好きだった人 〜二度目の恋は本物か〜

ぐう

文字の大きさ
8 / 43
アンジェラ編

エミールの後悔

しおりを挟む
 婚約披露パーティは苦痛でしかなかった。
 マリアンヌは私のことなど地位を得るだけの手段のくせに、私がアンジェを愛していることに嫉妬していた。上手く籠絡できれば誰でもよかったくせにだ。
 マリアンヌはアンジェが嫉妬に顔を歪ませる様を見たかったらしい。公爵令嬢として完璧な淑女の彼女がそんな顔を見せるわけがない。
 私はアンジェを見つめるだけで、弁解など何も言えなかった。
 
 婚約披露パーティーにマリアンヌは王太子殿下も招待した。王族にはマリアンヌはいないものとして扱われているので、無理ではないかと思ったが意外なことにいらした。他に何か目的があるのではと王太子殿下から目が離せなかった。
 誰もが平伏す威厳がありながら、王族らしい華やかな雰囲気を持ち、長身で剣を嗜むためしなやかな身体を持つ。日の光が流れるプラチナブロンドと深い碧眼の王子様らしい容姿の王太子殿下は今日も麗しかった。
 だが、その麗しさは表面だけ、恐ろしく優秀で冷酷な面を持ち、人の上に立つのに相応しい資格を持つ人だ。彼に憧れて婚約者になりたいと願う国内の貴族令嬢は掃いて捨てるほどいる。
 しかし、まだ婚約者が決まっていない。意中の人が成人するのを待っていると言う噂もある。

 その王太子殿下がアンジェと踊っている。しかも2曲続けてだ。嫌な予感がしてじっと二人を見つめる。二人がソファで休憩しながら楽しげに話をしている。アンジェはデビュタントの後、王妃様の選んだ令嬢達が呼ばれるお茶会に毎回呼ばれてるという。そのお茶会は王太子殿下の婚約者候補探しだという噂もある。胸の奥からじわじわと不安が浮き上がってくる。

 帰ろうとするジョージとアンジェを追って出口まで行ったが、二人とも軽く礼を取っただけで振り返りもしなかった。
 私は大事なものが手の指の間から抜け落ちて行く感覚に呆然としてた。


 マリアンヌが使った媚薬は、国内で禁じられている。
 なんとかドルン侯爵とマリアンヌの媚薬繋がりを暴かないと。侯爵は媚薬を密売しているはずだ。
 嵌められただけで婚約破棄するからと、何度も説明に公爵家に行ったが、会わせて貰えなかった。頼みの綱のジョージに連絡しても無視されてしまった。

 毎日イライラとしている私をみて、マリアンヌは薄笑いを浮かべ毎日のように抱けと迫って来た。私を満足させたら婚約破棄してあげると言って来た。
 婚約破棄をスムーズに済ませるため、マリアンヌの機嫌を損なわないために付き合うしかなかった。
 マリアンヌを抱く前に貴族子息の教育として閨は何度か経験がある。媚薬を盛られた時は夢中でわからなかったが、マリアンヌは男慣れしている。
 あの時も決して処女などではなかった。それを責めると価値のない王女が生き抜くには身体しかないじゃないと諦めたような笑みをした。不憫には思ったが、媚薬を盛ったことは許せるはずはない。

 ある日マリアンヌからアンジェが王妃様のもとに行儀見習いで王宮に上がったと聞いた。マリアンヌはヘラヘラ笑って、わかっていないようだったが、それは王族の婚約者候補として教育すると言うこと。私は間に合わなかった。
  
 あの王太子殿下が狙った女性を手放すはずはない。アンジェはいつ王太子殿下に見初められたのだろう。
 アンジェを手に入れられないのなら、もうどうでもいい。婚約破棄するためにマリアンヌのご機嫌を損なわないように抱くのもやめた。

 マリアンヌが私を愛してないのかとすがるので、私の愛はアンジュのもとにあるとその手を振り払った。
 マリアンヌがあんたもそうなんだと王女らしからぬ捨て台詞を残して駆け去った。
 マリアンヌがそれから私に近づかなかったので、これ幸いとドルン侯爵と手を切るため関わりのあったという証拠を全て処分した。



******



 マリアンヌが処刑された。王族を騙った罪だ。また媚薬密売をしたとしてドルン侯爵一家とドルン侯爵令息の取り巻きの貴族とドルン侯爵の息のかかった商会に関わる人間全て処刑された。早く手を切ったからか我が侯爵家は罪にはならなかった。
 だが、私にはマリアンヌと婚約していたと言う悪評だけ残った。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

差し出された毒杯

しろねこ。
恋愛
深い森の中。 一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。 「あなたのその表情が見たかった」 毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。 王妃は少女の美しさが妬ましかった。 そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。 スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。 お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。 か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。 ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。 同名キャラで複数の作品を書いています。 立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。 ところどころリンクもしています。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!

【完結】婚約破棄された令嬢の毒はいかがでしょうか

まさかの
恋愛
皇太子の未来の王妃だったカナリアは突如として、父親の罪によって婚約破棄をされてしまった。 己の命が助かる方法は、友好国の悪評のある第二王子と婚約すること。 カナリアはその提案をのんだが、最初の夜会で毒を盛られてしまった。 誰も味方がいない状況で心がすり減っていくが、婚約者のシリウスだけは他の者たちとは違った。 ある時、シリウスの悪評の原因に気付いたカナリアの手でシリウスは穏やかな性格を取り戻したのだった。 シリウスはカナリアへ愛を囁き、カナリアもまた少しずつ彼の愛を受け入れていく。 そんな時に、義姉のヒルダがカナリアへ多くの嫌がらせを行い、女の戦いが始まる。 嫁いできただけの女と甘く見ている者たちに分からせよう。 カナリア・ノートメアシュトラーセがどんな女かを──。 小説家になろう、エブリスタ、アルファポリス、カクヨムで投稿しています。

東雲の空を行け ~皇妃候補から外れた公爵令嬢の再生~

くる ひなた
恋愛
「あなたは皇妃となり、国母となるのよ」  幼い頃からそう母に言い聞かされて育ったロートリアス公爵家の令嬢ソフィリアは、自分こそが同い年の皇帝ルドヴィークの妻になるのだと信じて疑わなかった。父は長く皇帝家に仕える忠臣中の忠臣。皇帝の母の覚えもめでたく、彼女は名実ともに皇妃最有力候補だったのだ。  ところがその驕りによって、とある少女に対して暴挙に及んだことを理由に、ソフィリアは皇妃候補から外れることになる。  それから八年。母が敷いた軌道から外れて人生を見つめ直したソフィリアは、豪奢なドレスから質素な文官の制服に着替え、皇妃ではなく補佐官として皇帝ルドヴィークの側にいた。  上司と部下として、友人として、さらには密かな思いを互いに抱き始めた頃、隣国から退っ引きならない事情を抱えた公爵令嬢がやってくる。 「ルドヴィーク様、私と結婚してくださいませ」  彼女が執拗にルドヴィークに求婚し始めたことで、ソフィリアも彼との関係に変化を強いられることになっていく…… 『蔦王』より八年後を舞台に、元悪役令嬢ソフィリアと、皇帝家の三男坊である皇帝ルドヴィークの恋の行方を描きます。

その結婚、承服致しかねます

チャイムン
恋愛
結婚が五か月後に迫ったアイラは、婚約者のグレイグ・ウォーラー伯爵令息から一方的に婚約解消を求められた。 理由はグレイグが「真実の愛をみつけた」から。 グレイグは彼の妹の侍女フィルとの結婚を望んでいた。 誰もがゲレイグとフィルの結婚に難色を示す。 アイラの未来は、フィルの気持ちは…

愛する人は、貴方だけ

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。 天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。 公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。 平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。 やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。

愛する人のためにできること。

恋愛
彼があの娘を愛するというのなら、私は彼の幸せのために手を尽くしましょう。 それが、私の、生きる意味。

嫌われ者の王弟殿下には、私がお似合いなのでしょう? 彼が王になったからといって今更離婚しろなんて言わないでください。

木山楽斗
恋愛
冷遇されていたフェルリナは、妹の策略によって嫌われ者の王弟殿下ロナードと結婚することになった。 色々と問題があると噂だったロナードとの婚約に不安を感じていたフェルリナだったが、彼は多少面倒臭がり屋ではあったが、悪い人ではなかっため、なんとか事なきを得た。 それから穏やかな生活を送っていた二人だったが、ある時ロナードの兄である国王が死去したという事実を知らされる。 王位を継承できるのは、ロナードだけであったため、彼はほぼなし崩し的に国王となり、フェルリナはその妻となることになったのだ。 しかし、フェルリナの妹はそれを快く思わなかった。 ロナードと婚約破棄しろ。そう主張する妹を、フェルリナはロナードの助けも借りつつ切り捨てるのだった。

4人の女

猫枕
恋愛
カトリーヌ・スタール侯爵令嬢、セリーヌ・ラルミナ伯爵令嬢、イネス・フーリエ伯爵令嬢、ミレーユ・リオンヌ子爵令息夫人。 うららかな春の日の午後、4人の見目麗しき女性達の優雅なティータイム。 このご婦人方には共通点がある。 かつて4人共が、ある一人の男性の妻であった。 『氷の貴公子』の異名を持つ男。 ジルベール・タレーラン公爵令息。 絶対的権力と富を有するタレーラン公爵家の唯一の後継者で絶世の美貌を持つ男。 しかしてその本性は冷酷無慈悲の女嫌い。 この国きっての選りすぐりの4人のご令嬢達は揃いも揃ってタレーラン家を叩き出された仲間なのだ。 こうやって集まるのはこれで2回目なのだが、やはり、話は自然と共通の話題、あの男のことになるわけで・・・。

処理中です...