安心して下さい。私の幸せは貴方じゃありません!

minmi

文字の大きさ
9 / 10

しおりを挟む
 あれから話しがとんとん拍子に進み、一週間経たずして殿下との婚約が結ばれた。
 何より乗り気だったのが意外にもシリウス殿下だったこともあり、まだ決まってもない結婚式のウエディングドレスはどんなものがいいか王妃様と嬉々としてデザイン中らしい。
 私としては自分のことを着飾ることにあまり興味がないので、誰かが決めてくれれば助かる。
 
 「ソフィア嬢の魅力を最大限引き出すためにもここはこうして……いや、こっちを………」

 紅茶に手をつけることなく、ブツブツと呟き一心不乱に紙に手を滑らす彼の姿を父と2人愉しげに見守る。
 そう、私が言っていた素晴らしい才能とは芸術家としての才だ。
 芸術家と一言に言っても様々だが、彼にはデザインの才能があった。

 「どんなドレスが出来上がるのか楽しみだね」

 「ええ。以前から殿下の描くものはとても素晴らしいものばかりでしたわ」

 出会いは偶然であったが、彼が描く絵やデザインは私との波長が合うものばかりだった。
 何より……

 「ここにブルーダイヤの飾りを……いや、こっちの方が?侯爵と並んだ時のバランスを考えて……」

 そう、彼は私たち親子のファンだったらしい。
 アイドルでもないためファンというには語弊があるかもしれないが、憧れる2人の並んだ姿を絵に描きたいと出会って間もなくお願いされた時は笑ったものだ。
 お父様へのプレゼントに悩んでいる時も色々と相談に乗ってくれた。
 贈り物に普通の万年筆はつまらないのでは?と考え何か模様を彫りたいと言えば嬉々として一緒に考えてくれた。
 それを先日お父様に教えた時はかなり驚いていたものだ。
 
 「お父様への贈り物ですもの、妥協したくありませんでしたの。あれは私たち2人で考えた世界に一つだけの、お父様だけの万年筆ですわ」

 笑って私がそう言ったその時に、お父様は殿下のことを受け入れたそうだ。
 殿下とはすでに婚約者という関係ではあるが、自分ではまだ彼に恋愛感情は抱いていない……たぶん。
 あれほど王妃様たちの前で言っておいてと言われれば申し訳ないが、友達以上恋人未満、どちらかというと可愛い弟というのが正直なところだ。
 ただトーマスの時とは違い、大切にしたいとは思っている。
 お父様の次ぐらいには。
 だって彼だけが分かってくれたから。
 お父様のことも、お父様を慕っている私のことも。
 
 「お2人が互いを大切に想っていることは見ていてすごく分かります。とても幸せそうで、そんな美しいお2人の姿を僕は描いてみたいのです」

 そう言ってくれた彼とはすぐに打ち解けた。
 殿下は私より2つ年下のため学年は違っていたが、暇を見つけては彼がいる温室に足を運んでいたものだ。

 「殿下が描くものはいつもどこか温かいものを感じますわ。見ていてすごく癒されます」

 「有難う御座います。父上たちはあまり良く思っていないみたいなのでそう言ってもらえると励みになります」

 これはあくまでも彼の趣味であり、それが王子ともなれば周りに受け入れられることは難しいだろう。
 数人いる王子たちの中でも彼の存在はとても浮いているというのも私自身聞いたことがあった。
 
 
 
 
 
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたので公爵令嬢やめます〜私を見下した殿下と元婚約者が膝をつく頃、愛を囁くのは冷酷公爵でした〜

nacat
恋愛
婚約者に裏切られ、蔑まれ、全てを失った公爵令嬢リリアナ。 「あなたのような女、誰が愛すると?」そう言い放った王太子と元友人に嘲られても、彼女は涙を見せなかった。 だが、冷たく美しい隣国の公爵セドリックと出会った瞬間、運命は静かに動き出す。 冷酷と噂された男の腕のなかで、彼女は再び自分を取り戻していく。 そして――彼女を捨てた者たちは、彼女の眩い幸福の前に膝をつく。 「これは、ざまぁを通り越して愛された令嬢の物語。」

