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第八章 恋の終わり
おまけ
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自分は昔から『男女の愛』というものがどういったものなのか、よく分からなかった。
両親は恋愛結婚だったらしいが、そもそも恋愛というものがよく分からない。
またある程度の年齢になると、婚約者だ結婚だという話も仲間内で聞くようになったが、相手について悩んでいる彼らの心情を理解することはできなかった。
自分は生涯、結婚や恋愛とは無縁なのだろうなと思っていた。
メイリン様に告白された時も、皇帝陛下のお妃様という名誉あるお立場にありながら、なぜ何の取り柄もない一宦官の自分にそんなことを言うのかと理解できなかった。
皇帝陛下を裏切る行為に、怒りすら湧いた。
けれど、自分が愛だの恋だのを理解できないからそんなことになったのかと思うと、メイリン様お一人を責めることはできないとも思った。
メイリン様のお話だと、随分前から自分のことを慕ってくださっていたらしい。
そんなこと、全く気付かなかった。
自分はメイリン様のことを……お妃様になる前のメイリンのことを、妹のように可愛らしく思っていた。
年に数度ある親戚の集まりの時に会える、可愛らしい従兄妹。
ただ、それ以上でもそれ以下でもない。
家族に向けるような感情はあれども、そこに男女の愛だの恋だのといった感情は抱いたことがない。
けれど、もしその頃にメイリンに告白されていたら……自分は、どうしていただろうか。
少なくとも、メイリン様に向けるような拒絶の言葉を言うことはなかっただろう。
まぁ、そんなことを今更考えてもどうしようもない。
メイリン様は皇帝陛下のお妃様だ。
そして自分にも、皇帝陛下のお妃様の一人を下賜していただけるという話が出た以上、愛だの恋だの関係なしに身持ちを固めることになる。
正直に言ってしまえば、興味ないというのが本心だ。
しかし皇帝陛下からのお話である以上、自分に拒否権はない。
そして皇帝陛下のお妃様であったということは、それなりに身分の高いご令嬢だった可能性が高いので、無下にするなんて以ての外だ。
結婚する以上は、誠心誠意、夫として、妻となる人を大切にしていこうと思う。
しかし結婚するといっても、自分はすでに皇帝陛下にこの命を捧げ、男性としての機能を失っている。
なので、子どもはできない。
妻となる人が望むのであれば、養子を迎えることになるだろう。
こうして自分の将来のことについて考えているその時ですら、自分はどこか他人事のように感じていた。
自分はこのまま、燃えるような恋など知らないまま、死んでいくのだろう。
そのことを悲しんだり、残念に思う気持ちはない。
なぜなら皇帝陛下に初めてお会いした時に、それまで何もなかった自分に『生きる意味』を与えていただいたのだから。
自分にはそれだけで十分だ。
けれど……少しだけ、羨ましいという気持ちはある。
後宮に入る覚悟を決めてまで自分のことを追いかけ、自身の立場が危うくなるかもしれないのに告白をした彼女のことを。
皇帝陛下のお妃様という立場でありながら宦官に懸想するなど、もし知られれば首をはねられてもおかしくない。
良くて後宮追放だろう。
なのに彼女は、真っ直ぐに自分に想いを伝えてきた。
そんな彼女のことを、そこまでの想いが持てることを、少しだけ羨ましいと思う。
そして自分はそんな想いに答えられないからこそ、彼女には彼女の幸せを見つけてほしいと切に願う。
それが、彼女を妹のように可愛がっていた元従兄妹にできる最大限のことだ。
両親は恋愛結婚だったらしいが、そもそも恋愛というものがよく分からない。
またある程度の年齢になると、婚約者だ結婚だという話も仲間内で聞くようになったが、相手について悩んでいる彼らの心情を理解することはできなかった。
自分は生涯、結婚や恋愛とは無縁なのだろうなと思っていた。
メイリン様に告白された時も、皇帝陛下のお妃様という名誉あるお立場にありながら、なぜ何の取り柄もない一宦官の自分にそんなことを言うのかと理解できなかった。
皇帝陛下を裏切る行為に、怒りすら湧いた。
けれど、自分が愛だの恋だのを理解できないからそんなことになったのかと思うと、メイリン様お一人を責めることはできないとも思った。
メイリン様のお話だと、随分前から自分のことを慕ってくださっていたらしい。
そんなこと、全く気付かなかった。
自分はメイリン様のことを……お妃様になる前のメイリンのことを、妹のように可愛らしく思っていた。
年に数度ある親戚の集まりの時に会える、可愛らしい従兄妹。
ただ、それ以上でもそれ以下でもない。
家族に向けるような感情はあれども、そこに男女の愛だの恋だのといった感情は抱いたことがない。
けれど、もしその頃にメイリンに告白されていたら……自分は、どうしていただろうか。
少なくとも、メイリン様に向けるような拒絶の言葉を言うことはなかっただろう。
まぁ、そんなことを今更考えてもどうしようもない。
メイリン様は皇帝陛下のお妃様だ。
そして自分にも、皇帝陛下のお妃様の一人を下賜していただけるという話が出た以上、愛だの恋だの関係なしに身持ちを固めることになる。
正直に言ってしまえば、興味ないというのが本心だ。
しかし皇帝陛下からのお話である以上、自分に拒否権はない。
そして皇帝陛下のお妃様であったということは、それなりに身分の高いご令嬢だった可能性が高いので、無下にするなんて以ての外だ。
結婚する以上は、誠心誠意、夫として、妻となる人を大切にしていこうと思う。
しかし結婚するといっても、自分はすでに皇帝陛下にこの命を捧げ、男性としての機能を失っている。
なので、子どもはできない。
妻となる人が望むのであれば、養子を迎えることになるだろう。
こうして自分の将来のことについて考えているその時ですら、自分はどこか他人事のように感じていた。
自分はこのまま、燃えるような恋など知らないまま、死んでいくのだろう。
そのことを悲しんだり、残念に思う気持ちはない。
なぜなら皇帝陛下に初めてお会いした時に、それまで何もなかった自分に『生きる意味』を与えていただいたのだから。
自分にはそれだけで十分だ。
けれど……少しだけ、羨ましいという気持ちはある。
後宮に入る覚悟を決めてまで自分のことを追いかけ、自身の立場が危うくなるかもしれないのに告白をした彼女のことを。
皇帝陛下のお妃様という立場でありながら宦官に懸想するなど、もし知られれば首をはねられてもおかしくない。
良くて後宮追放だろう。
なのに彼女は、真っ直ぐに自分に想いを伝えてきた。
そんな彼女のことを、そこまでの想いが持てることを、少しだけ羨ましいと思う。
そして自分はそんな想いに答えられないからこそ、彼女には彼女の幸せを見つけてほしいと切に願う。
それが、彼女を妹のように可愛がっていた元従兄妹にできる最大限のことだ。
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