職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

チャビューヘ

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第1章 残酷な召喚

エピソード.2

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 広間に重い沈黙が落ちた。

 拓海は周囲を見回した。クラスメイトたちの顔から血の気が引いている。誰かがすすり泣く声が聞こえた。美咲の手が、拓海の袖をさらに強く掴んだ。

「嘘だろ……」

 高瀬が呟いた。さっきまでの勢いは消え、声が震えている。

「そんな……そんなのおかしいだろ!」

「おかしいかどうかは関係ない」

 ゼノスは冷たく言い放った。

「これが君たちの現実だ。受け入れるしかない」

「ふざけるな!」

 高瀬が叫んだ。

「俺たちは何も悪いことしてない! なんで、なんでこんな目に……!」

 彼の声が途中で途切れた。拓海は高瀬の拳が震えているのを見た。怒りではない。恐怖だ。

「文句を言っても状況は変わらない」

 ゼノスが手を一振りすると、空中に光の文字が浮かび上がった。

「君たちには一週間の猶予を与える。その間にパーティを編成し、ダンジョン攻略の準備をしろ」

「パーティ……」

 拓海が呟いた。

「そうだ。五名一組のパーティだ」

 ゼノスの視線が、クラスメイトたちを順に見ていく。

「三十二名なら、六つのパーティが作れる。残りの二名は……」

 彼は言葉を切った。

「単独でも挑戦できる」

「単独で……?」

 誰かが震える声で尋ねた。

「そうだ。もちろん、生存率は著しく下がるがな」

 ゼノスの言葉に、再び広間がざわついた。

「では、まず君たちに職業を付与する」

「職業……?」

「この世界で生きるための力だ」

 ゼノスが指を鳴らすと、広間の中央に巨大な水晶が出現した。透明な結晶が、内側から淡く光っている。

「一人ずつ、この水晶に触れろ。そうすれば、君たちに最適な職業が決定される」

「最適……って、どういう意味だ?」

 高瀬が警戒した声で尋ねた。

「君たちの資質、適性、潜在能力。それらを総合的に判断し、最も相応しい職業が与えられる」

 ゼノスは淡々と説明を続けた。

「戦士、魔法使い、僧侶、盗賊……様々な職業がある。中には特殊な職業もあるだろう」

「特殊……?」

「それは触れてみれば分かる」

 ゼノスが手を広げた。

「さあ、誰から始める?」

 誰も動かなかった。

 沈黙が続く。水晶だけが、静かに光を放っている。

「では、私が指名しよう」

 ゼノスの視線が、高瀬に向いた。

「君だ。前に出ろ」

「……ちっ」

 高瀬が舌打ちをして、水晶に向かって歩いた。彼の背中は緊張で強張っている。

 水晶の前で立ち止まり、ゆっくりと手を伸ばした。

 指先が水晶に触れた瞬間、眩い光が広間を満たした。

 拓海は思わず目を細めた。光の中に、文字が浮かび上がる。

「勇者」

 その二文字が、空中に輝いていた。

「勇者……だと?」

 高瀬が自分の手を見つめた。手のひらに、剣のマークが刻まれている。

「おお……!」

 クラスメイトの一人が声を上げた。

「高瀬、すげえじゃん!」

「勇者って、最強の職業だろ?」

 ざわめきが広がる。

 高瀬の表情が、徐々に明るくなっていく。恐怖が消え、自信が戻ってくる。

「そうか……俺は、勇者か」

 彼は拳を握りしめた。

「なら、やってやるよ。ダンジョンでも何でも、攻略してやる」

 ゼノスは無表情のまま頷いた。

「次」

 一人、また一人と、クラスメイトが水晶に触れていく。

「騎士」

 高瀬の親友、田中誠に与えられた職業だ。彼は安堵の表情を浮かべた。

「魔法使い」

 クラスの人気者、相沢麗奈だ。彼女は嬉しそうに微笑んだ。

「戦士」「僧侶」「盗賊」「弓使い」

 次々と戦闘系の職業が発表される。クラスメイトたちの表情が、徐々に明るくなっていく。恐怖が薄れ、希望が芽生え始めている。

 拓海は冷静に観察していた。全員が戦闘系の職業を得られるわけではない。確率的に考えて、外れを引く者も出るはずだ。

「次、君だ」

 ゼノスの視線が、拓海に向いた。

 美咲の手が、袖から離れた。

「頑張って……」

 彼女の小さな声が聞こえた。

 拓海は立ち上がり、水晶に向かって歩いた。クラスメイトたちの視線が、背中に突き刺さる。

 水晶の前で立ち止まる。透明な結晶が、目の前で静かに輝いている。

 深呼吸をして、手を伸ばした。

 指先が水晶に触れる。

 光が……弱い。

 さっきまでの眩い輝きとは違う。鈍い、灰色がかった光が、水晶から漏れ出る。

 嫌な予感がした。

 そして、文字が浮かび上がった。

「情報分析官」

 その五文字を見た瞬間、拓海の心臓が跳ねた。

 広間がざわついた。

「情報……分析官……?」

「何だそれ?」

「戦える職業なのか?」

 クラスメイトたちのひそひそ声が聞こえる。

 ゼノスが興味深そうに拓海を見た。

「ほう、珍しい職業だな」

 彼は水晶から情報を読み取るように、目を細めた。

「傾向を調査し、戦略を立てる職だ。戦闘能力は……ほぼゼロだな」

 その言葉に、広間の空気が変わった。

「戦えない……?」

「マジかよ……」

「うわ、外れじゃん」

 心ない声が聞こえる。拓海は表情を変えずに、水晶から手を離した。

「次」

 ゼノスの冷たい声が響いた。

 拓海は元の場所に戻った。美咲が心配そうに見上げてくる。

「拓海くん……」

「大丈夫だ」

 拓海は平静を装って答えた。しかし内心では、焦りが広がり始めていた。

 戦闘能力ゼロ。つまり、戦えない。

 この世界で、戦えない者がどうなるか。

 想像したくなかった。
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