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運命のつがいと初恋 第2章
⑥
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さあ、リビングの片付けが終わったらのんびりタイムだ。歩きながらうーんと伸びをする。
「コーヒーでも飲む?」
「ああ」
リビングに戻って東園へブラックコーヒー、陽向にはカフェオレを淹れる。
東園家のコーヒーメーカーは優秀で実はカフェラテも出来るのだ。三浦に教えて貰った。
ダイニングテーブルに置きっぱなしになっていたタブレットを起動させながら東園はありがとうとカップを受け取った。
「まだ仕事?」
「いや、もう終わった」
正面に座った東園は終わったと言いつつタブレットを眺めている。本当に忙しいんだろうなと思う。
「陽向、……ちょっと気になっていることがあるんだが聞いてもいいかな」
「なに?」
タブレットを消しテーブルに置いた東園を見ながら陽向は首をかしげる。
なんだろう、改まって。
陽向は隠し事が得意じゃないし、寡黙でもない。陽向自身の事であれば、わざわざ聞く程の重要事項など残ってなさそうだけど。
「佐伯とは、いつ別れたんだ?」
「はい?」
思わず東園を見たままフリーズした。
カフェオレのカップを持っていなくて本当に良かったと思う。佐伯とは康平の事だよねと自問自答する。中学の同級生に康平以外に佐伯はいない。
「別れたって、付き合って別れたって事だよね? ああ、婚約者って噂があったからかな」
「噂? 婚約者じゃないのか? だって二人、仲が良かっただろ。運命の番同士だって聞いてた。運命の番なのに別れられるものなのかと思って」
「おおっと」
言うに事欠いて「運命の番」とは。
婚約者から派生した噂だろうけれど一人歩きにもほどがある。ある意味感心してほうっと息をついた。
「佐伯が結婚したと人づてに聞いたんだが相手が陽向じゃなかったからちょっと……驚いた」
「ええと、まず、いや、まずって言うか婚約者でもないし、そもそも付き合ってもないから別れてもないし、運命の番でもない、よ」
「それは本当なのか」
目の前の東園は眉根を寄せ、やけに深刻そうにしている。そんな東園の雰囲気に飲まれ陽向も神妙な顔つきで頷いた。
「婚約者とか、付き合ってるとかそんなのは事実じゃないから本当って言えるけど、運命の番ってのはちょっとよく分からないな。そもそもそんな事ってあるのかな。運命のつがいなんて、おとぎ話じゃない」
「運命の番はいるよ、出会えるかどうかが問題なだけで」
熱っぽく言う東園にふうんと陽向は頷いた。
立場のある人間ほど、こういう夢物語にはシビアなのかと思っていた。
はっきり言い切った熱っぽさが盲信的に感じられて、運命を夢見てるんだろうなと思う。東園ってそういうドラマチックな妄想をしなさそうなイメージだったけど。
「康平は自分で運命の番に出会ったって言ってたよ。僕は勘違いじゃないかなって思うけど」
「自分で分かるものだから、本当だろうな」
うらやましいよ、と呟いて東園は微笑んだ。
それがうらやましく感じるのはαだからかなと思う。Ωの自分にはちょっとそうは思えない。
「陽向は運命の番かもしれないと感じた人はいなかったか?」
「今までに? うん、いないね。割と小さい頃から薬を飲んでいるから鼻が悪くてさ。分からなかっただけかもしれないけど、ま、いても正直困るって言うか」
「いたら困る?」
「うーん、困る、っていうか、いても付き合ったりはしないし、結婚もしないから相手に悪いかなって」
「結婚願望がない?」
うんと陽向は頷く。
そっちは、と聞くと「俺はあるけど、ちょっと難しいかな」と手元のマグカップに目を落とした。
一緒に暮らしてみて、東園がとても家庭的なのは分かった。思っていた十倍はいいやつだけど、確かにちょっと難しそうと思う。
だって平日は運転手の送迎があり、ここだって十分な豪邸なのに実家は比べものにならないほど敷地が広いと三浦が口を滑らせた。
さほど興味がなかったので陽向は東園が、東園家が何をしているか聞いたことがなく、具体的に知らない。中学の噂話程度の理解しかない。
しかし一緒に暮らしているのでさすがに興味が出てきた。まだ聞いてないけど。
ただ知っている材料から想像しても、東園家は相当な資産家で、お相手が誰でもいいはずはないだろうと予想できる。
それに加えてαの東園から見た運命の番は必然的にΩ。
α至上主義と言われる上流階級では、愛人にするにはいいがΩが結婚相手、とはならないだろう。それでも運命のつがいと結婚したいなら、Ω側のクラスも高さを要求されそうだ。
とびきり良家のお嬢様、かつ運命のつがいであるΩ。
この二つを満たす人間を探しだすのは骨が折れそうだし、実際見つかっても結婚を許してもらえるのか。
いろいろ考え合わせると東園の言う、「ちょっと難しいかな」がぴったりだ。
「まっ、まだ二十代だし、そのうち見つかるよ」
「……もう見つかってはいるんだけど」
「え、そうなの」
陽向は目を見開いた。
康平に続いて東園も運命とやらがいるのかと思う。
これはいよいよ夢物語と笑ってられない、のかも。
フィクションだと思いこんでいたから驚いたが、よくよく考えると恋愛、結婚の予定のない陽向にはあまり関係ない気がする。
