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あれから2年ーー
無事シリウス殿下と結婚すると、そう待たずして子を2人も授かることが出来た。
ああ見えて彼もやはり男だったとだけ言っておこう。
仕事はまだ苦手意識があるようだが彼なりに私のことも手伝ってくれ、子育てにも積極的に参加してくれている。
むしろ使用人たちと世話の奪い合いをしているほどで、母親的には大助かりだ。
あまりに熱心なので子どもが好きなのかなと思っていたのだが、つい先日ーー
「早く大きくなって義父様とフィーと並んでいるところを見せてね。ああ、お揃いの服も用意しておかなくちゃ、青色の可愛い……」
執念を感じた。
数日後には……
「おしゃべり出来るようになったら父様と一緒にフィーと義父様の素晴らしさをお話ししようね」
ボソボソと愉しそうに話しかける姿に開きかけていた扉をソッと閉じたのは言うまでもない。
あの人……あそこまであれだったかしら?今まで色々我慢してきた反動なのか?
一人お茶をしながら夫は大丈夫かと考える。
「旦那様は本当にお2人のことが大好きですね」
隣りでお茶を淹れてくれているメアリーもやはり色々思うところがあるのかーー
「私たちも知らなかった奥様のことを教えて下さり、感謝ばかりですわ」
………と思ったが違った。
最早同志となりつつあるらしい使用人たちと夫に数秒悩み、まぁ仲が良いならいいかで落ち着いた。
悩むだけ無駄な気がしたため。
「どこかのバカと違って奥様を大切にして下さいますし。風の噂によるとあのバカ、最近あまりの貧しさに盗みをはたらいたとかで捕まったらしいですよ」
「へぇ~」
あれから一度も見ていない愚者は未だに変わっていないらしい。
今までの愚行に爵位返上、領地は慰謝料として私たちがいただいたので文字通り彼らには何も残っていなかった。
「身から出た錆ですね。自業自得です。自業自得ですけど……奥様はなぜあんなバカとずっと婚約していたのですか?」
いくらお父様の薦めだったは言え、あの男の本性を知った時こちらから婚約破棄を申し出ることは勿論出来た。
だがそれをしなかったのは……
「そうね……どうしても欲しいものがあったから、かしら」
「欲しいものですか?」
不思議そうに首を傾げるメアリーに微笑むと、お父様には内緒よと約束させる。
「あの領地にある鉱山でブルーダイヤが採れると聞いていたの」
「え?」
「お父様の瞳に似たとても美しいものでね、欲しいなぁって」
ふふっと笑う私に、メアリーが頬を引き攣らせている。
「で、ですが、そんなこと子爵たちが知れば残らず掘り起こされてしーー」
「そう、知っていれば。ね?親切な方がいてね。領主には正確に報告するため調査にはかなり時間がかかりそうと教えてくれた人がいたの。今もとても仲良くさせてもらっているわ」
「そ、そうですか」
あらあらメアリーったら顔色が悪いわよ?
確かにトーマスは婿養子ではあったが、彼らの両親がまともに領地経営が出来ていないのは知っていた。
ならば結婚後、彼らがこちらを頼ってくるのは目に見えている。
そこまでいけばあのバカ共相手に領地乗っ取りなど簡単なことだ。
代わりにやりますとでも言えば、喜んで譲渡してくれていたことだろう。
まぁ、結果は慰謝料としてぶん取ってやったが。
あのバカの存在など壁の飾り……いや、汚れと一緒だ。
お飾り妻ならぬ、お飾り夫。笑える。
「私だって一応は頑張ってはみたのよ?」
「ええ。分かっております」
お飾りにするとしても、少しでも役に立ってくれるならと好かれようと努力してみたが全て無駄だった。
あのバカはバカのままだったし、何を勘違いしたのか自分が次期侯爵だとばかりに威張り散らしていた。
「当初の予定とは変わってしまったけど、これで良かったと思うわ。欲しい物は手に入ったし、お父様のお側にいられて、こんな私でも愛してくれる夫と娘たちもいる。………幸せだわ」
「ーー私も幸せだよ」
誰より聞き覚えがあるその声に驚き振り向けば、今日も美しい微笑みを浮かべ歩いてくるお父様の姿があった。
「お父様っ」
「ふと庭を見たらとても美しい女性がお茶をしているのが見えてね。お邪魔しても構わないかな?」
「勿論ですわ」
私がお父様の誘いを断わることは一生ありませんわ。
「お父様、大好きです」
「私もだよ、愛しいソフィー」
今日も変わらず仲良し親子やってます。
無事シリウス殿下と結婚すると、そう待たずして子を2人も授かることが出来た。
ああ見えて彼もやはり男だったとだけ言っておこう。
仕事はまだ苦手意識があるようだが彼なりに私のことも手伝ってくれ、子育てにも積極的に参加してくれている。
むしろ使用人たちと世話の奪い合いをしているほどで、母親的には大助かりだ。
あまりに熱心なので子どもが好きなのかなと思っていたのだが、つい先日ーー
「早く大きくなって義父様とフィーと並んでいるところを見せてね。ああ、お揃いの服も用意しておかなくちゃ、青色の可愛い……」
執念を感じた。
数日後には……
「おしゃべり出来るようになったら父様と一緒にフィーと義父様の素晴らしさをお話ししようね」
ボソボソと愉しそうに話しかける姿に開きかけていた扉をソッと閉じたのは言うまでもない。
あの人……あそこまであれだったかしら?今まで色々我慢してきた反動なのか?
