26 / 43
ミラ編
ミラの当惑
しおりを挟む私は突然還俗することになって戸惑っていた。
**
ここに来て四年目に兄からの手紙でドルン侯爵家が取り潰されて、ディビスとリリアが処刑されたことを知った。リリアは結局侯爵家に嫁ぐには身分が足りないとディビスの妾になっていたそうだ。そして媚薬を密輸していた商会で働いていたため処刑されたと。
陥れた憎んでも憎みきれない相手ではあったけど一族郎党どころか商会に関わったもの全て処刑されたと聞いて心穏やかにはなれなかった。
兄はこれでミラの冤罪が証明できるから、還俗して戻って来いと手紙は結んであった。だが当主である父からは何も無い。父がここに入れたのだから父の許可が無いと帰れない。しかももう修道女なので当主の還俗願いがないと修道院を出ることはかなわない。
ここに入れられた時、院長様から父が噂が消えたら連れ戻すつもりだと聞いたが、あれも当てにはならないのだと思い知った。やはり父は私に愛情などないのだ。
***
それからマリアンヌがこの島に来て、父の意向はどこにあるにせよ、今はマリアンヌの子育てを助けるのに手一杯だった。
マリアンヌはエミリアの茶の髪をプラチナブロンドだと言い張る。これは父親に似たのだと。マリアンヌの精神が病んでいるのかもしれないと思うが、それ以外ではマリアンヌは愛情のある母親だ。
危なっかしいので私とエレナの手助けは必要だが、エミリアがお母さんと慕うに困るような事はなかった。それでもエミリアを一生ここから出さないわけにも行かない。父親はいた方がいいだろうとマリアンヌにエミリアの父親だと言っているエミールの素性を聞くとすんなり教えてくれた。二番目に好きな人だと。
兄に頼んでヘルマン侯爵令息エミール様に繋ぎを取ってもらった。
驚いた事にヘルマン侯爵家は爵位返上して、エミール様の行方が知れなかった。兄には引き続き行方を追ってもらった。
それから数年後兄から父が病を得て亡くなったと連絡があった。そのため兄が伯爵家を継いだと。
だが、父は私を呼ぶなと言い続けたため亡くなってからの連絡になったと詫びてあった。
父の見舞いに親族知人が訪問してくるので、もし私を見かけたらドルン侯爵家の処刑から日が浅い。過去のことでなにを言うかわからないのでと言う理由だそうだ。
そんな理由で娘の見舞いを拒む父親。亡くなって悲しいというより、ますます私の心は硬く凍り、兄の還俗して戻ってくるようにという連絡を拒絶した。
そんな折兄から外国にいたエミール様と連絡が取れたと手紙が来た。エミール様とお会いしてこんなにすぐ状況が変わると思ってなかった。
****
三ヶ月後エミール様が三人を迎えに来た。私が還俗する手続の書類を伯爵家から預かっても来た。本土の本教会に伯爵家から届出も済んでいるので、すでに私は修道女ではない。院長と仲間の修道女に別れを告げてた。
エミリアは初めて継ぎの当たってない綺麗な服を着せて貰って大はしゃぎで船に向かって駆けていく。
離島で生まれ育ったエミリアには初めてのことばかり。デッキではしゃいでいるエミリアを見守りながら、私は波が照り返す光の眩しさに目を瞑った。ここを出る日が来るとは思ってなかった。このままここで年老いていくのだと思っていた。
エミリアの父親でもないのに、エミール様がマリアンヌ親子を引き取ってくれるとも思ってなかったので、エミール様には感謝しかない。なのに過去エミール様とマリアンヌが子供の父かも知れないと疑われる行為をしていた事に胸がざわめく。なぜなんだろう。
マリアンヌの過去はざっとだが院長から聞かされてきたが、エミリアがディビスの子である事にも動揺しなかったのに、エミールとマリアンヌの関係だけいつまでも心に引っかかるのだ。
121
あなたにおすすめの小説
差し出された毒杯
しろねこ。
恋愛
深い森の中。
一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。
「あなたのその表情が見たかった」
毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。
王妃は少女の美しさが妬ましかった。
そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。
スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。
お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。
か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。
ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。
同名キャラで複数の作品を書いています。
立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。
ところどころリンクもしています。
※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!