東園も探そうと思えば大変だが相手がいるなら後は周囲の理解だけだろう。
陽向は「頑張れ」とエールを送った。
「コーヒーでも飲む?」
「ああ」
リビングに戻って東園へブラックコーヒー、陽向にはカフェオレを淹れる。
東園家のコーヒーメーカーは優秀で実はカフェラテも出来るのだ。三浦に教えて貰った。
ダイニングテーブルに置きっぱなしになっていたタブレットを起動させながら東園はありがとうとカップを受け取った。
「まだ仕事?」
「いや、もう終わった」
正面に座った東園は終わったと言いつつタブレットを眺めている。本当に忙しいんだろうなと思う。
「陽向、……ちょっと気になっていることがあるんだが聞いてもいいかな」
「なに?」
タブレットを消しテーブルに置いた東園を見ながら陽向は首をかしげる。
なんだろう、改まって。
陽向は隠し事が得意じゃないし、寡黙でもない。陽向自身の事であれば、わざわざ聞く程の重要事項など残ってなさそうだけど。
「佐伯とは、いつ別れたんだ?」
「はい?」
思わず東園を見たままフリーズした。
カフェオレのカップを持っていなくて本当に良かったと思う。佐伯とは康平の事だよねと自問自答する。中学の同級生に康平以外に佐伯はいない。
「別れたって、付き合って別れたって事だよね? ああ、婚約者って噂があったからかな」
「噂? 婚約者じゃないのか? だって二人、仲が良かっただろ。運命の番同士だって聞いてた。運命の番なのに別れられるものなのかと思って」
「おおっと」
言うに事欠いて「運命の番」とは。
婚約者から派生した噂だろうけれど一人歩きにもほどがある。ある意味感心してほうっと息をついた。
「佐伯が結婚したと人づてに聞いたんだが相手が陽向じゃなかったからちょっと……驚いた」
「ええと、まず、いや、まずって言うか婚約者でもないし、そもそも付き合ってもないから別れてもないし、運命の番でもない、よ」
「それは本当なのか」
目の前の東園は眉根を寄せ、やけに深刻そうにしている。そんな東園の雰囲気に飲まれ陽向も神妙な顔つきで頷いた。
「婚約者とか、付き合ってるとかそんなのは事実じゃないから本当って言えるけど、運命の番ってのはちょっとよく分からないな。そもそもそんな事ってあるのかな。運命のつがいなんて、おとぎ話じゃない」
「運命の番はいるよ、出会えるかどうかが問題なだけで」
熱っぽく言う東園にふうんと陽向は頷いた。
立場のある人間ほど、こういう夢物語にはシビアなのかと思っていた。
はっきり言い切った熱っぽさが盲信的に感じられて、運命を夢見てるんだろうなと思う。東園ってそういうドラマチックな妄想をしなさそうなイメージだったけど。
「康平は自分で運命の番に出会ったって言ってたよ。僕は勘違いじゃないかなって思うけど」
「自分で分かるものだから、本当だろうな」
うらやましいよ、と呟いて東園は微笑んだ。
それがうらやましく感じるのはαだからかなと思う。Ωの自分にはちょっとそうは思えない。
「陽向は運命の番かもしれないと感じた人はいなかったか?」
「今までに? うん、いないね。割と小さい頃から薬を飲んでいるから鼻が悪くてさ。分からなかっただけかもしれないけど、ま、いても正直困るって言うか」
「いたら困る?」
「うーん、困る、っていうか、いても付き合ったりはしないし、結婚もしないから相手に悪いかなって」
「結婚願望がない?」
うんと陽向は頷く。
そっちは、と聞くと「俺はあるけど、ちょっと難しいかな」と手元のマグカップに目を落とした。
一緒に暮らしてみて、東園がとても家庭的なのは分かった。思っていた十倍はいいやつだけど、確かにちょっと難しそうと思う。
だって平日は運転手の送迎があり、ここだって十分な豪邸なのに実家は比べものにならないほど敷地が広いと三浦が口を滑らせた。
さほど興味がなかったので陽向は東園が、東園家が何をしているか聞いたことがなく、具体的に知らない。中学の噂話程度の理解しかない。
しかし一緒に暮らしているのでさすがに興味が出てきた。まだ聞いてないけど。
ただ知っている材料から想像しても、東園家は相当な資産家で、お相手が誰でもいいはずはないだろうと予想できる。
それに加えてαの東園から見た運命の番は必然的にΩ。
α至上主義と言われる上流階級では、愛人にするにはいいがΩが結婚相手、とはならないだろう。それでも運命のつがいと結婚したいなら、Ω側のクラスも高さを要求されそうだ。
とびきり良家のお嬢様、かつ運命のつがいであるΩ。
この二つを満たす人間を探しだすのは骨が折れそうだし、実際見つかっても結婚を許してもらえるのか。
いろいろ考え合わせると東園の言う、「ちょっと難しいかな」がぴったりだ。
「まっ、まだ二十代だし、そのうち見つかるよ」
「……もう見つかってはいるんだけど」
「え、そうなの」
陽向は目を見開いた。
康平に続いて東園も運命とやらがいるのかと思う。
これはいよいよ夢物語と笑ってられない、のかも。
フィクションだと思いこんでいたから驚いたが、よくよく考えると恋愛、結婚の予定のない陽向にはあまり関係ない気がする。
東園も探そうと思えば大変だが相手がいるなら後は周囲の理解だけだろう。
陽向は「頑張れ」とエールを送った。
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