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第七章 夢
第三十話
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それから何度か、親戚の集まりがあった。
親戚の集まりでは、イェン兄様と会場の隅で話すのが当たり前になりつつあった。
イェン兄様はいつでも穏やかで、真面目で、優しくて、正義感があって……何よりもわたくしの容姿について何も言わない。
わたくしよりも少し年上で、従兄妹のお兄さん。
イェン兄様とは色々な話をした。
田舎に住んでいた頃のこと、皇都にはあまり馴染めないことなどから、最近読んだ本の話まで。
どれも他愛もない話だけれど、イェン兄様と話せるというだけで胸が弾み、嫌なことを全て忘れられるようだった。
わたくしとイェン兄様の関係は成長しても変わらず、わたくしは小汚い見た目のまま背が伸びて、年齢だけは年頃の娘になっていた。
けれどイェン兄様がわたくしの見た目に関して何か言うことはなく、相変わらず他愛のない話をしている。
けれど、少しだけ変わったことがある。
それはわたくしがイェン兄様に対する恋を自覚したということだ。
初めて出会った時の衝撃が初恋というもので、イェン兄様といると高鳴る胸は恋をしているからだということに気がついた。
けれど、イェン兄様に想いを告げることはできずにいた。
この今の小汚い姿をイェン兄様は受け入れてくださっているけれど、わたくしの本当の姿も見てもらいたいという想いがある。
けれど身なりを整えて、美しい姿になった時、もしイェン兄様が告白を受けてくださったとしたら……それは果たして、わたくし自身を受け入れてくださったと思えるだろうか。
イェン兄様も、もしかしたらわたくしの美しい姿を理由に告白を受けてくださったのかもしれないという、疑惑の心を抱かずにはいられないだろう。
そう悩んでいるばかりで告白することができず、ただただ時だけが流れていた。
そんなある日、父からイェン兄様が宦官になったという話を聞いた。
「……え?」
わたくしは短く言葉をこぼすだけで、頭の中も心の中もなんの整理もできず、ぐちゃぐちゃになっているような、真っ白になっているような不思議な感覚だった。
イェン兄様が宦官……?
じゃあ、もう会えないということ……?
そんな簡単なことを理解するのに、すごく長い時間を費やしたような気がする。
父が何か事の経緯を説明してくれていたり、気に掛けるような言葉を掛けてくれていたように思うが、聞こえていてもわたくしの頭まで言葉が届くことはなかった。
わたくしは父の言葉に返事をすることもなく、ふらふらとしながら自室に戻った。
そして自室の寝台に横になり、ぼんやりとしながらも懸命に頭を動かして、やっとイェン兄様に想いを伝えることは、もうできないのだということに気がついた。
もうイェン兄様に会うことすらできない。
「イェン兄様……」
そのことに気がついたわたくしは、涙を流すよりも前に、身体が勢いよく動き出していた。
まずは野暮ったい服を脱ぎ捨てて、風呂に入った。
何年も身体を手ぬぐいで拭う程度で入浴は避けていたため、身体中は汚れきっていて、髪はこびりついた油を落とすのに苦労した。
そして風呂から上がると、侍女に頼んで伸び切った髪を切り整え、流行りの服に着替え、生まれて初めての化粧もした。
鏡を見ると、そこには成長したことで美しさを増した自分がいた。
「……この美しさが、初めて役に立つわね」
そうこぼすと、わたくしは先ほど出ていったばかりの父の書斎へと訪れた。
「失礼いたします」
「おぉ、メイリン。どうし……」
久方ぶりに身綺麗にしているわたくしを見た父は、驚きを隠せない様子だった。
目を見開いて、口をぽかんとさせながら、信じられないものでも見たように、わたくしを凝視している。
そんな父に、わたくしはお願いをした。
「わたくしを、皇帝陛下のお妃様に推薦してください」
