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「条件さえ飲んでいただけるのでしたら」
王族相手に条件を出そうなどと無礼だと思ったが、王様たちは怒ることなく聞いてくれる。
「その条件とは?」
「まず第一に私は侯爵家を出るつもりは御座いません」
つまりは私が王家に嫁ぐというのではなく、王子に婿として入ってほしいという。
これは最低条件だ。
お父様から離れるつもりはないという私の言葉に、しかし王妃様は怒ることなく頷いてくれる。
彼女は親友の娘と縁を繋ぎたいと思っているだけのようで、それが嫁か婿かはあまり重要視していないらしい。
「第二に私の仕事に対して口出しは御遠慮願います」
そう、私は貴族令嬢でありながら商会を経営している。
きっかけはお父様への贈り物のための小金稼ぎだったのだが、使用人たちの口車に乗り商会を立てることになってしまったのだ。
私はああいうのが欲しいとか、こんなの作りたいと提案していただけなのだが、転生様々である。
今ではそれなりに大きなもので売れ行きも上々である。
そのためそれを止めろという相手は受け入れられない。
王様は面白いとばかりに頷いている。
「そして最後に、お父様を尊敬して止まない私を受け入れてくれるような相手でなければ無理です」
「はははははっ、それが一番条件だろうに、なんと面白い娘であろうか」
とうとう堪えきれず声を上げて笑う王様に、王妃様も楽しそうに笑っていた。
「了解した。ならば、その条件さえ飲めれば我が息子たちの中の誰でも構わないか?」
ここが正念場。
笑う王様の目を真っ直ぐ見るとーー微笑む。
「いいえ。この条件を飲んでいただいた上でーー私は第三王子シリウス殿下をお相手に望みます」
「「っ!?」」
驚きに目を見開く2人を前に、私は隣りを見上げる。
「私からもよろしくお願い申し上げます。殿下ならばきっと娘を幸せにしてくれるかと」
「……………お主がそこまで申すとは」
あれほど王家との婚約を断ってきた父だ。
そこまで言うのは意外だったのだろう。
「本当の本当にシリウスで構わないの?親の私が言うのも何だけど、あの子これと言って何が出来るわけではないのだけれど……」
「いいえ。素晴らしい才能をお持ちです」
王妃様が心配するのも分かる。
彼は王族としての才はない。
頭は悪くないが、突飛して良いわけでもない。
王妃様に似たのか線も細く、騎士になるには体格的にも無理だろう。
何より本人が引っ込み思案であり、あまり人前を好む性格ではなかった。
性格的にも口が上手いとは言えず、貴族特有の裏の読み合いなど彼には難しいだろう。
だが………
「小娘が生意気なことを申しているのは重々承知しております。ですが、これが私の本心でありますればどうかご理解いただければと」
どうしても王家との縁が欲しいというわけではない。
ダメならダメで勿論構わないが、そちらがそれほど望むならこっちの希望も聞いてくれとも思う。
「………誰か、シリウスをここへ」
王妃様が静かにそう命じると、それほど待つことなく彼が会場に姿を現すのであった。
王族相手に条件を出そうなどと無礼だと思ったが、王様たちは怒ることなく聞いてくれる。
「その条件とは?」
「まず第一に私は侯爵家を出るつもりは御座いません」
つまりは私が王家に嫁ぐというのではなく、王子に婿として入ってほしいという。
これは最低条件だ。
お父様から離れるつもりはないという私の言葉に、しかし王妃様は怒ることなく頷いてくれる。
彼女は親友の娘と縁を繋ぎたいと思っているだけのようで、それが嫁か婿かはあまり重要視していないらしい。
「第二に私の仕事に対して口出しは御遠慮願います」
そう、私は貴族令嬢でありながら商会を経営している。
きっかけはお父様への贈り物のための小金稼ぎだったのだが、使用人たちの口車に乗り商会を立てることになってしまったのだ。
私はああいうのが欲しいとか、こんなの作りたいと提案していただけなのだが、転生様々である。
今ではそれなりに大きなもので売れ行きも上々である。
そのためそれを止めろという相手は受け入れられない。
王様は面白いとばかりに頷いている。
「そして最後に、お父様を尊敬して止まない私を受け入れてくれるような相手でなければ無理です」
「はははははっ、それが一番条件だろうに、なんと面白い娘であろうか」
とうとう堪えきれず声を上げて笑う王様に、王妃様も楽しそうに笑っていた。
「了解した。ならば、その条件さえ飲めれば我が息子たちの中の誰でも構わないか?」
ここが正念場。
笑う王様の目を真っ直ぐ見るとーー微笑む。
「いいえ。この条件を飲んでいただいた上でーー私は第三王子シリウス殿下をお相手に望みます」
「「っ!?」」
驚きに目を見開く2人を前に、私は隣りを見上げる。
「私からもよろしくお願い申し上げます。殿下ならばきっと娘を幸せにしてくれるかと」
「……………お主がそこまで申すとは」
あれほど王家との婚約を断ってきた父だ。
そこまで言うのは意外だったのだろう。
「本当の本当にシリウスで構わないの?親の私が言うのも何だけど、あの子これと言って何が出来るわけではないのだけれど……」
「いいえ。素晴らしい才能をお持ちです」
王妃様が心配するのも分かる。
彼は王族としての才はない。
頭は悪くないが、突飛して良いわけでもない。
王妃様に似たのか線も細く、騎士になるには体格的にも無理だろう。
何より本人が引っ込み思案であり、あまり人前を好む性格ではなかった。
性格的にも口が上手いとは言えず、貴族特有の裏の読み合いなど彼には難しいだろう。
だが………
「小娘が生意気なことを申しているのは重々承知しております。ですが、これが私の本心でありますればどうかご理解いただければと」
どうしても王家との縁が欲しいというわけではない。
ダメならダメで勿論構わないが、そちらがそれほど望むならこっちの希望も聞いてくれとも思う。
「………誰か、シリウスをここへ」
王妃様が静かにそう命じると、それほど待つことなく彼が会場に姿を現すのであった。
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URL of this novel:https://www.alphapolis.co.jp/novel/628331665/442748622
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