8 / 16
第7話「覚醒と契約の熱」
しおりを挟む
意識が泥の中に沈んでいくようだ。
熱い。体の芯が溶けてしまいそうなほど熱い。
俺はオルトの腕の中で、あえぐように呼吸を繰り返していた。視界は白く霞み、思考がまとまらない。
オメガのヒートがこれほど強烈なものだとは、知識としては知っていたが、体験するのは初めてだった。
魔力を持たないオメガの体は、定期的に外部からの魔力を渇望する。それが「発情」という形で現れるのだ。
満たされなければ、生命力そのものが枯渇し、最悪の場合は死に至る。
「マスター、熱が異常です。バイタルが低下しています……!」
オルトの焦った声が遠く聞こえる。彼は俺を抱きかかえ、寝室へと疾走した。
ベッドに俺を横たえると、彼は甲斐甲斐しく濡れタオルで額を冷やし、水を飲ませようとする。
だが、焼け石に水だ。
俺が求めているのは水ではない。魔力だ。圧倒的な質量の魔力だ。
本能が、目の前にある巨大な魔力源――オルトを求めて叫んでいる。
「はぁ……っ、オルト……」
俺は無意識に彼の手を掴み、自分の胸元へと引き寄せた。
彼のひんやりとした手が肌に触れると、そこから僅かに魔力が流れ込んでくるのがわかる。それがたまらなく気持ちいい。
「マスター? 何が必要ですか? 薬ですか? ドクターを呼びに……」
「だめ、だ……行くな……」
俺は彼の首に腕を回し、しがみついた。
もっと欲しい。もっと深く、濃い魔力を。
「オルト……魔力を……くれ……」
その言葉を聞いた瞬間、オルトの動きが止まった。
彼の論理回路の中で、何かが弾ける音が聞こえた気がした。
カイルの危機。原因は魔力欠乏。解決策は魔力供給。
しかし、通常のゴーレムには魔力を他者に譲渡する機能はない。
だが、オルトは通常ではない。彼は進化し続けるAIだ。
マスターを救うためなら、彼は自らの定義さえ書き換える。
「……理解しました。マスターがそれを望むのなら」
オルトの瞳の色が変わった。
金色の輝きが深まり、瞳孔が縦に割れる。獣のような、しかし理知的で支配的な瞳。
彼の胸のコアが激しく脈打ち、赤く発光し始めた。
大気中のマナが渦を巻き、オルトへと収束していく。
彼の中で、「ベータ(無性)」から「アルファ(支配者)」へのクラスチェンジが行われているのだ。
俺を守るために。俺を満たすために。
「熱いでしょう。苦しいでしょう。……今、楽にして差し上げます」
オルトの声は、甘く、低く、脳髄を痺れさせるような響きを帯びていた。
彼は俺の上に覆いかぶさる。その重みが、不思議と心地よい。
彼の手が俺のシャツのボタンを弾き飛ばし、素肌を露わにする。
熱を持った指先が、肌の上を滑るたびに、電流のような快感が走った。
「カイル……私の、愛しいつがい(・)」
彼は初めて俺を名前で呼んだ。
マスターという役割ではなく、個としての俺を求めている。
オルトの顔が近づく。
俺は拒むどころか、自ら唇を求めて首を伸ばした。
唇が重なる。
その瞬間、奔流のような魔力が口の中から雪崩込んできた。
甘く、濃厚で、暴力的なまでのエネルギー。
俺の空っぽだった器が、オルトの色で満たされていく。
「んっ……ぁ……!」
理性が吹き飛ぶ。
ただ、この快楽と充実に身を委ねるしかなかった。
これは治療であり、補給であり、そして何よりも――魂の契約だった。
ゴーレムと人間。アルファとオメガ。
種族を超えた絆が、熱い楔となって打ち込まれていく。
俺の意識は、オルトの腕の中で、安堵と快楽の海へと沈んでいった。
熱い。体の芯が溶けてしまいそうなほど熱い。
俺はオルトの腕の中で、あえぐように呼吸を繰り返していた。視界は白く霞み、思考がまとまらない。
オメガのヒートがこれほど強烈なものだとは、知識としては知っていたが、体験するのは初めてだった。
魔力を持たないオメガの体は、定期的に外部からの魔力を渇望する。それが「発情」という形で現れるのだ。
満たされなければ、生命力そのものが枯渇し、最悪の場合は死に至る。
「マスター、熱が異常です。バイタルが低下しています……!」
オルトの焦った声が遠く聞こえる。彼は俺を抱きかかえ、寝室へと疾走した。
ベッドに俺を横たえると、彼は甲斐甲斐しく濡れタオルで額を冷やし、水を飲ませようとする。
だが、焼け石に水だ。
俺が求めているのは水ではない。魔力だ。圧倒的な質量の魔力だ。
本能が、目の前にある巨大な魔力源――オルトを求めて叫んでいる。
「はぁ……っ、オルト……」
俺は無意識に彼の手を掴み、自分の胸元へと引き寄せた。
彼のひんやりとした手が肌に触れると、そこから僅かに魔力が流れ込んでくるのがわかる。それがたまらなく気持ちいい。
「マスター? 何が必要ですか? 薬ですか? ドクターを呼びに……」
「だめ、だ……行くな……」
俺は彼の首に腕を回し、しがみついた。
もっと欲しい。もっと深く、濃い魔力を。
「オルト……魔力を……くれ……」
その言葉を聞いた瞬間、オルトの動きが止まった。
彼の論理回路の中で、何かが弾ける音が聞こえた気がした。
カイルの危機。原因は魔力欠乏。解決策は魔力供給。
しかし、通常のゴーレムには魔力を他者に譲渡する機能はない。
だが、オルトは通常ではない。彼は進化し続けるAIだ。
