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番外編
《8》
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一年分の記憶がないなんて、きっと悪い夢を見ているんだ。
朝になって目を覚ましたら、一人暮らしをしている錦糸町のマンションにいるはず。
そう思いながら、眠った。
そして朝が来て……。
看護師さんが検温しに来た。
頭には包帯が巻かれている。
スマホには雨宮課長からのメッセージが来ていて、今週いっぱいは私は有休扱いになっている事、退院が決まったら連絡して欲しい事などが書かれてあった。
他にも久保田と、桃子からも私を心配するメッセージが届いていた。
映画館の階段から落ちて頭を打ったのは夢じゃなかったんだ……。
しかも、雨宮課長と同棲中……。
もう一度雨宮課長からのメッセージに戻ると、【退院の時は迎えに行くから、絶対に一人で帰らないように】と念を押すように書いてあった。
そんなこと言われてもな……。
退院したら雨宮課長と一緒に暮らす事になると思うと気が重い。
千葉の実家に帰ろうか。
でも、親に入院した事を言っていない。
包帯を巻いた頭を見たら心配するだろうな……。
心配させたくないしな。それにお母さん、お喋りだから近所の人とかに私が怪我をした事を言いそう。
それも恥ずかしいし。
まさか帰る所に困るとは思わなかった。
一層の事、退院したらビジネスホテルに泊まろうか。
そんな風に悩んでいると、昼頃、お母さんが来た。
「え! お母さん」
茶色のコートを着たお母さんが「はあ、疲れた」と言いながらベッドの側の椅子に腰かける。それからここに来るまでの道のりが遠かったという話を一方的に始める。
うわっ、お母さん、久しぶりに会ったけど、相変わらずお母さんって感じ。一人でいつも三人分は話しているよね。
でも、そんなお母さんにほっとする。
「あら、美味しそうな鮭のホイル焼きね」
私の昼食にお母さんが視線を向ける。
私の頭の怪我よりも鮭のホイル焼きに興味があるって……。
なんか、心配かけたらどうしようって思っていたのがバカバカしい。
「中島さん、失礼します」
お母さんに話しかけようとしたタイミングでお医者さんが入って来た。
「早めに退院したいとの事でしたよね?」
確認するように先生が私を見た。
えっ? そんな事言ってない。
むしろ長く病院にいたいぐらいなのですが。
「そうなんです。できれば今日退院させたいんですけど、大丈夫でしょうか?」
お母さんが先生に話しかける。
ちょっと、お母さん、いつそんな話を?
「大丈夫ですよ。怪我の方は軽いですから。中島さん、気分が悪くなったりしてませんよね?」
先生がこっちを見る。
「はい。大丈夫です」
「じゃあ、退院で」
そんなにあっさり退院?
「お世話になりました。ありがとうございます」
お母さんがお医者さんに頭を下げた。
先生がスタスタと忙しそうに病室を出て行く。
「奈々子、良かったわね。退院だって」
お母さんがにっこりと微笑んだ。
朝になって目を覚ましたら、一人暮らしをしている錦糸町のマンションにいるはず。
そう思いながら、眠った。
そして朝が来て……。
看護師さんが検温しに来た。
頭には包帯が巻かれている。
スマホには雨宮課長からのメッセージが来ていて、今週いっぱいは私は有休扱いになっている事、退院が決まったら連絡して欲しい事などが書かれてあった。
他にも久保田と、桃子からも私を心配するメッセージが届いていた。
映画館の階段から落ちて頭を打ったのは夢じゃなかったんだ……。
しかも、雨宮課長と同棲中……。
もう一度雨宮課長からのメッセージに戻ると、【退院の時は迎えに行くから、絶対に一人で帰らないように】と念を押すように書いてあった。
そんなこと言われてもな……。
退院したら雨宮課長と一緒に暮らす事になると思うと気が重い。
千葉の実家に帰ろうか。
でも、親に入院した事を言っていない。
包帯を巻いた頭を見たら心配するだろうな……。
心配させたくないしな。それにお母さん、お喋りだから近所の人とかに私が怪我をした事を言いそう。
それも恥ずかしいし。
まさか帰る所に困るとは思わなかった。
一層の事、退院したらビジネスホテルに泊まろうか。
そんな風に悩んでいると、昼頃、お母さんが来た。
「え! お母さん」
茶色のコートを着たお母さんが「はあ、疲れた」と言いながらベッドの側の椅子に腰かける。それからここに来るまでの道のりが遠かったという話を一方的に始める。
うわっ、お母さん、久しぶりに会ったけど、相変わらずお母さんって感じ。一人でいつも三人分は話しているよね。
でも、そんなお母さんにほっとする。
「あら、美味しそうな鮭のホイル焼きね」
私の昼食にお母さんが視線を向ける。
私の頭の怪我よりも鮭のホイル焼きに興味があるって……。
なんか、心配かけたらどうしようって思っていたのがバカバカしい。
「中島さん、失礼します」
お母さんに話しかけようとしたタイミングでお医者さんが入って来た。
「早めに退院したいとの事でしたよね?」
確認するように先生が私を見た。
えっ? そんな事言ってない。
むしろ長く病院にいたいぐらいなのですが。
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ちょっと、お母さん、いつそんな話を?
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「はい。大丈夫です」
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「お世話になりました。ありがとうございます」
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お母さんがにっこりと微笑んだ。
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