冷遇された没落姫は、風に乗せて真実を詠う ─残り香の檻─
「お前の練る香など、埃と同じだ」
没落した名家の姫・瑠璃は、冷酷な夫・道隆に蔑まれ、極寒の離れに追いやられていた。夫の隣には、贅を尽くした香料を纏う愛人の明子。
しかし道隆は知らなかった。瑠璃が魂を削って練り上げた香は、焚く者の心根を映し出す「真実の鏡」であることを。
瑠璃が最後に残した香の種を、明子が盗み出し、手柄を偽って帝の前で焚き上げた瞬間。美しき夢は、獣の死臭が漂う地獄へと変貌する。
「この香りの主を探せ。これほど澄み切った魂が、この都に在るはずだ」
絶望の淵で放たれた一筋の香りに導かれ、孤独な東宮が泥の中に咲く白蓮を見つけ出す。
嘘と虚飾にまみれた貴族社会を、ひとりの調香師が浄化する、雅やかな逆転劇。
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