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三章 一年目ふゆの月
26 ふゆの月19日、シルキーの勘違い①
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魔女の栄養ドリンクのおかげで風邪を引く心配はないものの、寒いものは寒い。
その日もイーヴィンは、ある程度畑仕事を済ませたら、さっさと家に引きこもってしまった。
「春になったら……!春になったら婿候補のイベント頑張るから……だから今は、見逃してっ」
寒さに弱いイーヴィンは、ふゆの月十四日の恋愛イベント『バレンタインデー』を既に見送っていた。
ゲームをプレイしていた時は『冬は恋愛イベントの宝庫!』と躍起になって婿候補たちの好感度アップに努めていたものだが、この有様である。
転生した今、イベントどころか顔を合わせたのはローナンだけという体たらく。畑仕事もあまりない今は絶好のチャンスなのに、イーヴィンは寒くて外出すらままならない。
うっかりしていたら、リアンの嫁候補とイーヴィンの婿候補が結婚してしまうのは分かっている。
でも、一年目のふゆの月の間引きこもったからと言って、全てのフラグが立ってはるの月に結婚、なんてことはないはずだ。頑張っても一組あるかないかだろう。
それに、リアンがいる。最低でも一人は彼と結婚するはずだから、余った人を狙えば良い。
自分の結婚相手だというのに、イーヴィンは非常に雑だった。
どうも彼女は、結婚相手を同居人としか認識していない節がある。結婚して子供が生まれる間に何があるかを、無意識に考えないようにしているのかもしれない。
前世は二十二歳だったことを考えると、ある程度の知識はありそうなものだ。オタクなら尚のこと、経験はなくても知らないわけがない。
現世の十六歳という年齢を考えても、全く知らないというわけではないだろう。
となれば、考えられるのは一つ。
やはり彼女は、自分の性別をよく分かっていないのだ。いや、意識していないと言うべきかもしれない。
意味不明なことを言いながら帰宅したイーヴィンに首を傾げながら、シルキーは甲斐甲斐しく室内履きを出し、脱いだコートを受け取る。
それを当たり前のように受け入れるイーヴィンは、妻というより夫のようだ。
今の二人を見たら、イーヴィンの母はこう言うに違いない。
『あなたたち、性別を取り替えたらどう?』
もういっそシルキーと結婚すれば良いと、そう言うかもしれない。
しかし、残念なことにファンタジーなこの世界であっても、人間と結婚する妖精はほぼいない。
とはいえ、ほぼ女性と言われているシルキーの男性版がここにいるので、この世界のほぼほど当てにならないものはないだろう。
果たして婿候補でもないシルキーが彼女の嫁ーーではなく婿になれるかは、結婚の祝福を贈る女神次第なのかもしれない。
朝一でシルキーが薪ストーブに火を入れてくれるおかげで、家はいつも快適だ。暑すぎず寒すぎず、絶妙なバランスが保たれている。
「はぁー……生き返る」
温泉に入ったおばあちゃんみたいな台詞を言いながら、イーヴィンはマグカップに口をつけた。その背にブランケットを掛けながら、シルキーはキャラメル色の頭に付いた雪を払う。
畑仕事を済ませて帰宅すると、心得たとばかりにシルキーは白い琺瑯のミルクパンで作っていたココアを注ぎ、手渡してくれる。それを飲みながら、ストーブの前に体育座りして暖をとるのは、彼女の日課になりつつあった。
イーヴィンの後ろに置かれたロッキングチェアに腰掛けたシルキーは、カゴにこんもりと入れた毛糸を取り出すと、慣れた手つきで編み始めた。
やっていることは田舎のおばあちゃんみたいだが、貴婦人のような彼がすると、お嬢様が刺繍をしているように見えてくるから不思議だ。
それをぼんやり眺めながら、イーヴィンはふぅとため息を吐いて、体を丸める。
その日もイーヴィンは、ある程度畑仕事を済ませたら、さっさと家に引きこもってしまった。
「春になったら……!春になったら婿候補のイベント頑張るから……だから今は、見逃してっ」
寒さに弱いイーヴィンは、ふゆの月十四日の恋愛イベント『バレンタインデー』を既に見送っていた。
ゲームをプレイしていた時は『冬は恋愛イベントの宝庫!』と躍起になって婿候補たちの好感度アップに努めていたものだが、この有様である。
転生した今、イベントどころか顔を合わせたのはローナンだけという体たらく。畑仕事もあまりない今は絶好のチャンスなのに、イーヴィンは寒くて外出すらままならない。
うっかりしていたら、リアンの嫁候補とイーヴィンの婿候補が結婚してしまうのは分かっている。
でも、一年目のふゆの月の間引きこもったからと言って、全てのフラグが立ってはるの月に結婚、なんてことはないはずだ。頑張っても一組あるかないかだろう。
それに、リアンがいる。最低でも一人は彼と結婚するはずだから、余った人を狙えば良い。
自分の結婚相手だというのに、イーヴィンは非常に雑だった。
どうも彼女は、結婚相手を同居人としか認識していない節がある。結婚して子供が生まれる間に何があるかを、無意識に考えないようにしているのかもしれない。
前世は二十二歳だったことを考えると、ある程度の知識はありそうなものだ。オタクなら尚のこと、経験はなくても知らないわけがない。
現世の十六歳という年齢を考えても、全く知らないというわけではないだろう。
となれば、考えられるのは一つ。
やはり彼女は、自分の性別をよく分かっていないのだ。いや、意識していないと言うべきかもしれない。
意味不明なことを言いながら帰宅したイーヴィンに首を傾げながら、シルキーは甲斐甲斐しく室内履きを出し、脱いだコートを受け取る。
それを当たり前のように受け入れるイーヴィンは、妻というより夫のようだ。
今の二人を見たら、イーヴィンの母はこう言うに違いない。
『あなたたち、性別を取り替えたらどう?』
もういっそシルキーと結婚すれば良いと、そう言うかもしれない。
しかし、残念なことにファンタジーなこの世界であっても、人間と結婚する妖精はほぼいない。
とはいえ、ほぼ女性と言われているシルキーの男性版がここにいるので、この世界のほぼほど当てにならないものはないだろう。
果たして婿候補でもないシルキーが彼女の嫁ーーではなく婿になれるかは、結婚の祝福を贈る女神次第なのかもしれない。
朝一でシルキーが薪ストーブに火を入れてくれるおかげで、家はいつも快適だ。暑すぎず寒すぎず、絶妙なバランスが保たれている。
「はぁー……生き返る」
温泉に入ったおばあちゃんみたいな台詞を言いながら、イーヴィンはマグカップに口をつけた。その背にブランケットを掛けながら、シルキーはキャラメル色の頭に付いた雪を払う。
畑仕事を済ませて帰宅すると、心得たとばかりにシルキーは白い琺瑯のミルクパンで作っていたココアを注ぎ、手渡してくれる。それを飲みながら、ストーブの前に体育座りして暖をとるのは、彼女の日課になりつつあった。
イーヴィンの後ろに置かれたロッキングチェアに腰掛けたシルキーは、カゴにこんもりと入れた毛糸を取り出すと、慣れた手つきで編み始めた。
やっていることは田舎のおばあちゃんみたいだが、貴婦人のような彼がすると、お嬢様が刺繍をしているように見えてくるから不思議だ。
それをぼんやり眺めながら、イーヴィンはふぅとため息を吐いて、体を丸める。
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