私を呼んでほしいと言われれば、なぜと思うに決まっている。当然のことだ。
「では、参りましょう」
「はい」
護衛官室に着いて、ジェラルドさんはどうぞと執務室への扉を開放してくれる。
私が入って何気なく振り返ると、ジェラルドさんは殿下をよろしくお願いいたしますと微笑んで、そのまま扉を閉めた。
何だかとても心苦しかったけれど、まずは殿下だ。私はソファーの元へと駆けて行くと横になったままの殿下がいた。顔色はいつもよりなお悪く、土気色だ。
「殿下」
「ああ。ロザンヌ嬢、悪い」
「殿下。そのままで」
無理に起き上がろうとする殿下を止め、私は手を取ろうと床に膝をついた。しかし、症状が重い時は殿下が抱きしめてきたことを思い出す。
もしかしたら体の接触が大きいほど、早く良くなるのかもしれない。
そう考えて一瞬の躊躇のあと、私は殿下に覆い被さるように抱きしめてみた。
……ん? あれ? 私からこれをやって良かったのかな。不敬にならないのかな。
抱きしめてから急に心配になったけれど、殿下が力無くも私の背中に片手を回して抱きしめ返してくれた。
ほっとしたと同時に、殿下から伝わる熱に胸の鼓動が高まる。しかしこんな時に不謹慎だと、心の中で頭を振って気持ちを切り替えた。
いつからこんな状態なのだろう。今朝はお部屋には既にいらっしゃらなかったから、私はそのまま学校へと向かってしまった。けれど、もしかして昨日から影に取り憑かれていたのだろうか。それともとても強力な影だったのだろうか。私が戻るまでどれくらい我慢していたのだろう。
唇を噛みしめていると、殿下が私の背中から手を離した。
影祓いが終了したのだと私は慌てて身を起こしてそのまま床に座りこむ。
「殿下、いかがでしょうか」
「ああ。ありがとう。もう大丈夫だ」
お言葉通り顔色に血の気が戻っている。
殿下もまた体を起こし、ソファーに座り直した。
着替えが終わって少し休憩したらまた執務室へ行かなければならない。
昨日は殿下と気まずい雰囲気になったことは否めないので、少し憂鬱だ。最近、殿下との距離の取り方を測りかねているような気がする。
侍女服に着替えてため息をついていると。
コンコンッ。
普段はこの時間帯には鳴らされない扉のノック音がし、私とユリアは多少警戒しながらも扉の前に立つと、ジェラルド・コンスタントですと名乗るのが聞こえた。
ユリアは私を見る。
ジェラルドさん!?
先ほど別れたばかりで、もう間もなく執務室に行こうというのに、もしかして殿下に何か。
扉の前には護衛官が立っているし、確認はされているだろう。また、ユリア自身もジェラルドさんだと確信したため扉を開けた。
「ロザンヌ様、ご休憩なさっているところ、失礼いたします」
「いえ。殿下に何か」
部屋の中でも思わず囁き声になってしまったけれど、ジェラルドさんはきちんと聞き取ってくれて硬い表情で頷く。
「ご一緒に来ていただけますか」
「もちろんです。ユリア、あとお願いね」
「承知いたしました」
私はジェラルドさんと共に部屋を出る。
いつも私の歩調に合わせてくれるジェラルドさんも今日ばかりは、やや早足だ。私は若干、小走りとなる。
「申し訳ございません、ロザンヌ様」
「いいえ」
こんな時にまで気にかけてくださるジェラルドさんに対してこそ、申し訳ないと思う。
「どういった状態でしょうか」
人気はないものの、私は小声で尋ねる。
「私が戻りました時にご挨拶するためにノックしたのですがお返事がなく、入室させていただきました」
ジェラルドさんにも自分からの返事がない場合は入ってくれと、殿下からあらかじめ言われているのだろう。
「そこで殿下はソファーで横になられていたので、眠っていらっしゃるのかと思っていたのですが、顔色が悪く、呼吸も荒く、お声がけさせていただくと殿下は」
そこまで言ってジェラルドさんは足を止めて私に振り返る。
「ロザンヌ様をお呼びするよう命じられました。お医者様ではなく、あなた様を」
ただ真っ直ぐに見つめられているだけなのに、尋問されている気分になる。それはジェラルドさんの護衛騎士としての本質のようで、私は気圧された。けれど、彼の疑問に対して私から答えを出すわけにはいかない。
視線を落として口を噤んでいると、ジェラルドさんから息が一つ落とされる。おずおずと視線を上げると、いつもの彼の穏やかな表情に戻っていた。
「職務内容を口外することは禁止されていましたね。私も与えられた権限以上のことを行使しようとしてしまい、本当に申し訳ございません」
「いいえ」
ジェラルドさんは殿下のご容体を見て、お医者様をお呼びしたかったのだと思う。それなのに私を呼んでほしいと言われれば、なぜと思うに決まっている。当然のことだ。
「では、参りましょう」
「はい」
護衛官室に着いて、ジェラルドさんはどうぞと執務室への扉を開放してくれる。
私が入って何気なく振り返ると、ジェラルドさんは殿下をよろしくお願いいたしますと微笑んで、そのまま扉を閉めた。
何だかとても心苦しかったけれど、まずは殿下だ。私はソファーの元へと駆けて行くと横になったままの殿下がいた。顔色はいつもよりなお悪く、土気色だ。
「殿下」
「ああ。ロザンヌ嬢、悪い」
「殿下。そのままで」
無理に起き上がろうとする殿下を止め、私は手を取ろうと床に膝をついた。しかし、症状が重い時は殿下が抱きしめてきたことを思い出す。
もしかしたら体の接触が大きいほど、早く良くなるのかもしれない。
そう考えて一瞬の躊躇のあと、私は殿下に覆い被さるように抱きしめてみた。
……ん? あれ? 私からこれをやって良かったのかな。不敬にならないのかな。
抱きしめてから急に心配になったけれど、殿下が力無くも私の背中に片手を回して抱きしめ返してくれた。
ほっとしたと同時に、殿下から伝わる熱に胸の鼓動が高まる。しかしこんな時に不謹慎だと、心の中で頭を振って気持ちを切り替えた。
いつからこんな状態なのだろう。今朝はお部屋には既にいらっしゃらなかったから、私はそのまま学校へと向かってしまった。けれど、もしかして昨日から影に取り憑かれていたのだろうか。それともとても強力な影だったのだろうか。私が戻るまでどれくらい我慢していたのだろう。
唇を噛みしめていると、殿下が私の背中から手を離した。
影祓いが終了したのだと私は慌てて身を起こしてそのまま床に座りこむ。
「殿下、いかがでしょうか」
「ああ。ありがとう。もう大丈夫だ」
お言葉通り顔色に血の気が戻っている。
殿下もまた体を起こし、ソファーに座り直した。
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