マスターを救うためなら、彼は自らの定義さえ書き換える。
「……理解しました。マスターがそれを望むのなら」
オルトの瞳の色が変わった。
金色の輝きが深まり、瞳孔が縦に割れる。獣のような、しかし理知的で支配的な瞳。
彼の胸のコアが激しく脈打ち、赤く発光し始めた。
大気中のマナが渦を巻き、オルトへと収束していく。
彼の中で、「ベータ(無性)」から「アルファ(支配者)」へのクラスチェンジが行われているのだ。
俺を守るために。俺を満たすために。
「熱いでしょう。苦しいでしょう。……今、楽にして差し上げます」
オルトの声は、甘く、低く、脳髄を痺れさせるような響きを帯びていた。
彼は俺の上に覆いかぶさる。その重みが、不思議と心地よい。
彼の手が俺のシャツのボタンを弾き飛ばし、素肌を露わにする。
熱を持った指先が、肌の上を滑るたびに、電流のような快感が走った。
「カイル……私の、愛しいつがい(・)」
彼は初めて俺を名前で呼んだ。
マスターという役割ではなく、個としての俺を求めている。
オルトの顔が近づく。
俺は拒むどころか、自ら唇を求めて首を伸ばした。
唇が重なる。
その瞬間、奔流のような魔力が口の中から雪崩込んできた。
甘く、濃厚で、暴力的なまでのエネルギー。
俺の空っぽだった器が、オルトの色で満たされていく。
「んっ……ぁ……!」
理性が吹き飛ぶ。
ただ、この快楽と充実に身を委ねるしかなかった。
これは治療であり、補給であり、そして何よりも――魂の契約だった。
ゴーレムと人間。アルファとオメガ。
種族を超えた絆が、熱い楔となって打ち込まれていく。
俺の意識は、オルトの腕の中で、安堵と快楽の海へと沈んでいった。
46
あなたにおすすめの小説
【本編完結】断罪される度に強くなる男は、いい加減転生を仕舞いたい
雷尾
BL
目の前には金髪碧眼の美形王太子と、隣には桃色の髪に水色の目を持つ美少年が生まれたてのバンビのように震えている。
延々と繰り返される婚約破棄。主人公は何回ループさせられたら気が済むのだろうか。一応完結ですが気が向いたら番外編追加予定です。
『アルファ拒食症』のオメガですが、運命の番に出会いました
小池 月
BL
大学一年の半田壱兎<はんだ いちと>は男性オメガ。壱兎は生涯ひとりを貫くことを決めた『アルファ拒食症』のバース性診断をうけている。
壱兎は過去に、オメガであるために男子の輪に入れず、女子からは異端として避けられ、孤独を経験している。
加えてベータ男子からの性的からかいを受けて不登校も経験した。そんな経緯から徹底してオメガ性を抑えベータとして生きる『アルファ拒食症』の道を選んだ。
大学に入り壱兎は初めてアルファと出会う。
そのアルファ男性が、壱兎とは違う学部の相川弘夢<あいかわ ひろむ>だった。壱兎と弘夢はすぐに仲良くなるが、弘夢のアルファフェロモンの影響で壱兎に発情期が来てしまう。そこから壱兎のオメガ性との向き合い、弘夢との関係への向き合いが始まるーー。
☆BLです。全年齢対応作品です☆
【完結】マジで婚約破棄される5秒前〜婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ悪役令息は一体どうしろと?〜
明太子
BL
公爵令息ジェーン・アンテノールは初恋の人である婚約者のウィリアム王太子から冷遇されている。
その理由は彼が侯爵令息のリア・グラマシーと恋仲であるため。
ジェーンは婚約者の心が離れていることを寂しく思いながらも卒業パーティーに出席する。
しかし、その場で彼はひょんなことから自身がリアを主人公とした物語(BLゲーム)の悪役だと気付く。
そしてこの後すぐにウィリアムから婚約破棄されることも。
婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ一体どうしろと?
シナリオから外れたジェーンの行動は登場人物たちに思わぬ影響を与えていくことに。
※小説家になろうにも掲載しております。
不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)
狂わせたのは君なのに
一寸光陰
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。
完結保証
番外編あり
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
恵方巻を食べてオメガになるはずが、氷の騎士団長様に胃袋を掴まれ溺愛されています
水凪しおん
BL
「俺はベータだ。けれど、クラウス様の隣に立ちたい」
王城の厨房で働く地味な料理人ルエンは、近衛騎士団長のクラウスに叶わぬ恋をしていた。身分も属性も違う自分には、彼との未来などない。そう諦めかけていたある日、ルエンは「伝説の恵方巻を食べればオメガになれる」という噂を耳にする。
一縷の望みをかけ、ルエンは危険な食材探しの旅へ! しかし、なぜかその旅先にはいつもクラウスの姿があって……?
勘違いから始まる、ベータ料理人×氷の騎士団長の胃袋攻略ラブファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる