職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

チャビューヘ

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第1章 残酷な召喚

エピソード.1

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 黒板に書かれた数式が、まるで暗号のように見えた。

 蒼井拓海は窓の外を眺めながら、教師の声を聞き流していた。いつもと変わらない午後の授業。隣の席では幼馴染の白石美咲が真面目にノートを取っている。彼女の几帳面な文字が、ページを埋めていく音だけが耳に残る。

「……というわけで、この公式を使えば……」

 教師の声が、突然途切れた。

 拓海が顔を上げると、教室全体が淡い光に包まれ始めていた。蛍光灯の光とは違う、温かくも冷たくもない、不思議な輝き。

「え……?」

 美咲が声を上げた。彼女の手からシャーペンが落ち、床に転がる音が妙に大きく響いた。

 光が強くなる。視界が白く染まり、何も見えなくなる。足元が消え、浮遊感が全身を襲う。

 誰かの悲鳴。複数の叫び声。机や椅子が軋む音。

 そして、静寂。

-----

 目を開けると、そこは教室ではなかった。

 高い天井。石造りの壁。床には複雑な魔法陣が描かれている。拓海は立ち上がろうとして、自分が冷たい石の床に倒れていることに気づいた。

「拓海くん……!」

 美咲の声がすぐ近くから聞こえた。彼女も床に座り込んでいる。青白い顔で、震える手で拓海の袖を掴んだ。

「大丈夫か?」

 拓海は彼女の肩に手を置いた。震えが伝わってくる。

 周囲を見回すと、クラスメイト全員が同じように床に倒れたり、座り込んだりしていた。三十二名全員。誰一人欠けていない。

「何だよ、これ……」

 誰かが呟いた。

「夢……だよな?」

 別の声が震えていた。

 拓海は冷静に状況を観察した。石造りの広間。天井には見たことのない文字が刻まれている。壁に設置された松明が、揺らめく炎で空間を照らしている。空気は冷たく、どこか湿っぽい。

 これは現実だ。

 その確信が、背筋を冷たくした。

「ようこそ、転移者たちよ」

 低い声が響いた。

 全員の視線が一点に集中する。

 魔法陣の中央、祭壇のような場所に、一人の男が立っていた。黒いローブを纏い、銀髪を後ろで束ねている。年齢は三十代だろうか。鋭い眼光が、倒れているクラスメイトたちを見下ろしている。

「誰だ、お前……!」

 クラスのリーダー格、高瀬剛が立ち上がった。体格の良い彼は、運動部のキャプテンとして学校でも一目置かれている。その高瀬が、怒りを込めた声で男を睨みつけた。

「俺はゼノス」

 男は淡々と答えた。

「魔王軍第三師団、管理部門の責任者だ」

「魔王軍……?」

 高瀬の声が、わずかに震えた。

「冗談だろ……」

 誰かが笑おうとして、声が引きつった。

 拓海は男の表情を観察した。嘘をついている様子はない。むしろ、事務的な口調で淡々と事実を述べているように見える。

「君たちには、特別な使命を与える」

 ゼノスが手を広げた。背後の壁に、巨大な地図のようなものが浮かび上がる。

「この世界には、無数のダンジョンが存在する。君たちには、それらを攻略してもらう」

「攻略……?」

 拓海の隣で、美咲が小さく呟いた。

「そうだ。ダンジョンを攻略し、最深部に到達する。それが君たちの使命だ」

 ゼノスの言葉に、教室がざわついた。

「ふざけんな! 勝手に連れてきて、何様のつもりだ!」

 高瀬が一歩前に出た。

「元の場所に戻せ! 今すぐに!」

「戻ることは可能だ」

 ゼノスは表情を変えずに答えた。

「ただし、条件がある」

 彼の言葉に、全員が息を呑んだ。

「ダンジョンを攻略した者たちの中から、一つのパーティ……つまり五名だけが、元の世界に帰還できる」

「五名……だけ……?」

 美咲の声が震えた。

 拓海は素早く計算した。三十二名のクラス。五名が帰還できる。残りは二十七名。

「他の者は……?」

 誰かが震える声で尋ねた。

「この世界に残る」

 ゼノスは冷たく言い放った。

「生きるも死ぬも、君たち次第だ」

 静寂が広間を支配した。
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