【第三幕完結】奴隷から王になった少女が紡ぐ物語

香口 深衣

文字の大きさ
24 / 70
第ニ幕

第四章 学舎と子供 ②

しおりを挟む
「汚いところだけど、適当に寛いでね。」
「ありがとう。」

 案内されたのは、広い部屋。机が並んでおり、普段そこに子どもたちが座って色んな事を教わっているのだろう。使いふるされた机は、傷だらけで何だか重みを感じる。
 子供たちは、別の部屋で待たせていると珉玉は言う。子供たちに聞かれたくない話しもあるかと、考えてくれたのだろう。そう言う気配りできるところが、学舎の長らしいなと思う。

「白斗たちが元気になって良かったわ。」
「ああ、私もホッとしたところだよ。」

 雪が前に会った時は、親と別れたばかりで、表情がなく心配だったが、今日は元気いっぱいの姿を見れて安心した。きっと、気持ちに整理がついたのだろう。
 彼らの親は戦に捲き込まれて、亡くなったのだ。一年程前に起きた、羅芯での謀反。隆盛のやり方に反対する保守派が起こしたもので、羅芯の民が捲き込まれたのだ。
 首謀者は羅芯の勅任官だった丹歩たんふ。隆盛のやり方が気に入らず対立が多かったのだが、保守派を集めて反旗を翻したのだった。
 内乱は数日に渡り続いたのだが、丹歩の死によって幕は閉じた。
 戦が激しくなる中で運悪く馬に矢が当たって、暴れた馬に振り落とされて死んだと言う。打ち所が悪かったらしい。
 人が死ぬことは好きではないし、戦も嫌いだ。何故戦にしなければ事を解決できないのか、雪は疑問でしかたがなかった。別に隆盛は、悪いことをしている訳ではない。昔からの悪い風習を、取り除いているだけなのだ。
 ただ、それを良く思わないものは確かに多い。彼は命を狙われることも多く、何度か怪我をして帰って来たとこもあった。
 今回の件は、本当に事が大きくなりすぎたと雪ですら感じている。だからどういう形でも、収まったことは良いことだと雪は感じていた。

「雪はどう?」
「えっ?」

 考え込んでいて、すっかり珉玉の事を忘れかけていた雪はハッと我に返る。

「変わったことは…」

 そう言って珉玉は翠を見る。

「そう、聞いて珉玉!私、弟ができたのよ!」

 不満そうな翠を無視して雪は続ける。

「翠って言うの。東刃の槍郡そうぐんから来たのよ。」
「…槍郡…」
「珉玉?」
「えっ?あ、ああ、聞いたことない名前だなって思ったの。」
「そうよね。他国の事だもん。仕方ないよ。」
「もっと、学ばなきゃいけないわね。」

 そう言って恥ずかしそうに、頭をかく珉玉の手は荒れていた。よく見れば、目元にも隈が出来ている。
 日々、子供たちの世話に追われながらも、夜、子供たちが寝静まったあとに勉強をしているのだろう。
 基本、彼女も教える側の人間なのだ。他にも先生はいるが、負けたくないのだろう。彼女のそういう所が、雪にとって憧れであり彼女を好きな理由だった。

「学舎は順調?」
「ええ。かなりたくさんの子どもたちが学びに来てるよ。この部屋が埋まるくらい人が集まる日もあって、昔じゃ考えられないくらいだよ。」
「そうなのね。それはすごいわ。」

 そう言って見渡す部屋は、つくりが荒くてすきま風が入ってくる。雨が降れば雨漏りもしそうだなと感じた。
 珉玉は不便に感じてはいないのだろうか?隆盛に言えば支援も可能なはずなのにと、雪は少しだけ疑問に感じた。

「珉玉、隆盛からの支援金は送られてないの?」
「えっ?あ、ああ、いや、家を直すお金はあるんだけど、うちの子たち元気だろ?またどうせすぐ壊されるって思うとね…他のことを優先させてるんだ。」
「なるほど。他って食事とかってこと?」
「うーん、それもあるけど、教材とかかなぁ。本を買ったり生徒の紙や筆を買ったりとか…まぁ、本や紙は高価だからね。」
「何か必要な本があれば、隆盛に頼んで揃えてもらうよ。何が必要?」
「えっ?だ、大丈夫だよ。」
「でも、何かあれば用意するよ。遠慮なく言って。」
「い、いいよ。気にしないで。いつまでも頼る訳にはいかなし、私たちは何とかやってるからさ。」

 本来なら国の手を離れて経営できるなら、その方が良いし、珉玉の考え方は間違っていない。でも、雪は何だか寂しい気持ちになっていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

処理中です...