4 / 55
人の手により、生命を狂わされた存在。それが、供養もされずに数週間も放置されておるのじゃ。
しおりを挟む「猊下、どちらへ行かれるのでしょうか?」
寝室から出ると、最近わしに小言ばかり言いよる中立派の若造が付いて来おった。
「うん? なんでお主がここに居るんじゃ?」
「……猊下がお休みになられている間に、正式に決まりました。昨日より、猊下のお付きとなりましたクレメンスと申します」
「わし、な~んも聞いとらんけど?」
「猊下はお休みでしたので。本日より、猊下のお世話をさせて頂きます」
と、なんぞ不本意という表情で頭を下げよるクレメンス。
「本来でしたら、教皇猊下のお付きとなる者はもっと多い筈なのですが……」
口を濁すが……はは~ん、わかったぞ。これは、あれじゃな? わし、穏健派であることと健康であることだけが取り柄じゃからの。きっと、すぐに別の者が新しい教皇に代わると思われておるんじゃな!
うむうむ、そうじゃろそうじゃろ。こ~んな、なんの取り柄も無い老いぼれに付いて時間割くより、新しく権力を持つ次の教皇に仕えたいんじゃろうな。
「そうかの。ま、別にいいわい。お主も、わしに付くのが不満なれば、別のところへ行ってもよいぞ」
その方が気楽じゃし。つか、わし今まで殆ど従者とか付けとらんかったし。一人のが慣れておるからの。
「そういうワケには参りません! それで、猊下はどこへ行かれるのでしょうか?」
「ぁ~……そうじゃのぅ。ちと、わし一人の手には有り余る事態が起きようとしておるのじゃ」
「猊下お一人には手に余る? それはどういうことでしょうか?」
「ま、付いて来ればわかるわい」
と、歩き出したわしの後ろから付いて来よるクレメンス。
「というワケで、わしに力を貸してほしいのじゃ」
わしは、浄化魔術に特化したばばあ……シスター・マリッサを頼ることにした。
「なにがというワケ、なのか全くわかりませんね。ロマンシス様」
浄化に特化した聖女、シスター・マリッサが老いて尚、涼やかな目許をわしに向ける。
「実はの、マリッサよ……人の手により、生命を狂わされた存在。それが、供養もされずに数週間も放置されておるのじゃ」
「成る程。アンデッド案件ですか、お話を聞かせてください」
力強く頷いてくれるシスター・マリッサ。
「助かるのじゃ」
「アンデッドですってっ!? どこに発生しているのですかっ!?」
驚きの声を上げるクレメンスを窘める。
「大きな声を出すでない。騒ぎになるじゃろうが」
「失礼しました。猊下はアンデッド発生を感知し、秘密裡に処理なさろうとしていたのですね」
「それで、アンデッドはどの辺りに発生しているのでしょうか? ロマンシス様」
「うむ……実はの、わしのキッチンじゃ」
「は? 猊下の、キッチン……? って、まさか猊下っ!? キッチンでアンデッド召喚やいかがわしい儀式でもしたんですかっ!?」
ギッと、強く非難するような視線。
「そのようなこと誰がするかの。全く、人聞きが悪いわい。そうではない。キッチンにあったのはの、卵じゃ卵」
「卵? なんの卵ですかっ!? 邪神の卵ですかっ!?」
「なんでそうなるんじゃ? 意味がわからんぞ。キッチンにあると言えば、普通に食用の鶏の卵に決まっておろうが」
「・・・猊下の方こそ、なにを仰っているのですか?」
なんじゃ、そのアホを見るような視線は。
「こないだ、国王陛下からの手紙が来とったじゃろ。それで、菓子作りをせねばと思うたんじゃが……それで、わしは大変恐ろしいことに気付いたんじゃ」
「は? 恐ろしいこと? というか、話の流れが全く理解できないのですが? わたしにもわかるように説明を願います」
「じゃから、説明しとるじゃろ? のう、シスター・マリッサよ。わしらは、ここ数週間、家に帰る暇も無く、仮眠室や医務室で雑魚寝しとったじゃろ」
「……ええ、そうですね。一応、男女別で部屋は分かれていたとは言え、死ぬ程の忙しさでそれどころではありませんでしたね」
「教皇選出から任命、そして怒涛の後始末……それらにかまけて、わしは重大なことを忘れておったのじゃ」
「ですから、なんだというのですか?」
「・・・わしの、教皇選出の儀の後も普通に過ごす予定でおったからの。菓子を作るつもりで・・・キッチンに卵を出しておいたのじゃっ!? それを先程思い出したのじゃっ!? どうじゃ、恐ろしいじゃろっ!?!? 戦慄もんじゃろっ!? ちょーヤバいじゃろっ!?!?」
「なんですってっ!?」
事態の深刻さに、マリッサが盛大に顔を顰める。
「・・・は? 卵? 猊下、ふざけておいでで?」
――――――――――――
ロマ爺「・・・わしの、教皇選出の儀の後も普通に過ごす予定でおったからの。菓子を作るつもりで・・・キッチンに卵を出しておいたのじゃっ!? それを先程思い出したのじゃっ!? どうじゃ、恐ろしいじゃろっ!?!? 戦慄もんじゃろっ!? ちょーヤバいじゃろっ!?!?」ヽ(;゚;Д;゚;; )ギャァァァ
