45 / 55
わぁ! ごはんくれるんですかっ!? ありがとうございます!
しおりを挟む『神竜の微睡む地で聖女を解任させられたから、その慰謝料代わりってやつー?』
と、下位精霊達とは違う軽やかな男のような声が言う。
なんと! 他国の聖女であったか!
『やあ、じいさんがこっちの聖者か』
お嬢ちゃんの背後からひょっこり現れたのは、大分小さなサイズのドラゴンじゃった。通常であれば、卵から孵化したばかりの赤子ドラゴンと言うたところじゃのぅ。しかし、赤子のドラゴンがこのようにハッキリと人語を話すのは見たことがない。
それになにより、クレメンスには見えておらぬ。つまり、この小さなドラゴン殿は通常の……実体のあるドラゴンではないということじゃな。
『おっす、ロマンシス! 天秤さまがお前らに話があるってよ。まずは、欠食娘にメシ食わしてやってくれ。チビ達が道中、そこらの野苺やら花の蜜やらやってたが、人間には足りんだろ』
カラリと笑うのは、風の中位精霊。
「ま、そうじゃの。とりあえず、お嬢さんや。温かい食事でも食べて落ち着かれるがよかろう」
「わぁ! ごはんくれるんですかっ!? ありがとうございます!」
と、輝かんばかりの笑顔を見せるお嬢ちゃん。
「猊下!」
「お嬢さんや、ここへ来る前に普通の食事をしたのはいつじゃったかの?」
安心させるように、にこやかに問い掛ける。
「え~っと? 普通のごはん……は、半月くらい? 食べてない。お金持ってないからずっと野宿だったし。適当に狩りしたり、食べれる草とか採ってたべてました」
「そうかそうか、苦労したんじゃな……温かい食事を用意してあるから、ゆっくり食べて来るといい」
「え? 温かいごはんくれるのっ!? わぁ! 温かい普通のごはんとか、何年振りだろ?」
まさかの年単位で普通の食事を食べられていなかったとはっ!? 下位精霊達の言うておった通り、ほんに不憫な子じゃのぅ……
「はい! 質問です!」
「うん? なんじゃ?」
「美味しそうなごはんを目の前に置いて、わたしの分だけわざと床に零したりとかしませんかっ?」
「っ!? そ、そんなことするはず無いでしょう!」
お嬢ちゃんの質問に、ぎょっとした顔で答えるクレメンス。
「わざと落としたパンを踏み躙って、靴跡の付いたパンを食べろと強要したりとかは?」
「そんなことしませんからっ!? というか……はぁ、大体の事情は察しました。あなたは、もしかしなくても虐待されていたのですね。ああ、返事は結構です。とりあえず、猊下の仰る通り。まずは温かい食事を食べましょうか。案内します」
続いての質問にも驚きと溜め息を零し、同情を宿した目でお嬢ちゃんを見て案内役を買って出るクレメンス。
「食堂はこちらです。付いて来てください」
「はーい」
「よし、俺もメシにするか」
と、お嬢ちゃんとトマスがクレメンスに付いて行くと……
『うっわ……そりゃ、アルメリアが国に戻りたくないって言うワケか……』
小さいドラゴン殿が、それはそれは気の毒そうな声を出す。
『はっはっは、俺が教えてやった浄化が役立ち捲りだな!』
『やー、幾ら浄化したとしても、靴で踏み躙られたパンは食いたくなくね?』
『っつってもなー。アイツ、侵略された国の孤児だし。聖女にしては、めっちゃ待遇悪かったぞ? ほぼほぼ奴隷レベルっつっても過言じゃねぇくらいの扱いだぜ?』
どうやら、あのお嬢ちゃんはこの風の精霊が大分気に掛けておる子のようじゃな。
「ふむ……あのお嬢さんの保護をわしへ頼まれるということでしょうか?」
『ああ、違う違う』
と、小さいドラゴン殿は小さい手をパタパタと振る。
『じいさんは知ってるだろうが、二十年程前に神竜が微睡む国が侵略されただろ?』
「ええ、当時は他の国まで侵略されるのではないかと、国際情勢がピリピリしておりましたからな」
『あそこ、力加減間違えて大陸砕いた審判の竜が、神様に怒られた後に不貞寝してる土地でさ? 実は、ストレス発散で度々発生するスタンピードを蹴散らしてたんだよね』
「はい?」
『で、更に後から来た人間が集落作って住み付き始めてさ? スタンピード蹴散らすついでに人間まで壊滅させたら、神様にまた怒られるからって、そこにいた魔力量の一番多かった人間と契約を交わした。スタンピードを蹴散らしたら、それ以上暴れず、人間の集落を傷付けずに不貞寝を続けるという感じの盟約だったかな? まあ、俺は奴本人じゃないから細かい契約は知らんけど』
「はぁ……」
なにやら、話が大分大きくなって来おったわい。
『だけど、以前の王族の血筋は、前の侵略で途絶えた』
「成る程。審判竜様からすると、盟約は人間側から一方的に破棄されたと捉えられた、ということでしょうか?」
『いや? アイツ自身は、そんなこと気にするような細かい奴じゃない。というか、めっちゃ大雑把だから余計に問題というか……』