冤罪見せしめ婚約破棄現場から救ってくれたのはストーカー?の不動の王子様でした

荷居人(にいと)
恋愛
「貴様とは婚約破棄だ!」 この人が好きな訳じゃなかった。だから婚約が消えるのはまだいい。でも何故こんな人のたくさんいるパーティーで言われなきゃならないんだろう? 貴女の隣にいる見知らぬ女をいじめた?私の知らないことばかり告げる彼は私の話なんて全く信じず私を悪者扱いする。 これが通ってしまえば私のお先は真っ暗だろう。なのに、私はただそれを否定しかできない。それが真実とはいえ、否定するのは私だけだから誰にも信じてもらえないと涙を流しそうになったときだった。 「彼女はそんなことしていないが」 確信したかのような言葉で私の味方をしてくれたのは何事にも動じず表情ひとつ動かさない不動の王子と有名な第二王子。 何故貴方様が私を庇うのですか? それは彼の言葉で理解することになる。 荷居人の婚約破棄シリーズ第六弾!第五弾までは本編完結済み!第四弾番外編は生涯連載中ですが1話完結型です! 他とは違う個性的なのを求めて頑張っております! 表紙はざらめ様に描いていただきました!

能ある令嬢は馬脚を隠す

カギカッコ「」
恋愛
父親の再婚で継家族から酷い目に遭っていたアンジェリカは、前世魔法使いだった記憶、能力が覚醒する。その能力を使って密かに不遇から脱出して自由な人生をと画策するアンジェリカだが、王太子レイモンドに魔法能力がバレた。彼はアンジェリカの能力を買って妃にと言ってきて断れず婚約はしたが、王太子妃などとんでもない。そんなわけで自由になるためにアンジェリカ最大の企みが隠された結婚式当日、企みは計画通り行った……はずだった。王太子レイモンドの予想外の反応さえなければ。アンジェリカへの愛情を見せたレイモンドのために、結果として彼女の人生選択が変わった、そんな話。 因みにキャラの基本的な容姿のカラー設定はしておりません。黒髪でも金髪でも好きなイメージをお付け下さい。全六話。長さ的には中編です。

職業・聖女~稼ぐわよ!

satomi
恋愛
私は村人Aとして兄弟妹仲良く暮らしていく予定だったリリス。ある日、王都から神官がやってきて多分聖女探し。 私は聖女に認定されて、王都に連れて行かれそうになったんだけど、神官がコソコソと話しているのを耳にした。「兄弟妹なんぞ始末してしまえ!」と。 そんな人に力を使う予定はありません。 聞けば、無報酬での仕事。将来的に王妃になれるのだから。と。 ハァ?見たこともない相手との縁談なんてお断りよ!無報酬で働きまくるなんてもってのほか! このお話、お断りします!!

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

◆◆◆浪費家呼ばわりされた宮廷調香師ですが、私の香りを理解してくれる方と歩みます◆◆◆

ささい
恋愛
婚約者のジュリアンは、私の仕事を一度も認めてくれなかった。 「高価な香料ばかり使う浪費家」「誰にでも代わりが務まる仕事」――四年間、蔑まれ続けた。 でも、私の作る香りは王妃陛下や兵士たち、貧しい人々の心を癒してきた。 夜会で「香料の匂いが染みついた女」と罵られた時、私は決めた。 この場で婚約を解消しようと。    すると彼は修道院送り。一方、私は首席調香師に任命された。 そして、私の仕事を心から尊敬してくれる優しい薬師と出会う。 「俺、これからもあなたの仕事、一番近くで応援したいです」 私は今、自分の価値を理解してくれる人と、新しい道を歩み始める。   ざまあしっかり目に書きました。修道院行きです( ^^) _旦~~ ※小説家になろうにも投稿しております

婚約破棄で命拾いした令嬢のお話 ~本当に助かりましたわ~

華音 楓
恋愛
シャルロット・フォン・ヴァーチュレストは婚約披露宴当日、謂れのない咎により結婚破棄を通達された。 突如襲い来る隣国からの8万の侵略軍。 襲撃を受ける元婚約者の領地。 ヴァーチュレスト家もまた存亡の危機に!! そんな数奇な運命をたどる女性の物語。 いざ開幕!!

断罪された悪役令息は、悪役令嬢に拾われる

由香
恋愛
断罪された“悪役令息”と、“悪女”と呼ばれた令嬢。 滅びを背負った二人が出会うとき、運命は静かに書き換えられる。 ――これは、罪と誤解に満ちた世界で、真実と愛を選んだ者たちの物語。

処理中です...