勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

文字の大きさ
141 / 398

おっさん、噂をされる

しおりを挟む
 
「くっくっく……
 随分な色男ぶりだな、ガリウス」
「ミスカリファ……」

 台風一過の後の案山子のように呆然としている俺に、意地の悪い笑みを浮かべ話し掛けてきたのは銀髪のダークエルフにしてボルテッカ商店の主ミスカリファだ。
 美貌を際立たせる華やかな民族衣装を身に纏って、スタイルの良さをこれでもかと周囲に見せつけている。あれはパーティに参加してる御婦人方が注ぐ羨望の眼差しを愉しんでるな、間違いなく。
 機嫌の好さそうな時の感じは師匠そっくりだ。
 優雅だけど獰猛な女豹――肉食獣系女子。
 上機嫌に俺の下へ来た彼女の隣にはどこかで見た事ある幼女を引き連れていた。
 ――はて? 何処で会ったのだろう。
 喉に小骨がつっかえた様な不快感。
 思い出せず煩悶してるとミスカリファが面白そうに口を開く。

「間近で見ても飽きないな、お前は。
 先程から遠くで様子を窺ってたが――大した百面相ぶりだ。
 まるで王都劇場の喜劇俳優のようだ。
 傍から見てる分には良い観劇だったぞ」
「――最初から見てたのか?
 ならば黙ってないで助け舟を出してくれても」
「嫌だね。
 極上のネタがそこにあるんだ。
 一番の特等席で楽しみたいのは当然だろう?」
「貴女という人は――」

 キシシ、と含み嗤うミスカリファ。
 さすが師匠の伯母だけあって顔は整ってるのに良い性格をしている。
 血筋の為せる業なんだろうな、きっと。これも因果か。
 っと声には出さずそんな事を考えていたら――
 ドスっ!
 パーティ参加者に視えない絶妙な角度で繰り出された肘が鳩尾に叩き込まれる。
 不意打ちなのでモロに入った。
 思わず脂汗を掻きながら悶絶してしまう。

「な、何を……?」
「今――不当に貶められた気がした」
「し、証拠なき推定の有罪は……冤罪の温床」
「残念ながら私が正義、私が裁判官だ」
「い、嫌過ぎる司法だ……」
 
 世の中に争いが尽きぬ訳だ。
 前傾姿勢になりながら堪えていると、ミスカリファの隣にいた幼女が頭を撫でてくる。痛がる俺の様子を見兼ねたのかな。優しい娘だ。
 豪奢な金髪に飾られたあどけない美貌――きっと将来は美人さんになるだろう。
 しかし俺は彼女の金髪に埋もれた耳がかなり長い事に気付いた。
 すると彼女は手を止め、俺の顔を見ながら口を開く。

「ガリウス――といったか。
 その節は世話になったな」
「その節?」
「やはり覚えておらぬか。
 汝とは一度、育て親の馬車で同行させてもらった。
 私を狙う者は多い。
 外敵除けの為に力を使い果たし――昏倒してしまっていた私の命を狙った死神、ペイルライダーを退けたのは汝だ。育て親共々感謝する」
「ああ!
 あの時の爺さんと一緒にずっと寝ていた幼女が君か。
 どっかで会ったとは思ったんだが――なるほどな。
 するともしかして――」
「そうだ。
 私が探していたハイエルフの姫君こそ、こちらの御方になる。
 畏れ多いぞ、しっかり敬え」
「いいのだ、ミスカリファ」
「しかしセレニティ様――」
「この者には命を救われた――ならば対等の仲でいたい。
 セレニティ・ウル・ミレニアムだ。
 一応ハイエルフの王族である。
 ミスカリファは煩く言うが――現在は贖罪中の身だ。
 気を遣わなくていい」
「そうか。
 見た目通りの歳じゃないんだな?」
「うむ」
「じゃあ、君が望むならならそうさせてもらう」
「ああ、その方が好ましい」
「だが――王族であることをこんな所でバラシていいのか?
 さっきも言っていたが、君を狙う者は多いのだろう?」
「それについては心配いらない。
 ミスカリファが良い魔導具を用意してくれた」

 セレニティはそう言うと髪を掻き上げる。
 エルフ特有の長い耳の付け根には、素人目に見ても業物と思しき細工の施された宝珠を誂えたイヤリングが煌めいていた。

「この魔導具の力で私が望む者以外にはただの人間にしか視えぬ。
 また会話についても周囲の認識も歪めて伝達させる」
「なるほど――ボルテッカ商店にも使われていた技術の応用だな」
「ほほう、一発で気付くか。
 さすが姪の弟子、鋭いな。
 お前の指摘通りだ。
 なのでお前とセレニティ様がこうして会話をしてても大きな問題はない」
「そっか。ならば良かった」
「あえて問題を上げるなら――
 周囲の者にはお前が幼女を熱心に口説いてるように視えるし聞こえるだけだ」
「問題大ありだろうが!
 こんな注目の集まる場でそんな事をしたら――」

 恐る恐る周囲を窺う俺。
 遠巻きに囲む人々の間からは「幼女趣味?」「まあ」「何と破廉恥な」とか噂をし合う声を、無駄に性能のいい耳が勝手に集音してくる。
 い、いかん!
 年頃の男としてその醜聞だけは絶対に認める訳にはいかない。

「積もる話もあるだろうが――俺も挨拶回りに行きたいのでね。
 この場はこれにて失礼!」

 なので無礼にならぬ程度に会話を切り上げ――慌てて退散する。
 不満そうなセレニティと歪んだ笑みを浮かべるミスカリファを後にしながら。
 確信犯だな、あいつは……おのれっ。
 俺は急下落を遂げようとする株価を元に戻す為、必死に奔走するのだった。
 


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

中年オジが異世界で第二の人生をクラフトしてみた

Mr.Six
ファンタジー
 仕事に疲れ、酒に溺れた主人公……。フラフラとした足取りで橋を進むと足を滑らしてしまい、川にそのままドボン。気が付くとそこは、ゲームのように広大な大地が広がる世界だった。  訳も分からなかったが、視界に現れたゲームのようなステータス画面、そして、クエストと書かれた文章……。 「夢かもしれないし、有給消化だとおもって、この世界を楽しむか!」  そう開き直り、この世界を探求することに――

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

処理中です...