やれやれとでも言いたげに、盛大に落ちる溜め息。
「どういう意味でしょうか? ドラゴン殿」
98
あなたにおすすめの小説
『これも「ざまぁ」というのかな?』完結 - どうぞ「ざまぁ」を続けてくださいな・他
こうやさい
ファンタジー
短い話を投稿するのが推奨されないということで、既存のものに足して投稿することにしました。
タイトルの固定部分は『どうぞ「ざまぁ」を続けてくださいな・他』となります。
タイトルやあらすじのみ更新されている場合がありますが、本文は近いうちに予約投稿されるはずです。
逆にタイトルの変更等が遅れる場合もあります。
こちらは現状
・追放要素っぽいものは一応あり
・当人は満喫している
類いのシロモノを主に足していくつもりの短編集ですが次があるかは謎です。
各話タイトル横の[]内は投稿時に共通でない本来はタグに入れるのものや簡単な補足となります。主観ですし、必ず付けるとは限りません。些細な事に付いているかと思えば大きなことを付け忘れたりもします。どちらかといえば注意するため要素です。期待していると肩透かしを食う可能性が高いです。
あらすじやもう少し細かい注意書き等は公開30分後から『ぐだぐだ。(他称)』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/628331665/878859379)で投稿されている可能性があります。よろしければどうぞ。
URL of this novel:https://www.alphapolis.co.jp/novel/628331665/750518948
水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?
ラララキヲ
ファンタジー
わたくしは出来損ない。
誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。
それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。
水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。
そんなわたくしでも期待されている事がある。
それは『子を生むこと』。
血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……
政略結婚で決められた婚約者。
そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。
婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……
しかし……──
そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。
前世の記憶、前世の知識……
わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……
水魔法しか使えない出来損ない……
でも水は使える……
水……水分……液体…………
あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?
そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──
【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】
【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】
【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
婚約破棄を目撃したら国家運営が破綻しました
ダイスケ
ファンタジー
「もう遅い」テンプレが流行っているので書いてみました。
王子の婚約破棄と醜聞を目撃した魔術師ビギナは王国から追放されてしまいます。
しかし王国首脳陣も本人も自覚はなかったのですが、彼女は王国の国家運営を左右する存在であったのです。
断罪イベントの夢を見たから、逆ざまあしてみた
七地潮
ファンタジー
学園のパーティーで、断罪されている夢を見たので、登場人物になりきって【ざまぁ】してみた、よくあるお話。
真剣に考えたら負けです。
ノリと勢いで読んでください。
独自の世界観で、ゆるふわもなにもない設定です。
なろう様でもアップしています。
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる