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ミラ編
ミラの帰還
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「さあ マリアンヌ入って。ヘルマン様は時間が無いのよ」
ミラが足早にエミールとマリアンヌを院長室に招き入れる。
「マリアンヌ こちらはエミール・ヘルマン様 あなたが言っていたエミリアのお父様だという方。わたくしの手紙を読んでわざわざ本土からおいでくださったの」
マリアンヌがおずおず入って来て扉の前に立っている。ミラと院長をすがるように見つめた。
「この人はあたしの言ってたエミールではないです。あたしのエミールはエミリアにそっくりでサラサラのプラチナブロンドの髪に碧眼なんです。まるで王子様みたいにキラキラしてるんです。だからその人は違います。人違いだと思います。せっかく探してもらったのにごめんなさい」
言うだけ言ってマリアンヌが出て行った。
エミールが後ろ姿を見ていたが院長に座るように促された。
「エミリアの父親は黒髪黒目のヘルマン様ではありませんでしたね」
院長はため息をついた。
「そうですね。茶色の髪に茶色の目のあの子は当時マリアンヌと関係のあったドルン侯爵の息子のディビスによく似ていると思います。と言っても彼はもう処刑されてますが」
ミラが驚愕に目を見開いた。重ねて院長がエミールに尋ねる。
「マリアンヌの言うプラチナブロンドに碧眼の人に心当たりありますか」
「王太子殿下だと思います。もちろんなんの関係もありませんでしたが、マリアンヌは王太子殿下に恋をしていました」
「王太子殿下に……」
ミラが呟く。
「院長、ホーク伯爵に頼まれたのですが、マリアンヌの件がはっきりしたら、ミラ嬢を伯爵家に戻して欲しいと」
ミラがハッとしたように物思いからもどる。
「兄がお願いしたのですね。ですが精神が不安定なマリアンヌの子育てを手伝ってやらないといけないので、このままここにいようと思っています」
ミラは視線を自分の掌に移し、指先をじっと見る。
「わたしはマリアンヌがおかしいことに何となく気がついていたけれど、ヘルマン様が茶色の髪に茶色の瞳の方だとずっと思って自分の気持ちを抑えておりました。エミリアの髪は茶色なのに、なぜプラチナブロンドとマリアンヌが言い張るのかよく考えるべきだったと今なら思います」
「院長 マリアンヌを医者にみせませんか?エミリアが育っていくにあたってマリアンヌがこのままでいいとは思えません。本土に戻ってマリアンヌを医者に見せて、エミリアを養育してくれるものを付けたらどうでしょうか」
「そうですわね。このままにしてはエミリアの将来によくありません。ミラもいい加減ここを出る決意をしなければいけません。元々あなたにとってここは仮の場所だったのだから」
「ミラ嬢がついて来てくださるなら心強いです。ですがまず本土で三人を受け入れる準備をして来ます。ホーク伯爵家ではミラ嬢の還俗手続きを進めていると聞きました。すべて揃いましたら迎えに来ます」
「よろしくお願いします。私もミラとマリアンヌとエミリアがすぐに出ていけるように準備します」
「わかりました。それでは今日はこの辺で」
院長室を出るとエミリアが待っていた。
「おじさん、おじさんはエミリアのパパじゃないんだよね?ママがエミリのパパはプラチナブロンドだって言うから」
「パパじゃないけど、また来るね。」
エミリアにちぎれんばかりに手を振られて出て行く船のデッキでエミールはなんとも言えない気持ちになった。
ミラが足早にエミールとマリアンヌを院長室に招き入れる。
「マリアンヌ こちらはエミール・ヘルマン様 あなたが言っていたエミリアのお父様だという方。わたくしの手紙を読んでわざわざ本土からおいでくださったの」
マリアンヌがおずおず入って来て扉の前に立っている。ミラと院長をすがるように見つめた。
「この人はあたしの言ってたエミールではないです。あたしのエミールはエミリアにそっくりでサラサラのプラチナブロンドの髪に碧眼なんです。まるで王子様みたいにキラキラしてるんです。だからその人は違います。人違いだと思います。せっかく探してもらったのにごめんなさい」
言うだけ言ってマリアンヌが出て行った。
エミールが後ろ姿を見ていたが院長に座るように促された。
「エミリアの父親は黒髪黒目のヘルマン様ではありませんでしたね」
院長はため息をついた。
「そうですね。茶色の髪に茶色の目のあの子は当時マリアンヌと関係のあったドルン侯爵の息子のディビスによく似ていると思います。と言っても彼はもう処刑されてますが」
ミラが驚愕に目を見開いた。重ねて院長がエミールに尋ねる。
「マリアンヌの言うプラチナブロンドに碧眼の人に心当たりありますか」
「王太子殿下だと思います。もちろんなんの関係もありませんでしたが、マリアンヌは王太子殿下に恋をしていました」
「王太子殿下に……」
ミラが呟く。
「院長、ホーク伯爵に頼まれたのですが、マリアンヌの件がはっきりしたら、ミラ嬢を伯爵家に戻して欲しいと」
ミラがハッとしたように物思いからもどる。
「兄がお願いしたのですね。ですが精神が不安定なマリアンヌの子育てを手伝ってやらないといけないので、このままここにいようと思っています」
ミラは視線を自分の掌に移し、指先をじっと見る。
「わたしはマリアンヌがおかしいことに何となく気がついていたけれど、ヘルマン様が茶色の髪に茶色の瞳の方だとずっと思って自分の気持ちを抑えておりました。エミリアの髪は茶色なのに、なぜプラチナブロンドとマリアンヌが言い張るのかよく考えるべきだったと今なら思います」
「院長 マリアンヌを医者にみせませんか?エミリアが育っていくにあたってマリアンヌがこのままでいいとは思えません。本土に戻ってマリアンヌを医者に見せて、エミリアを養育してくれるものを付けたらどうでしょうか」
「そうですわね。このままにしてはエミリアの将来によくありません。ミラもいい加減ここを出る決意をしなければいけません。元々あなたにとってここは仮の場所だったのだから」
「ミラ嬢がついて来てくださるなら心強いです。ですがまず本土で三人を受け入れる準備をして来ます。ホーク伯爵家ではミラ嬢の還俗手続きを進めていると聞きました。すべて揃いましたら迎えに来ます」
「よろしくお願いします。私もミラとマリアンヌとエミリアがすぐに出ていけるように準備します」
「わかりました。それでは今日はこの辺で」
院長室を出るとエミリアが待っていた。
「おじさん、おじさんはエミリアのパパじゃないんだよね?ママがエミリのパパはプラチナブロンドだって言うから」
「パパじゃないけど、また来るね。」
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