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第五章 皇后という存在
第二十話
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「そなたは皇后になりたいのか?」
「いえ、全く興味ありません」
皇帝陛下に尋ねられて、わたくしはすぐに否定の言葉を返す。
そこに嫌悪感や皇帝陛下に取り入ろうなどといった考えはなく、純粋に興味がないからこその冷めた答えだった。
わたくしの返答を聞いた皇帝陛下は、予想通りだとでも言わんばかりに嬉しそうに「だろうな」と笑っている。
かと思うと、皇帝陛下は笑みは浮かべたままではあるけれど、少しだけ眉尻を下げて口を開く。
「……私には十五人の妃がいる。出世のため輿入れさせられた役人の娘、皇后という地位を求めてやってくる貴族の娘。様々な女が、私の妻として後宮にやってくる」
わたくしは皇帝陛下が何を言わんとしているのか分からず、静かに耳を傾ける。
「後宮は皇帝のための花園などではなく、世継ぎのために選んだ女と閨を共にし、野心あふれる令嬢をあしらいながら機嫌を取る場所で、私にとって居心地の良い場所ではない」
そう仰る皇帝陛下の顔は、どこか寂しそうというか……居場所をなくした迷子のように見えた。
かと思うと、こちらを見つめて穏やかな笑みを浮かべる。
「けれど……そなたが来てからは、後宮も楽しい場所になっている」
「……わたくしは何もしておりませんよ?」
「それが良いのだ。そなたはそなたらしくあるだけで、私の癒しとなる」
皇帝陛下は楽しそうに、嬉しそうにカラカラと笑っていて、わたくしは困惑しながらも皇帝陛下がそれで良いのであればと、特に否定することはしなかった。
それと同時に、改めて皇帝陛下という立場・存在を思うと、わたくしでは想像しきれないほどの苦労があるのだなと思う。
日中は王宮で国のため、民のためにと働き、夜になれば望んでもいない妃のために機嫌を取り、また国のため、世継ぎのためにと閨を共にする。
皇帝という人に、気の休まる時などないのかもしれない。
そう思うと皇帝陛下が不憫に感じられると共に、その立場を全うして『名君』と呼ばれている皇帝陛下のことを、純粋に尊敬した。
なので癒しの存在であるらしいわたくしは、皇帝陛下の苦労を思い、心からの微笑みを浮かべる。
「わたくしが少しでも皇帝陛下の癒しになれているのであれば、良うございました」
そう伝えると、皇帝陛下は目を丸くして驚きの表情を浮かべて、かと思うと少しずつ顔が赤く染まっていった。
そんな顔を隠そうとなさっているのか、皇帝陛下は口元を手で覆う。
「う……うん? なんだ……? そなたの笑顔を見たら、胸がドキッとしたぞ」
「なんでございましょうね」
「こ、これが……ときめき、というものなのか……?」
「なにを仰っているのですか?」
「心が幸せで満ち足りている感じがする!」
「……」
わたくしの冷めた対応にもめげず、皇帝陛下は嬉しそうに楽しそうに、興奮した様子だ。
十五人も妃がいるというのに、皇帝陛下自身はやはり初恋をしたばかりの年相応の青年のように見える。
いつのまにかわたくしの中で、威厳のある皇帝の顔をしている彼の方が違和感があり、この年相応な表情をしている彼の方が馴染みのある存在になりつつあった。
苦労の多い皇帝陛下に、そんな年相応の顔ができる時間があることを、わたくしは何だか微笑ましく眺めていた。
「これだけ好いた女がいながら、手を出さない私は大したものだな!」
そう言ってまだまだ興奮冷めやらぬ様子の皇帝陛下。
手を出したいとは思っているのかと、けれど皇帝陛下も男だからな……と、少しばかり自分の身を危うく思いながらも、そんな感情を持っていることに安心感を覚える。
後宮に来たばかりの頃に比べて、自分の中で皇帝陛下という存在が……皇帝陛下への感情が、少しずつ変わっていく気がする。
正直に言うと、好意はあると思う。
けれど、イェン兄様ほどの想いはない。
結局わたくしと皇帝陛下は、初恋に振り回されている者同士なのだなと、なんとなく笑えてきた。
