好きだった人 〜二度目の恋は本物か〜

ぐう

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アンジェラ編

エミールの後悔

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 婚約披露パーティは苦痛でしかなかった。
 マリアンヌは私のことなど地位を得るだけの手段のくせに、私がアンジェを愛していることに嫉妬していた。上手く籠絡できれば誰でもよかったくせにだ。
 マリアンヌはアンジェが嫉妬に顔を歪ませる様を見たかったらしい。公爵令嬢として完璧な淑女の彼女がそんな顔を見せるわけがない。
 私はアンジェを見つめるだけで、弁解など何も言えなかった。
 
 婚約披露パーティーにマリアンヌは王太子殿下も招待した。王族にはマリアンヌはいないものとして扱われているので、無理ではないかと思ったが意外なことにいらした。他に何か目的があるのではと王太子殿下から目が離せなかった。
 誰もが平伏す威厳がありながら、王族らしい華やかな雰囲気を持ち、長身で剣を嗜むためしなやかな身体を持つ。日の光が流れるプラチナブロンドと深い碧眼の王子様らしい容姿の王太子殿下は今日も麗しかった。
 だが、その麗しさは表面だけ、恐ろしく優秀で冷酷な面を持ち、人の上に立つのに相応しい資格を持つ人だ。彼に憧れて婚約者になりたいと願う国内の貴族令嬢は掃いて捨てるほどいる。
 しかし、まだ婚約者が決まっていない。意中の人が成人するのを待っていると言う噂もある。

 その王太子殿下がアンジェと踊っている。しかも2曲続けてだ。嫌な予感がしてじっと二人を見つめる。二人がソファで休憩しながら楽しげに話をしている。アンジェはデビュタントの後、王妃様の選んだ令嬢達が呼ばれるお茶会に毎回呼ばれてるという。そのお茶会は王太子殿下の婚約者候補探しだという噂もある。胸の奥からじわじわと不安が浮き上がってくる。

 帰ろうとするジョージとアンジェを追って出口まで行ったが、二人とも軽く礼を取っただけで振り返りもしなかった。
 私は大事なものが手の指の間から抜け落ちて行く感覚に呆然としてた。


 マリアンヌが使った媚薬は、国内で禁じられている。
 なんとかドルン侯爵とマリアンヌの媚薬繋がりを暴かないと。侯爵は媚薬を密売しているはずだ。
 嵌められただけで婚約破棄するからと、何度も説明に公爵家に行ったが、会わせて貰えなかった。頼みの綱のジョージに連絡しても無視されてしまった。

 毎日イライラとしている私をみて、マリアンヌは薄笑いを浮かべ毎日のように抱けと迫って来た。私を満足させたら婚約破棄してあげると言って来た。
 婚約破棄をスムーズに済ませるため、マリアンヌの機嫌を損なわないために付き合うしかなかった。
 マリアンヌを抱く前に貴族子息の教育として閨は何度か経験がある。媚薬を盛られた時は夢中でわからなかったが、マリアンヌは男慣れしている。
 あの時も決して処女などではなかった。それを責めると価値のない王女が生き抜くには身体しかないじゃないと諦めたような笑みをした。不憫には思ったが、媚薬を盛ったことは許せるはずはない。

 ある日マリアンヌからアンジェが王妃様のもとに行儀見習いで王宮に上がったと聞いた。マリアンヌはヘラヘラ笑って、わかっていないようだったが、それは王族の婚約者候補として教育すると言うこと。私は間に合わなかった。
  
 あの王太子殿下が狙った女性を手放すはずはない。アンジェはいつ王太子殿下に見初められたのだろう。
 アンジェを手に入れられないのなら、もうどうでもいい。婚約破棄するためにマリアンヌのご機嫌を損なわないように抱くのもやめた。

 マリアンヌが私を愛してないのかとすがるので、私の愛はアンジュのもとにあるとその手を振り払った。
 マリアンヌがあんたもそうなんだと王女らしからぬ捨て台詞を残して駆け去った。
 マリアンヌがそれから私に近づかなかったので、これ幸いとドルン侯爵と手を切るため関わりのあったという証拠を全て処分した。



******



 マリアンヌが処刑された。王族を騙った罪だ。また媚薬密売をしたとしてドルン侯爵一家とドルン侯爵令息の取り巻きの貴族とドルン侯爵の息のかかった商会に関わる人間全て処刑された。早く手を切ったからか我が侯爵家は罪にはならなかった。
 だが、私にはマリアンヌと婚約していたと言う悪評だけ残った。
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