後宮一の美姫と呼ばれても、わたくしの想い人は皇帝陛下じゃない

ちゃっぷ

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第三章 後宮の花たち

おまけ

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 わたくしはソ・フォンスということに、ソ家の娘ということに誇りを持っている。

 お父様はあまり家にいないけれど、上位の王宮役人として忙しく働いているし、お母様は美しく、賢く、淑やかで……自慢の両親だ。

 わたくしはお母様のような完璧な人になりたいと思っていた。

 けれどわたくしは髪はお母様のように美しい黒をしておらず赤みがかっているし、勉強は嫌いだし、じっとしていることも性に合わなかった。

 わたくしはお母様のようにはなれないのだなと泣きつくと、お母様は言った。

「私だって、そんなに立派な人間ではないのよ。生まれがそこまで良くなかったために、皇帝陛下のお妃様にはなれなかったし……」

 そう話すお母様の表情は昔を懐かしむように微笑んでいるけれど、どこか悲しげに見えた。

 だから尋ねる。

「皇帝陛下のお妃様は、お母様の憧れなの?」

 そう尋ねると、お母様はやっぱり寂しそうな悲しそうな表情をしながら「そうね……そうよ……」と答えた。

 だからわたくしは、お母様の憧れた皇帝陛下のお妃様を目指そうと心に決めた。

 お父様に皇帝陛下のお妃様になりたいと告げると、そんな立派な志を持っていようとは……と感激され、忙しい合間を縫ってお妃様になる手配を整えてくれた。

 お父様の指示でお勉強やお稽古の時間が増えたけれど、わたくしは適度にサボりながら、お妃様になれる日を待った。

 そしてやっと後宮に入れることになった日、お父様は忙しいからと不在だったけれど、お母様は泣いて喜んで見送ってくれた。

 後宮に入ったら、皇帝陛下にご挨拶して、わたくしがいかにお妃様になりたかったのかを熱弁した。

 皇帝陛下から妃になったお祝いにと、キレイな宝飾品をいただいた。

 それからしばらく過ごしていると、数人のお妃様がご挨拶させてくださいと言ってお茶会に招待されて、まるでお姫様でも相手にするようにもてなされた。

 お父様のことや、皇帝陛下とのことなどを尋ねられたので、ありのまま答えた。

 すると彼女たちは『それならば、皇后になられるのはフォンス様かもしれませんね』と言って、わたくしをたくさん褒めてくれた。

 気分良く話を聞いていると、皇后というのはお妃様たちの最上位に立つ存在なのだと教えられて、わたくしはそれになりたいと思った。

 だからたまに皇帝陛下とお会いする時には、好かれようとたくさんお話をした。

 皇帝陛下とお会いできる機会は少ないけれど、たくさんの贈り物をいただいていたし、王宮主催の催し物がある時には殆ど呼ばれたので、わたくしは愛されているのだと思った。

 しかし邪魔な女メイリンが現れてからは、皇帝陛下はそちらにばかり関心を向けるようになって、わたくしの元に来られることはさらに減った。

 後宮一の美姫と言われるその女は、確かにお母様よりも美しかった。

 けれど美しいからというだけで愛されるなんて、そんなのズルいじゃないか。

 だから邪魔をしないようにと釘をさしたけれど、あの女は余裕な笑みを浮かべていて……腹が立ったので、お茶をぶっかけてやった。

 けれど濡れた彼女はその美しさを増していて、余計に腹がたっただけだった。

 後日、わたくしの皇后への道を邪魔する女のことを友人の妃たちに愚痴ると、「では、邪魔者は排除してはいかがですか?」と小瓶をもらった。

 これは何かと聞いても教えてくれなかったが、後宮勤めの女官を捕まえて、メイリンの飲食物に入れるように指示すれば良いと言われた。

 言うことを聞かなければ、お父様の権力ちからで首を飛ばすと脅せば、必ず言うことを聞くはずだと。

 よく分からないけれど、その通りにした。

 とにかく邪魔者を消したかったから。

 するとその夜、皇帝陛下が久しぶりにやってきた。

 嬉しくてもてなそうとすると遮られ、人払いをした後に『メイリンに毒を盛ったか?』と尋ねられた。

 なんのことか分からなかったので、そのまま『分からない』と答えると、皇帝陛下は鋭い目つきでわたくしのことを睨んできた。

 そんな目で見られても、わたくしは知らないったら知らない!

 ぷいっと顔を背けると、皇帝陛下はため息をついたかと思うと、何も言わずにわたくしの宮から出ていった。

 わたくしは悪いことなんて何もしていない。

 悪いのはわたくしから皇帝陛下を奪おうとしたあの女メイリンだろう。

 それにしても、あの女に毒を盛ったのは誰なのだろう?

 まぁ、そんなことはどうでも良いか。

 さっきの皇帝陛下は少し怖かったけれど、わたくしは変わらずに皇帝陛下から愛される努力だけを続けよう。

 そして、皇后になるのはわたくしだ。
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