わたくしが堪えきれずにクスッと笑みをこぼすと、なぜだか皇帝陛下も嬉しそうに笑っていた。
「いえ、全く興味ありません」
皇帝陛下に尋ねられて、わたくしはすぐに否定の言葉を返す。
そこに嫌悪感や皇帝陛下に取り入ろうなどといった考えはなく、純粋に興味がないからこその冷めた答えだった。
わたくしの返答を聞いた皇帝陛下は、予想通りだとでも言わんばかりに嬉しそうに「だろうな」と笑っている。
かと思うと、皇帝陛下は笑みは浮かべたままではあるけれど、少しだけ眉尻を下げて口を開く。
「……私には十五人の妃がいる。出世のため輿入れさせられた役人の娘、皇后という地位を求めてやってくる貴族の娘。様々な女が、私の妻として後宮にやってくる」
わたくしは皇帝陛下が何を言わんとしているのか分からず、静かに耳を傾ける。
「後宮は皇帝のための花園などではなく、世継ぎのために選んだ女と閨を共にし、野心あふれる令嬢をあしらいながら機嫌を取る場所で、私にとって居心地の良い場所ではない」
そう仰る皇帝陛下の顔は、どこか寂しそうというか……居場所をなくした迷子のように見えた。
かと思うと、こちらを見つめて穏やかな笑みを浮かべる。
「けれど……そなたが来てからは、後宮も楽しい場所になっている」
「……わたくしは何もしておりませんよ?」
「それが良いのだ。そなたはそなたらしくあるだけで、私の癒しとなる」
皇帝陛下は楽しそうに、嬉しそうにカラカラと笑っていて、わたくしは困惑しながらも皇帝陛下がそれで良いのであればと、特に否定することはしなかった。
それと同時に、改めて皇帝陛下という立場・存在を思うと、わたくしでは想像しきれないほどの苦労があるのだなと思う。
日中は王宮で国のため、民のためにと働き、夜になれば望んでもいない妃のために機嫌を取り、また国のため、世継ぎのためにと閨を共にする。
皇帝という人に、気の休まる時などないのかもしれない。
そう思うと皇帝陛下が不憫に感じられると共に、その立場を全うして『名君』と呼ばれている皇帝陛下のことを、純粋に尊敬した。
なので癒しの存在であるらしいわたくしは、皇帝陛下の苦労を思い、心からの微笑みを浮かべる。
「わたくしが少しでも皇帝陛下の癒しになれているのであれば、良うございました」
そう伝えると、皇帝陛下は目を丸くして驚きの表情を浮かべて、かと思うと少しずつ顔が赤く染まっていった。
そんな顔を隠そうとなさっているのか、皇帝陛下は口元を手で覆う。
「う……うん? なんだ……? そなたの笑顔を見たら、胸がドキッとしたぞ」
「なんでございましょうね」
「こ、これが……ときめき、というものなのか……?」
「なにを仰っているのですか?」
「心が幸せで満ち足りている感じがする!」
「……」
わたくしの冷めた対応にもめげず、皇帝陛下は嬉しそうに楽しそうに、興奮した様子だ。
十五人も妃がいるというのに、皇帝陛下自身はやはり初恋をしたばかりの年相応の青年のように見える。
いつのまにかわたくしの中で、威厳のある皇帝の顔をしている彼の方が違和感があり、この年相応な表情をしている彼の方が馴染みのある存在になりつつあった。
苦労の多い皇帝陛下に、そんな年相応の顔ができる時間があることを、わたくしは何だか微笑ましく眺めていた。
「これだけ好いた女がいながら、手を出さない私は大したものだな!」
そう言ってまだまだ興奮冷めやらぬ様子の皇帝陛下。
手を出したいとは思っているのかと、けれど皇帝陛下も男だからな……と、少しばかり自分の身を危うく思いながらも、そんな感情を持っていることに安心感を覚える。
後宮に来たばかりの頃に比べて、自分の中で皇帝陛下という存在が……皇帝陛下への感情が、少しずつ変わっていく気がする。
正直に言うと、好意はあると思う。
けれど、イェン兄様ほどの想いはない。
結局わたくしと皇帝陛下は、初恋に振り回されている者同士なのだなと、なんとなく笑えてきた。
わたくしが堪えきれずにクスッと笑みをこぼすと、なぜだか皇帝陛下も嬉しそうに笑っていた。
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