勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

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おっさん、指名される

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「――ほう。
 その様子だと初耳のようだな」

 驚きの声を上げた俺に対し、面白がるような声で誰何するノービス伯爵。
 俺も長い事冒険者稼業をしてきたが海底ダンジョンというものは初めて聞いた。
 霊峰イッツアルムナーの麓に眠る火山ダンジョン。
 大樹ユグドラシルの周囲に広がる森林ダンジョン。
 そしてこの精霊都市地下に広がる迷宮ダンジョン。
 各地方に各ダンジョンがあり、冒険のタネは尽きる事がない。
 ダンジョンにはトラップやモンスターなどの危険も待ち受けているが――
 反面、隠された財貨や討伐後のドロップアイテムなどで周囲に恵みを齎す存在でもある。
 何よりダンジョンが内包するモンスターが溢れ出す、【スタンピード】と呼ばれる未曾有の災害を防ぐ為にも、冒険者を定期的に突入させ間引か無くてはならない。
 ちなみに迷宮主が守るコアを砕かれたダンジョンにスタンピードは起きない。
 敵はリポップするも、以後は資源獲得の場、祝福迷宮と呼ばれ栄える様になる。
 S級と呼ばれる存在はそれだけの偉業を為し得てきたのだ。
 イタチごっこみたいに増え続けるダンジョンに対する――人々の希望として。

「ええ、まったく。
 僭越ながらどのような所か伺っても?」
「よかろう。
 海底ダンジョン【静寂の祠】は別名に龍の宮とも呼ばれておってな。
 世界を支える龍【ナーザドラゴン】の一柱が眠る場所。
 この地方における水のマナを司る神所でもある」
「そのような場所――
 冒険者風情が踏み込むのは畏れが多いのでは?」
「話は最後まで聞くが良い。
 確かにここは聖域であり禁足地だ。
 ダンジョンとはいえ龍に守られたここはスタンピードも起きない。
 何より海底に設けられたダンジョンへ向かう手段すらない。
 わざわざ人が赴く必要はないのだ、本来であればな。
 ただ――事情が変わった」
「事情?」
「うむ。
 何者かがこの海底ダンジョンにちょっかいを出し始めたらしい。
 おそらくはこの精霊都市同様――暗躍する魔神共か。
 沖合に建てられた神殿におるレイナ殿と同じ姫巫女に龍の神託が下ったのだ。
 選ばられし者を事態解決の為に派遣せよ、と。
 特例として余と姫巫女が認めた者達なら探索しても良いらしい」
「その龍自身が魔神共を追い払えないのですか?」
「姫巫女も同様に尋ねたが難しいらしい。
 偉大な力を持つ【ナーザドラゴン】だが力の制御はそれ故に慎重になる。
 例えばガリウス、お前の家に猛毒を持つ蚤が侵入してきたとして家ごと焼き尽くすか? まずは何とか退治できないかと思案せぬか?」
「ああ、なるほど」
「そういう事だ。
 なまじ強大な力を持つが故に世界を支えし龍とて手出しが出せぬ。
 だからこそ我々に神託を寄こしたのだ。
 現在探索に赴いているのは余の信頼するA級、S級合わせて二組のパーティ。
 お前が望むなら新たな探索者として推挙しようではないか。
 無論、依頼料金は弾むし滞在中は余の別荘を使って構わん」
「有難い申し出です。
 ですが、まずは仲間に相談をしてみないと――」
「受けなよ、おっさん」
「ん。これは好機」
「絶好の機会を逃してはなりませんわ」
「お前達……」

 背後から掛けられた声に振り返ると、そこには綺麗に着飾った三人がいた。
 魔剣の勇者、シア。
 学院の賢者、リア。
 教団の聖女、フィー。
 美しくも聡明で強き俺の仲間達。

「ボク達の事なら――大丈夫だから。
 一緒に伯爵の依頼を受けようよ!」
「今回は後れを取った。
 しかし次はこうならない」
「二人の言う通りです。だからわたくし達の事は案じる事無く――
 ガリウス様の心の赴くまま、お返事をしていただけませんか?」

 いつから話を聞いていたのだろう。
 ただ俺の信頼――いや、愛する三人がそっと後押しをしてくれる。
 ここで応じねば男が廃るな。

「畏まりました。
 海底ダンジョン探索の依頼、受けたいと思います」
「うむ。
 期待しておるぞ」

 俺の返答に伯爵が了承をし、聞き耳を立てていた人々による会場がワッと湧く。
 周囲から次なる功績を求め讃える声援に応えながら俺は苦笑する。
 無責任に活躍を望む人々。
 それは時として俺達を支える力でありながら時に破滅を導く力でもある。
 歴史上それを味方にした者が英雄と呼ばれ、見誤った者が梟雄と呼ばれる。
 ならば奢ることなく慎重に己が道を見定めなくてはならないだろう。

「やはりこうなったか」
「レイナ」

 煩悶する俺の苦労を知ってか知らずか。
 そっと近づいたレイナが面白がるように話し掛けてくる。

「お主が望む望まないを意図せずとも、遂に運命は動き出した。
 因果な事だが、それこそお主の定めよ。
 努々忘れぬことだ」
「有難いんだか有難くないんだか」
「姫巫女の言葉などは本来そういうものよ。
 どちらにでも取れる様に曖昧にしておくのがコツじゃ。
 まあ妾風に言うなら、ちょーガンバって♪ だな」
「有難うよ、レイナ。
 暗い気持ちが吹っ飛んだわ」

 舌を出しおどけるレイナの笑顔に暗澹たる気持ちが晴れていく。
 何を迷ってるんだか。
 誰かの気持ちや打算を背負って戦えるほど俺は強くない。
 ならばその都度その都度を必死に潜り抜けるだけだ。
 大切な仲間達と共に。

「アタシからも一ついいかしら?」
「ヴィヴィ」
「何だか焚きつけた様で申し訳ないわ」
「そんな事ない。
 魔神撃滅は俺の悲願、遅かれ早かれこうなっていたよ」
「ならばいいけど……無茶はしないでね。
 ガリウスちゃんには大切な人達がいるんだから」
「勿論だ」
「ならいいわ。
 それとね、ガリウスちゃん。
 さっき盗賊ギルドの支部長からも話があったと思うけど――」
「え?」
「アタシの可愛い後輩ちゃんをよろしくね☆」

 爽やかに告げてウインクを飛ばすヴィヴィ。
 その射線上から素早く身を躱しながら俺はその意味を考える。
 おそらくマウザーが手配すると言っていたギルド員、盗賊系クラスの事か。
 あいつとヴィヴィが保証する以上、きっと腕前は確かなのだろう。
 だがまずは性格どころか性別を気にしなくてはならないな。
 三人とルゥにもどう説明したものか。
 前途多難が待ち受ける未来に……俺はそっと溜息を漏らすのだった。

 
 



      勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……
       実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた(第三部 完)

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