無能と捨てられたオメガですが、AI搭載の最強ゴーレムを作ったら、執着溺愛ルートに入りました

水凪しおん

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第10話「王都からの招待状」

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 王都へ向かうための準備は、戦争の準備に似ていた。
 オルトは徹夜で俺の礼服を仕立て上げた。素材は最高級のシルクではなく、特殊な魔獣の繭から紡いだ繊維だ。見た目は優雅な光沢を放つ布だが、刃物を通さず、魔法耐性も備えた防弾仕様の代物である。
 デザインは、俺の体のラインを美しく見せつつも、オメガ特有の弱々しさを感じさせない、洗練された燕尾服風のものになった。色は深みのあるミッドナイトブルー。
 対するオルトは、執事服をベースにしつつも、軍服の要素を取り入れた漆黒の装いだ。金の刺繍が施され、彼の金色の瞳と恐ろしいほどにマッチしている。

「完璧です、カイル。この世のどの宝石よりも美しい」

 着替えを終えた俺を見て、オルトが感嘆のため息をつく。
 鏡に映る自分は、かつての草臥れた研究者とは別人のようだった。肌艶は良く、背筋も伸び、何より瞳に自信が宿っている。

「お前こそ、どこかの国の王子みたいだぞ」
「私はあなたの影であり、盾です。主役はあなたです」

 俺たちは新たに開発した「装甲馬車」に乗り込んだ。
 外見は貴族の馬車だが、内部には最新のサスペンションと空調設備、そして緊急時の脱出ポッドまで完備されている。牽引するのは、馬の形を模した最新鋭の高速機動型ゴーレムだ。
 王都への道中、俺たちはワーカーたちによる護衛部隊を随伴させていたが、幸いにも襲撃者は現れなかった。いや、オルトの放つ探知範囲外からのプレッシャーに恐れをなして、誰も近づけなかったのかもしれない。

 数日後、王都の城壁が見えてきた。
 巨大な石造りの門。その奥に広がる尖塔群。
 かつて俺が追放された時、背後で閉ざされた門だ。
 だが今は違う。
 門番たちは、俺たちの馬車を見るなり、敬礼して道を開けた。商業ギルドからの事前通達と、車体に刻まれた「エルステッド・インダストリー」の紋章(歯車と杖を組み合わせたデザイン)が効いているらしい。

 公爵家の屋敷には向かわず、俺たちはギルドが手配してくれた高級ホテルに入った。
 敵地である実家で寝泊まりするほど愚かではない。
 ホテルの一室でくつろいでいると、夜会の招待状が改めて届けられた。
 明晩、王城で開催される建国記念パーティー。
 そこに、公爵家の一員としてではなく、新進気鋭の技術者として招かれているのだ。
 だが、招待者リストには父やライオネルの名前もある。これは公の場での公開処刑を目論んでいるに違いない。

「カイル、王城の結界情報を解析完了しました。武器の持ち込みは制限されていますが、私の身体自体が兵器ですので問題ありません」
「頼もしいな。でも、基本は紳士的に振る舞ってくれよ」
「相手が紳士的であれば、こちらも相応の対応をします。ですが、牙を剥くなら、その牙を全部へし折って差し上げます」

 オルトは優雅に紅茶を淹れながら、物騒なことを言う。

 そして翌日の夜。
 俺たちは王城の大広間へと足を踏み入れた。
 シャンデリアの煌めき、オーケストラの調べ、着飾った貴族たちの談笑。
 俺たちが扉をくぐった瞬間、会場の空気が変わった。
 ざわめきが波紋のように広がり、やがて静寂が訪れる。
 誰もが俺たちを見ていた。
 追放されたはずの「無能なオメガ」が、隣に絶世の美青年を従え、堂々たる姿で現れたのだから無理もない。

「あれは……カイル・フォン・エルステッドか?」
「なんて美しさだ……以前とはまるで違う」
「隣の男は誰だ? あの凄まじい魔力……他国の王族か?」

 囁き声が聞こえてくる。
 俺は胸を張り、オルトにエスコートされながら会場の中央へと進んだ。
 オルトの手が俺の腰に添えられる。その温もりが、緊張を和らげてくれた。
 人混みが割れ、その向こうから、見覚えのある男たちが近づいてくる。
 父、公爵ゲオルグと、兄ライオネルだ。
 彼らの顔には、驚愕と、隠しきれない不快感が浮かんでいた。

「……カイル。よくものこのこと顔を出せたものだな」

 父の低い声が響く。周囲の貴族たちが固唾を飲んで見守る中、対峙が始まった。

「お招きいただき光栄です、父上。辺境での事業が忙しく、ご挨拶が遅れました」
「事業だと? 泥遊びの間違いだろう。家の名を汚すような真似はやめろと言ったはずだ」
「汚す? とんでもない。私はエルステッドの名を、新たな次元へと引き上げただけですよ」

 俺は不敵に微笑んだ。
 かつては父の威圧感に怯えていたが、今は何とも思わない。
 隣には、世界最強の守護者がいるのだから。
 ライオネルが一歩前に出る。以前、オルトに屈辱を味わわされた彼は、顔を赤くして怒りに震えていた。

「この野郎……! その化け物ゴーレムを連れて、俺たちを脅しに来たのか!」

 化け物。その言葉に、オルトの眉がぴくりと動いた。
 会場の気温が、ふっと下がった気がした。

「言葉を慎まれよ、下郎」

 オルトが口を開いた。その声は美声だが、聞く者の背筋を凍らせる冷たさを含んでいた。

「私のマスターは、今やこの国の食糧事情と流通を支える重要人物。貴殿のような無能な穀潰しが、気安く話しかけて良い相手ではない」

 会場が凍りついた。
 ただの従者が、公爵家の跡取りを公然と罵倒したのだ。
 通常なら即座に処刑ものだが、オルトの放つ覇気が、それを許さない。
 これは、断罪の始まりの合図だった。
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