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おっさん、推挙される
しおりを挟む「あらん。
災難だったわね、ガリウスちゃん。
会場にいる方々への弁解はもういいの?」
「ご苦労であった」
俺が幼女趣味(ロリコン)であるという誤解を解く為、必死に笑顔で挨拶回りをし終えた頃――壁に寄り掛かり一息をついてるとヴィヴィとブルネッロが労わるように声を掛けてきた。
パーティに参加してるだけあってさすがにいつもの冒険者装備ではない。
おそらく借り受けたであろう、シックなタキシードを着込んでいる。
「――結構似合ってるんだな、二人とも」
「あら、ありがと」
「うむ。褒められて悪い気はせん」
少しオネエなヴィヴィや厳ついブルネッロにそのセンスはどうなのかと思ったが……意外や意外、気負いのない自然体で着こなしていた。
S級ともなればこういった権力者の絡む公式行事に呼ばれる事も多い。
マナーが不得手です、常識は知りません。の脳筋バカでは務まらない故か。
そんな事をつらつらと考えてると不思議そうにヴィヴィが尋ねてきた。
「どうしたの、ガリウスちゃん?」
「あ、ああ。
すまない――少し惚けてた。弁解の件だったな。
勿論、会場の方々も分かってくれたよ。
まあ本気にしてた人がいないだけかもしれんが」
「もし本気だったら結構妬けちゃうわ。
けど――アタシはすぐ誤解だって気付いたからね。
ちゃんと周囲にもフォローしておいたわ」
「同感である」
「マジか。
それは凄い助かるな」
「飛ぶ鳥を落とす勢いの新鋭パーティ【気紛れ明星】ですもの。
些細な事をあげつらって面白がってるのよ、みんな。
ただ……気を付けなさい」
「え?」
「やっかみは災厄を招くわ。
妬み、嫉み、僻み。
どこでトラブルになるか分からない」
「世俗には面倒な輩が多いのでな。
吾輩も筋肉で解決できないものには弱い」
「S級の二人でもそうなのか」
「S級だからこそ、よ。
立場とかしがらみだとかに縛れたりして、ホント面倒になっていくの。
だからこそ――今の貴方達が眩しいし羨ましいわ。
気の向くまま好きな事に取り組んで表彰されるって最高じゃない!
借りもあったけど、貴方達を手伝いたいって本心から思ったのも確かよ。
残念ながら――今回はあまりお役に立てなかったけどね」
「申し訳ない」
「何を言ってるんだか。
二人が手伝ってくれなかったらこんな迅速にダンジョンを制覇出来なかった。
むしろ後手に回って無垢な人々に危害が及んだかもしれない。
そういった意味では真に表彰されるべきは――二人も同様だろう?」
「ん~やっぱりそうきたか。
さすがアタシの見込んだ男ね、ガリウスちゃん。
ほらね――ブルネッロ。
ちゃんと言った通りだったでしょう?」
「――うむ。
増長の余地はなく謙虚な対応。
ダンジョンでの活躍もしっかり見届けさせてもらった。
人格、能力共にこれなら問題あるまい」
「なら賛成ね」
「? 何の話だ」
「ああ――今回の功労を踏まえてね。
冒険者ギルドに貴方達を推挙しようと思ったのよ」
「推挙?」
「そっ――S級の」
「なっ!?」
「驚いた?」
「そりゃ驚くさ」
「ウフフ……素直ね。
そういえば――S級昇格への最低条件は知ってるかしら?」
「いや」
「それはね、現S級二人以上の推薦と災厄クラスダンジョンの討伐を二カ所。
勿論ギルドに対する奉納点も必要だけど……一番面倒なのはこの二つね。
この内、貴方達は一つをクリアした訳。
残る一つも――天空ダンジョン【降魔の塔】が先程S級ダンジョンに認定された以上、あと一つ。それを突破すれば晴れてS級の仲間入りよ」
「俺が……俺達がS級に!?」
伝説といってもいいEXランクを除く、冒険者の頂点S級ランク。
幼い頃に夢見た立場に自分達が肉薄している。その事実に驚きを隠せない。
「ほお~何やら面白い話をしておるのぅ」
「ふむ、興味深いな」
そんな俺達の会話に割って入ってきたのは、ハイドラントを護衛に従えたレイナとパーティの主催者の一人ノービス伯爵だ。
グラスを片手に上機嫌で話し掛けてくるレイナ。
いつもと変わらぬ姫巫女装束なのにこういった場所だと見栄えがいいな。
「ガリウスよ。
此度の功績、まことに大義であった。
この都市に住まう者として、いくら感謝を述べても足りぬ」
「いや、そんな大袈裟な。
俺達は頼まれた事を全うしただけだ」
「追加で褒美を取らそうと思うのじゃが――」
「? 既に報酬は頂いただろう。
さっきハイドラントから手続きが出来たと伺ったが」
俺達が今回の報酬を基にレイナにお願いしたもの。
それは魔導力を主軸にした風車だった。
精霊都市の優れた建築技術を以てすれば一週間もせずに風車が完成するらしい。
開拓村の根本的な労働力不足解消の為、風車が欲しいとはよく相談役のスコットとは話していた。
風車があれば小麦を挽けるようになるし24時間その動力を活用できる。
村の発展に益々役立つはずだ。
「ほらな、伯爵。
これだけの偉業を為して「依頼だから」と済ます。
そうして得た報酬は開拓村の発展の為に投資するときたものだ。
こやつはやはり変わり者よ」
「同意せざるを得ないな。
あまり商売上手ではない。
ただ――我欲に塗れた者より好ましいと思う」
「ならば例の件、話してみては?」
「ああ、確かに。
こやつなら間違いあるまい。
なあ、ガリウスよ――」
「何でしょうか、ノービス伯爵?」
「そこのS級達との会話は余も聞いていた。
S級昇格の為には災害クラスのダンジョン制覇が必要なのだろう?」
「ええ、そうみたいです」
「ならば挑んでみるか?
領主代行している余が本来納める領地に眠る魔境。
天空ダンジョンと対を為す、海深くに眠る海底ダンジョン――【静寂の祠】に」
「海底ダンジョン!?」
初めて聞くその響きに――
俺は本日何度目か分からぬ驚きの声を上げるのだった。
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