マリッサ「なんですってっ!?」( º言º; )"
151
あなたにおすすめの小説
『これも「ざまぁ」というのかな?』完結 - どうぞ「ざまぁ」を続けてくださいな・他
こうやさい
ファンタジー
短い話を投稿するのが推奨されないということで、既存のものに足して投稿することにしました。
タイトルの固定部分は『どうぞ「ざまぁ」を続けてくださいな・他』となります。
タイトルやあらすじのみ更新されている場合がありますが、本文は近いうちに予約投稿されるはずです。
逆にタイトルの変更等が遅れる場合もあります。
こちらは現状
・追放要素っぽいものは一応あり
・当人は満喫している
類いのシロモノを主に足していくつもりの短編集ですが次があるかは謎です。
各話タイトル横の[]内は投稿時に共通でない本来はタグに入れるのものや簡単な補足となります。主観ですし、必ず付けるとは限りません。些細な事に付いているかと思えば大きなことを付け忘れたりもします。どちらかといえば注意するため要素です。期待していると肩透かしを食う可能性が高いです。
あらすじやもう少し細かい注意書き等は公開30分後から『ぐだぐだ。(他称)』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/628331665/878859379)で投稿されている可能性があります。よろしければどうぞ。
URL of this novel:https://www.alphapolis.co.jp/novel/628331665/750518948
水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?
ラララキヲ
ファンタジー
わたくしは出来損ない。
誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。
それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。
水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。
そんなわたくしでも期待されている事がある。
それは『子を生むこと』。
血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……
政略結婚で決められた婚約者。
そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。
婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……
しかし……──
そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。
前世の記憶、前世の知識……
わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……
水魔法しか使えない出来損ない……
でも水は使える……
水……水分……液体…………
あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?
そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──
【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】
【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】
【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
婚約破棄を目撃したら国家運営が破綻しました
ダイスケ
ファンタジー
「もう遅い」テンプレが流行っているので書いてみました。
王子の婚約破棄と醜聞を目撃した魔術師ビギナは王国から追放されてしまいます。
しかし王国首脳陣も本人も自覚はなかったのですが、彼女は王国の国家運営を左右する存在であったのです。
断罪イベントの夢を見たから、逆ざまあしてみた
七地潮
ファンタジー
学園のパーティーで、断罪されている夢を見たので、登場人物になりきって【ざまぁ】してみた、よくあるお話。
真剣に考えたら負けです。
ノリと勢いで読んでください。
独自の世界観で、ゆるふわもなにもない設定です。
なろう様でもアップしています。
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる