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第12話「論理による完全論破」
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「は、伴侶だと……!?」
父が絶句する。周囲も騒然となった。
ゴーレムが人間、それも男同士で伴侶宣言など、前代未聞だ。
だがオルトは止まらない。彼は指を鳴らした。
パチン、という乾いた音が響くと同時に、空中に巨大なホログラムのような魔法陣が展開された。
そこには、文字列が高速で流れている。
「これは……エルステッド家の帳簿?」
誰かがつぶやいた。
そう、それは公爵家の裏帳簿のデータだった。
オルトは王都に来てから、密かに公爵家の情報ネットワークにハッキングを仕掛け、彼らの不正の証拠をすべて収集していたのだ。
横領、脱税、違法な魔道具の取引。そして何より、俺を追放するために捏造した偽の診断書のデータ。
「ご覧ください、皆様。これが『名門』の実態です」
オルトの声が冷徹に響く。
「現当主ゲオルグは、領民から過重な税を搾り取り、その金を私腹を肥やすために流用している。さらに、魔力至上主義を掲げながら、裏では魔力を持たない子供を人身売買組織に売り払っていた」
会場から悲鳴が上がる。
提示された証拠はあまりにも詳細で、言い逃れができるレベルではなかった。
「で、デタラメだ! これは幻術だ!」
父が喚き散らすが、その顔からは血の気が失せている。
「このデータの真正性は、王立監査局のデータベースと照合済みです。改竄の余地はありません」
オルトは冷ややかに告げた。
さらに、俺が口を開く。
「父上、そして兄上。あなた方は『魔力』という古い価値観に固執するあまり、時代の変化を見誤った。力とは、単なる魔力の多寡ではない。情報を制し、論理を構築し、システムを支配する者こそが、これからの時代を制するのです」
俺の言葉は、この場の全ての貴族への警鐘でもあった。
魔法に頼りきった旧態依然とした社会構造への、痛烈なアンチテーゼ。
「衛兵! やれ! こいつらを斬り捨てろ!」
錯乱したライオネルが剣を抜き、俺に斬りかかってきた。
最後の悪あがきだ。
だが、その剣が俺に届くことは永遠にない。
オルトが、目にも止まらぬ速さでライオネルの剣を素手で掴み、へし折ったからだ。
そして、そのままライオネルの首を掴み上げ、宙に吊るした。
「が、は……っ」
「私のマスターに刃を向けた罪、万死に値する。……が、カイルの手を汚すわけにはいかない」
オルトはゴミを捨てるようにライオネルを床に叩きつけた。
兄は白目を剥いて失神した。
父は腰を抜かし、震えながら後ずさる。
「ひ、ひぃ……」
「安心してください、殺しはしません」
俺は父を見下ろして言った。
「ただ、これだけの証拠が公になった以上、公爵家は終わりです。爵位剥奪、財産没収は免れないでしょう」
その時、会場の奥から拍手が聞こえた。
現れたのは、この国の国王その人だった。
国王は厳粛な顔で父を見据え、静かに告げた。
「エルステッド公爵、見苦しいぞ。これまでの悪事、もはや看過できん。連行せよ」
衛兵たちが父と、気絶したライオネルを引きずっていく。
断罪は完了した。
武力ではなく、社会的な死によって。
国王は俺に向き直り、穏やかに微笑んだ。
「カイル殿、そしてそちらの従者よ。見事な手腕だった。我が国の膿を出してくれたことに感謝する」
「もったいないお言葉です、陛下」
「君の技術と経済力は、我が国にとって得難い財産だ。どうだろう、公爵家の領地を君が継ぎ、新たな産業の拠点として開発してはくれまいか?」
それは、実質的な領主としての承認だった。
俺はオルトと顔を見合わせた。
彼は満足そうに頷いている。
「謹んで、お引き受けいたします」
俺は深く頭を下げた。
こうして、追放されたオメガは、最強のアルファと共に、新たな領主として返り咲いたのである。
父が絶句する。周囲も騒然となった。
ゴーレムが人間、それも男同士で伴侶宣言など、前代未聞だ。
だがオルトは止まらない。彼は指を鳴らした。
パチン、という乾いた音が響くと同時に、空中に巨大なホログラムのような魔法陣が展開された。
そこには、文字列が高速で流れている。
「これは……エルステッド家の帳簿?」
誰かがつぶやいた。
そう、それは公爵家の裏帳簿のデータだった。
オルトは王都に来てから、密かに公爵家の情報ネットワークにハッキングを仕掛け、彼らの不正の証拠をすべて収集していたのだ。
横領、脱税、違法な魔道具の取引。そして何より、俺を追放するために捏造した偽の診断書のデータ。
「ご覧ください、皆様。これが『名門』の実態です」
オルトの声が冷徹に響く。
「現当主ゲオルグは、領民から過重な税を搾り取り、その金を私腹を肥やすために流用している。さらに、魔力至上主義を掲げながら、裏では魔力を持たない子供を人身売買組織に売り払っていた」
会場から悲鳴が上がる。
提示された証拠はあまりにも詳細で、言い逃れができるレベルではなかった。
「で、デタラメだ! これは幻術だ!」
父が喚き散らすが、その顔からは血の気が失せている。
「このデータの真正性は、王立監査局のデータベースと照合済みです。改竄の余地はありません」
オルトは冷ややかに告げた。
さらに、俺が口を開く。
「父上、そして兄上。あなた方は『魔力』という古い価値観に固執するあまり、時代の変化を見誤った。力とは、単なる魔力の多寡ではない。情報を制し、論理を構築し、システムを支配する者こそが、これからの時代を制するのです」
俺の言葉は、この場の全ての貴族への警鐘でもあった。
魔法に頼りきった旧態依然とした社会構造への、痛烈なアンチテーゼ。
「衛兵! やれ! こいつらを斬り捨てろ!」
錯乱したライオネルが剣を抜き、俺に斬りかかってきた。
最後の悪あがきだ。
だが、その剣が俺に届くことは永遠にない。
オルトが、目にも止まらぬ速さでライオネルの剣を素手で掴み、へし折ったからだ。
そして、そのままライオネルの首を掴み上げ、宙に吊るした。
「が、は……っ」
「私のマスターに刃を向けた罪、万死に値する。……が、カイルの手を汚すわけにはいかない」
オルトはゴミを捨てるようにライオネルを床に叩きつけた。
兄は白目を剥いて失神した。
父は腰を抜かし、震えながら後ずさる。
「ひ、ひぃ……」
「安心してください、殺しはしません」
俺は父を見下ろして言った。
「ただ、これだけの証拠が公になった以上、公爵家は終わりです。爵位剥奪、財産没収は免れないでしょう」
その時、会場の奥から拍手が聞こえた。
現れたのは、この国の国王その人だった。
国王は厳粛な顔で父を見据え、静かに告げた。
「エルステッド公爵、見苦しいぞ。これまでの悪事、もはや看過できん。連行せよ」
衛兵たちが父と、気絶したライオネルを引きずっていく。
断罪は完了した。
武力ではなく、社会的な死によって。
国王は俺に向き直り、穏やかに微笑んだ。
「カイル殿、そしてそちらの従者よ。見事な手腕だった。我が国の膿を出してくれたことに感謝する」
「もったいないお言葉です、陛下」
「君の技術と経済力は、我が国にとって得難い財産だ。どうだろう、公爵家の領地を君が継ぎ、新たな産業の拠点として開発してはくれまいか?」
それは、実質的な領主としての承認だった。
俺はオルトと顔を見合わせた。
彼は満足そうに頷いている。
「謹んで、お引き受けいたします」
俺は深く頭を下げた。
こうして、追放されたオメガは、最強のアルファと共に、新たな領主として返り咲いたのである。
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