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アンジェラ編
マリアンヌの真実
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この世には恵まれた人と恵まれない人がいる。恵まれた人はアンジェラだ。恵まれないのはあたしだ。
伯父伯母を実の両親と思って育った。辺境近くの鄙びた町の宿屋の娘だった。朝から晩までお客さんに声をかけて、明るい看板娘だと言われてた。
そのうち婿を取って一生ここで生きて行くんだと思ってた。その頃は自分が恵まれてないなんてカケラも思ってなかった。
ある日いかにも高級そうな服を着た男が訪ねてきた。両親は慌てて、あたしに部屋に行ってろと遠ざけて、長時間何か話してた。
明日の朝の仕込みあるので、食堂に行こうと通りかかったら、いつも温厚な父があれはここで幸せになるんだ。王都に行っていいことなんかあるもんか、連れて行かせないと怒鳴っていた。なんのことだろうと思ったがその時はそれ以上考えなかった。
それから一ヶ月後、あたしが友達と街に出かけている時に、うちの宿屋は盗賊に襲われた。抵抗した両親と宿泊していたお客さん全員殺されてしまった。あたしは両親の骸に取り縋って泣いた。
母の兄という人が来てくれて、両親の葬儀を取り仕切ってくれ、宿屋を売り払い母の実家があると言う王都に連れて行かれた。
そこであたしは王宮で侍女をしていた母の妹が陛下の寵愛を受けて生まれた子だと聞かされた。寵愛を恐れた王妃のせいで、母は無実の罪で処刑され、お前は平民として育てられていたのだと告げられた。やっと親族の抗議が聞き入れられて王女として認められた。国王から賜った邸に入って王女として教育を受けるようにと。
それからはあたしにとっては地獄だった。貴族令嬢どころか王族としての振る舞いを求められた。十代始めまで平民として宿屋で働いていたあたしには苦痛でしかなかった。
それでもデビュタントまでには歩けて食べるくらいまでになった。家庭教師には一言でも話すとボロが出るので黙っていろとは言われたが。
それでもあたしは白いドレスを着て白い羽根のついた髪飾りをつけて、初めて入った美しい王宮に目を奪われていた。
そこで初めて王太子を見た。王太子が兄とは思ってなかった。ひそひそと周りの人間が話すのを聞いて、利用するために王女のフリをさせられているんだとわかっていたから。
麗しい王太子に一目で魂を持って行かれた。あの人の妻になりたいと思っていたわけではなかった。母のように密かに愛妾として、胸にかき抱いて欲しいと思うようになった。
今の王女のままでは近づくこともできない。誰か高位貴族の嫡子の妻になれば、近づけるだろうと、王女だったら誰か娶ってくれるだろうと、片端から色仕掛けで近づいてもダメだった。
高位貴族の嫡子となんの障害もなく結ばれて行く高位貴族令嬢が憎かった。生まれがいいだけではないか。
あたしは初めてここで自分は恵まれてないんだと思った。
そんなあたしにドルン侯爵が近づいて来た。そしてあっという間にドルン侯爵が指示した男達に媚薬を盛られて、性技を仕込まれてしまった。その中に侯爵の子息のディビスやその取り巻きの貴族の子息がいた。あたしはあの男達のおもちゃになった。
ドルン侯爵が密かに売り捌いてる媚薬を狙った男に盛り、仕込んでやった性技で男を虜にして婚姻に持ち込めと。だがなかなか盛れるような場面に行けない。偽王女でも王族だから自ら飲み物を渡すような場面はないのだ。
ドルン侯爵が自分がなんとかしてやると言い出した。だれがいいかと聞いて来た。
王妃のお茶会に来ている、すましたプロイ公爵令嬢が気に入らない。舞踏会で踊ってるところを見ると相思相愛のようなのにプロイ公爵令嬢と婚約してないヘルマン侯爵令息がいい。容姿も好みだ。一番の目的はあのすました公爵令嬢を泣かすことだ。あの女の好きな人を身体と性技のテクニックで掠奪してやる。
伯父伯母を実の両親と思って育った。辺境近くの鄙びた町の宿屋の娘だった。朝から晩までお客さんに声をかけて、明るい看板娘だと言われてた。
そのうち婿を取って一生ここで生きて行くんだと思ってた。その頃は自分が恵まれてないなんてカケラも思ってなかった。
ある日いかにも高級そうな服を着た男が訪ねてきた。両親は慌てて、あたしに部屋に行ってろと遠ざけて、長時間何か話してた。
明日の朝の仕込みあるので、食堂に行こうと通りかかったら、いつも温厚な父があれはここで幸せになるんだ。王都に行っていいことなんかあるもんか、連れて行かせないと怒鳴っていた。なんのことだろうと思ったがその時はそれ以上考えなかった。
それから一ヶ月後、あたしが友達と街に出かけている時に、うちの宿屋は盗賊に襲われた。抵抗した両親と宿泊していたお客さん全員殺されてしまった。あたしは両親の骸に取り縋って泣いた。
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そこであたしは王宮で侍女をしていた母の妹が陛下の寵愛を受けて生まれた子だと聞かされた。寵愛を恐れた王妃のせいで、母は無実の罪で処刑され、お前は平民として育てられていたのだと告げられた。やっと親族の抗議が聞き入れられて王女として認められた。国王から賜った邸に入って王女として教育を受けるようにと。
それからはあたしにとっては地獄だった。貴族令嬢どころか王族としての振る舞いを求められた。十代始めまで平民として宿屋で働いていたあたしには苦痛でしかなかった。
それでもデビュタントまでには歩けて食べるくらいまでになった。家庭教師には一言でも話すとボロが出るので黙っていろとは言われたが。
それでもあたしは白いドレスを着て白い羽根のついた髪飾りをつけて、初めて入った美しい王宮に目を奪われていた。
そこで初めて王太子を見た。王太子が兄とは思ってなかった。ひそひそと周りの人間が話すのを聞いて、利用するために王女のフリをさせられているんだとわかっていたから。
麗しい王太子に一目で魂を持って行かれた。あの人の妻になりたいと思っていたわけではなかった。母のように密かに愛妾として、胸にかき抱いて欲しいと思うようになった。
今の王女のままでは近づくこともできない。誰か高位貴族の嫡子の妻になれば、近づけるだろうと、王女だったら誰か娶ってくれるだろうと、片端から色仕掛けで近づいてもダメだった。
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あたしは初めてここで自分は恵まれてないんだと思った。
そんなあたしにドルン侯爵が近づいて来た。そしてあっという間にドルン侯爵が指示した男達に媚薬を盛られて、性技を仕込まれてしまった。その中に侯爵の子息のディビスやその取り巻きの貴族の子息がいた。あたしはあの男達のおもちゃになった。
ドルン侯爵が密かに売り捌いてる媚薬を狙った男に盛り、仕込んでやった性技で男を虜にして婚姻に持ち込めと。だがなかなか盛れるような場面に行けない。偽王女でも王族だから自ら飲み物を渡すような場面はないのだ。
ドルン侯爵が自分がなんとかしてやると言い出した。だれがいいかと聞いて来た。
王妃のお茶会に来ている、すましたプロイ公爵令嬢が気に入らない。舞踏会で踊ってるところを見ると相思相愛のようなのにプロイ公爵令嬢と婚約してないヘルマン侯爵令息がいい。容姿も好みだ。一番の目的はあのすました公爵令嬢を泣かすことだ。あの女の好きな人を身体と性技のテクニックで掠奪してやる。
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