一人お茶をしながら夫は大丈夫かと考える。
「旦那様は本当にお2人のことが大好きですね」
隣りでお茶を淹れてくれているメアリーもやはり色々思うところがあるのかーー
「私たちも知らなかった奥様のことを教えて下さり、感謝ばかりですわ」
………と思ったが違った。
最早同志となりつつあるらしい使用人たちと夫に数秒悩み、まぁ仲が良いならいいかで落ち着いた。
悩むだけ無駄な気がしたため。
「どこかのバカと違って奥様を大切にして下さいますし。風の噂によるとあのバカ、最近あまりの貧しさに盗みをはたらいたとかで捕まったらしいですよ」
「へぇ~」
あれから一度も見ていない愚者は未だに変わっていないらしい。
今までの愚行に爵位返上、領地は慰謝料として私たちがいただいたので文字通り彼らには何も残っていなかった。
「身から出た錆ですね。自業自得です。自業自得ですけど……奥様はなぜあんなバカとずっと婚約していたのですか?」
いくらお父様の薦めだったは言え、あの男の本性を知った時こちらから婚約破棄を申し出ることは勿論出来た。
だがそれをしなかったのは……
「そうね……どうしても欲しいものがあったから、かしら」
「欲しいものですか?」
不思議そうに首を傾げるメアリーに微笑むと、お父様には内緒よと約束させる。
「あの領地にある鉱山でブルーダイヤが採れると聞いていたの」
「え?」
「お父様の瞳に似たとても美しいものでね、欲しいなぁって」
ふふっと笑う私に、メアリーが頬を引き攣らせている。
「で、ですが、そんなこと子爵たちが知れば残らず掘り起こされてしーー」
「そう、知っていれば。ね?親切な方がいてね。領主には正確に報告するため調査にはかなり時間がかかりそうと教えてくれた人がいたの。今もとても仲良くさせてもらっているわ」
「そ、そうですか」
あらあらメアリーったら顔色が悪いわよ?
確かにトーマスは婿養子ではあったが、彼らの両親がまともに領地経営が出来ていないのは知っていた。
ならば結婚後、彼らがこちらを頼ってくるのは目に見えている。
そこまでいけばあのバカ共相手に領地乗っ取りなど簡単なことだ。
代わりにやりますとでも言えば、喜んで譲渡してくれていたことだろう。
まぁ、結果は慰謝料としてぶん取ってやったが。
あのバカの存在など壁の飾り……いや、汚れと一緒だ。
お飾り妻ならぬ、お飾り夫。笑える。
「私だって一応は頑張ってはみたのよ?」
「ええ。分かっております」
お飾りにするとしても、少しでも役に立ってくれるならと好かれようと努力してみたが全て無駄だった。
あのバカはバカのままだったし、何を勘違いしたのか自分が次期侯爵だとばかりに威張り散らしていた。
「当初の予定とは変わってしまったけど、これで良かったと思うわ。欲しい物は手に入ったし、お父様のお側にいられて、こんな私でも愛してくれる夫と娘たちもいる。………幸せだわ」
「ーー私も幸せだよ」
誰より聞き覚えがあるその声に驚き振り向けば、今日も美しい微笑みを浮かべ歩いてくるお父様の姿があった。
「お父様っ」
「ふと庭を見たらとても美しい女性がお茶をしているのが見えてね。お邪魔しても構わないかな?」
「勿論ですわ」
私がお父様の誘いを断わることは一生ありませんわ。
「お父様、大好きです」
「私もだよ、愛しいソフィー」
今日も変わらず仲良し親子やってます。
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