父はすでに開かれている目と口をさらに開け、わたくしが何を言っているのか理解するのに、時間がかかっている様子だった。
親戚の集まりでは、イェン兄様と会場の隅で話すのが当たり前になりつつあった。
イェン兄様はいつでも穏やかで、真面目で、優しくて、正義感があって……何よりもわたくしの容姿について何も言わない。
わたくしよりも少し年上で、従兄妹のお兄さん。
イェン兄様とは色々な話をした。
田舎に住んでいた頃のこと、皇都にはあまり馴染めないことなどから、最近読んだ本の話まで。
どれも他愛もない話だけれど、イェン兄様と話せるというだけで胸が弾み、嫌なことを全て忘れられるようだった。
わたくしとイェン兄様の関係は成長しても変わらず、わたくしは小汚い見た目のまま背が伸びて、年齢だけは年頃の娘になっていた。
けれどイェン兄様がわたくしの見た目に関して何か言うことはなく、相変わらず他愛のない話をしている。
けれど、少しだけ変わったことがある。
それはわたくしがイェン兄様に対する恋を自覚したということだ。
初めて出会った時の衝撃が初恋というもので、イェン兄様といると高鳴る胸は恋をしているからだということに気がついた。
けれど、イェン兄様に想いを告げることはできずにいた。
この今の小汚い姿をイェン兄様は受け入れてくださっているけれど、わたくしの本当の姿も見てもらいたいという想いがある。
けれど身なりを整えて、美しい姿になった時、もしイェン兄様が告白を受けてくださったとしたら……それは果たして、わたくし自身を受け入れてくださったと思えるだろうか。
イェン兄様も、もしかしたらわたくしの美しい姿を理由に告白を受けてくださったのかもしれないという、疑惑の心を抱かずにはいられないだろう。
そう悩んでいるばかりで告白することができず、ただただ時だけが流れていた。
そんなある日、父からイェン兄様が宦官になったという話を聞いた。
「……え?」
わたくしは短く言葉をこぼすだけで、頭の中も心の中もなんの整理もできず、ぐちゃぐちゃになっているような、真っ白になっているような不思議な感覚だった。
イェン兄様が宦官……?
じゃあ、もう会えないということ……?
そんな簡単なことを理解するのに、すごく長い時間を費やしたような気がする。
父が何か事の経緯を説明してくれていたり、気に掛けるような言葉を掛けてくれていたように思うが、聞こえていてもわたくしの頭まで言葉が届くことはなかった。
わたくしは父の言葉に返事をすることもなく、ふらふらとしながら自室に戻った。
そして自室の寝台に横になり、ぼんやりとしながらも懸命に頭を動かして、やっとイェン兄様に想いを伝えることは、もうできないのだということに気がついた。
もうイェン兄様に会うことすらできない。
「イェン兄様……」
そのことに気がついたわたくしは、涙を流すよりも前に、身体が勢いよく動き出していた。
まずは野暮ったい服を脱ぎ捨てて、風呂に入った。
何年も身体を手ぬぐいで拭う程度で入浴は避けていたため、身体中は汚れきっていて、髪はこびりついた油を落とすのに苦労した。
そして風呂から上がると、侍女に頼んで伸び切った髪を切り整え、流行りの服に着替え、生まれて初めての化粧もした。
鏡を見ると、そこには成長したことで美しさを増した自分がいた。
「……この美しさが、初めて役に立つわね」
そうこぼすと、わたくしは先ほど出ていったばかりの父の書斎へと訪れた。
「失礼いたします」
「おぉ、メイリン。どうし……」
久方ぶりに身綺麗にしているわたくしを見た父は、驚きを隠せない様子だった。
目を見開いて、口をぽかんとさせながら、信じられないものでも見たように、わたくしを凝視している。
そんな父に、わたくしはお願いをした。
「わたくしを、皇帝陛下のお妃様に推薦してください」
父はすでに開かれている目と口をさらに開け、わたくしが何を言っているのか理解するのに、時間がかかっている様子だった。
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