【完結】婚約破棄された令嬢の毒はいかがでしょうか
まさかの
恋愛
皇太子の未来の王妃だったカナリアは突如として、父親の罪によって婚約破棄をされてしまった。
己の命が助かる方法は、友好国の悪評のある第二王子と婚約すること。
カナリアはその提案をのんだが、最初の夜会で毒を盛られてしまった。
誰も味方がいない状況で心がすり減っていくが、婚約者のシリウスだけは他の者たちとは違った。
ある時、シリウスの悪評の原因に気付いたカナリアの手でシリウスは穏やかな性格を取り戻したのだった。
シリウスはカナリアへ愛を囁き、カナリアもまた少しずつ彼の愛を受け入れていく。
そんな時に、義姉のヒルダがカナリアへ多くの嫌がらせを行い、女の戦いが始まる。
嫁いできただけの女と甘く見ている者たちに分からせよう。
カナリア・ノートメアシュトラーセがどんな女かを──。
小説家になろう、エブリスタ、アルファポリス、カクヨムで投稿しています。
東雲の空を行け ~皇妃候補から外れた公爵令嬢の再生~
くる ひなた
恋愛
「あなたは皇妃となり、国母となるのよ」
幼い頃からそう母に言い聞かされて育ったロートリアス公爵家の令嬢ソフィリアは、自分こそが同い年の皇帝ルドヴィークの妻になるのだと信じて疑わなかった。父は長く皇帝家に仕える忠臣中の忠臣。皇帝の母の覚えもめでたく、彼女は名実ともに皇妃最有力候補だったのだ。
ところがその驕りによって、とある少女に対して暴挙に及んだことを理由に、ソフィリアは皇妃候補から外れることになる。
それから八年。母が敷いた軌道から外れて人生を見つめ直したソフィリアは、豪奢なドレスから質素な文官の制服に着替え、皇妃ではなく補佐官として皇帝ルドヴィークの側にいた。
上司と部下として、友人として、さらには密かな思いを互いに抱き始めた頃、隣国から退っ引きならない事情を抱えた公爵令嬢がやってくる。
「ルドヴィーク様、私と結婚してくださいませ」
彼女が執拗にルドヴィークに求婚し始めたことで、ソフィリアも彼との関係に変化を強いられることになっていく……
『蔦王』より八年後を舞台に、元悪役令嬢ソフィリアと、皇帝家の三男坊である皇帝ルドヴィークの恋の行方を描きます。
その結婚、承服致しかねます
チャイムン
恋愛
結婚が五か月後に迫ったアイラは、婚約者のグレイグ・ウォーラー伯爵令息から一方的に婚約解消を求められた。
理由はグレイグが「真実の愛をみつけた」から。
グレイグは彼の妹の侍女フィルとの結婚を望んでいた。
誰もがゲレイグとフィルの結婚に難色を示す。
アイラの未来は、フィルの気持ちは…
幼なじみが誕生日に貰ったと自慢するプレゼントは、婚約者のいる子息からのもので、私だけでなく多くの令嬢が見覚えあるものでした
珠宮さくら
恋愛
アニル国で生まれ育ったテベンティラ・ミシュラは婚約者がいなかったが、まだいないことに焦ってはいなかった。
そんな時に誕生日プレゼントだとブレスレットを貰ったことを嬉しそうに語る幼なじみに驚いてしまったのは、付けているブレスレットに見覚えがあったからだったが、幼なじみにその辺のことを誤解されていくとは思いもしなかった。
それに幼なじみの本性をテベンティラは知らなさすぎたようだ。
愛する人は、貴方だけ
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。
天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。
公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。
平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。
やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。
嫌われ者の王弟殿下には、私がお似合いなのでしょう? 彼が王になったからといって今更離婚しろなんて言わないでください。
木山楽斗
恋愛
冷遇されていたフェルリナは、妹の策略によって嫌われ者の王弟殿下ロナードと結婚することになった。
色々と問題があると噂だったロナードとの婚約に不安を感じていたフェルリナだったが、彼は多少面倒臭がり屋ではあったが、悪い人ではなかっため、なんとか事なきを得た。
それから穏やかな生活を送っていた二人だったが、ある時ロナードの兄である国王が死去したという事実を知らされる。
王位を継承できるのは、ロナードだけであったため、彼はほぼなし崩し的に国王となり、フェルリナはその妻となることになったのだ。
しかし、フェルリナの妹はそれを快く思わなかった。
ロナードと婚約破棄しろ。そう主張する妹を、フェルリナはロナードの助けも借りつつ切り捨てるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる