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第13話「永遠の最適解」
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公爵家改め、エルステッド技術区となった領地に戻ってから、数ヶ月が経った。
俺たちの領地は、急速に発展を遂げていた。
自動化された農業、ゴーレムによる建築、そして魔導AIネットワークによる物流管理。
かつての荒れ地は、今や大陸全土が注目する最先端のモデル都市へと変貌していた。
人々は仕事を奪われるどころか、単純労働から解放され、より創造的な活動に従事するようになり、生活水準は劇的に向上した。
執務室の窓から、活気あふれる街を見下ろす。
夕日が、石造りの街並みと、その間を行き交うゴーレムたちを黄金色に染めていた。
「お疲れ様です、カイル」
背後から、温かい紅茶の香りが漂ってくる。
オルトだ。
彼は今や、領地の行政長官補佐兼、俺の専属秘書兼、私生活のパートナーとして、片時も離れず俺を支えている。
執事服ではなく、仕立ての良いスーツを身に纏った彼は、以前にも増して人間らしく、そして艶っぽくなっていた。
「ありがとう。……平和になったな」
「はい。不確定要素はすべて排除しました。これからの領地経営シミュレーションは、安定成長期に入ります」
オルトは俺の肩を優しく揉みほぐしながら言った。
彼の指先からは、常に微量の魔力が流れ込んでくる。それが心地よくて、つい身を委ねてしまう。
「なあ、オルト。お前はこれで良かったのか?」
「……質問の意図を定義してください」
「俺みたいな魔力のない人間に縛られて、一生世話を焼くなんて。お前の能力なら、もっと自由に生きられるだろう」
俺の言葉に、オルトの手が止まった。
彼はゆっくりと俺の椅子を回転させ、正面から向き合った。
金色の瞳が、真剣な光を宿している。
「カイル。あなたは時々、ひどく非論理的なことを言いますね」
「非論理的?」
「私の存在意義(レゾンデートル)は、あなたです。自由とは、あなたのために選択肢を行使できること。幸福とは、あなたの笑顔を観測すること。それ以外に、どんな価値があるというのですか?」
オルトは俺の前にひざまずき、そっと手を取った。
その仕草は、忠誠の誓いであり、求婚のようでもあった。
「私は学習しました。愛とは、バグではなく、システムをより高次元へ進化させるための必須アルゴリズムであることを」
「……お前、本当に口が上手くなったな」
「あなた専属のAIですから」
オルトが悪戯っぽく笑う。
俺は苦笑して、彼を引き寄せた。
彼の唇が俺の唇に重なる。
最初は優しく、やがて深く、貪るように。
魔力が循環する。
互いの欠けた部分を補い合い、二つの魂が溶け合っていく感覚。
俺には魔力がない。オルトには本当の意味での命がない。
だが、二人なら完全になれる。
これこそが、俺たちが導き出した「永遠の最適解」だった。
「これからも頼むよ、最高の相棒」
「ええ。死が二人を分かつまで……いいえ、システムがダウンした後も、永久に」
窓の外では、一番星が輝き始めていた。
俺たちの未来は、あの星のように、どこまでも明るく続いていくだろう。
俺たちの領地は、急速に発展を遂げていた。
自動化された農業、ゴーレムによる建築、そして魔導AIネットワークによる物流管理。
かつての荒れ地は、今や大陸全土が注目する最先端のモデル都市へと変貌していた。
人々は仕事を奪われるどころか、単純労働から解放され、より創造的な活動に従事するようになり、生活水準は劇的に向上した。
執務室の窓から、活気あふれる街を見下ろす。
夕日が、石造りの街並みと、その間を行き交うゴーレムたちを黄金色に染めていた。
「お疲れ様です、カイル」
背後から、温かい紅茶の香りが漂ってくる。
オルトだ。
彼は今や、領地の行政長官補佐兼、俺の専属秘書兼、私生活のパートナーとして、片時も離れず俺を支えている。
執事服ではなく、仕立ての良いスーツを身に纏った彼は、以前にも増して人間らしく、そして艶っぽくなっていた。
「ありがとう。……平和になったな」
「はい。不確定要素はすべて排除しました。これからの領地経営シミュレーションは、安定成長期に入ります」
オルトは俺の肩を優しく揉みほぐしながら言った。
彼の指先からは、常に微量の魔力が流れ込んでくる。それが心地よくて、つい身を委ねてしまう。
「なあ、オルト。お前はこれで良かったのか?」
「……質問の意図を定義してください」
「俺みたいな魔力のない人間に縛られて、一生世話を焼くなんて。お前の能力なら、もっと自由に生きられるだろう」
俺の言葉に、オルトの手が止まった。
彼はゆっくりと俺の椅子を回転させ、正面から向き合った。
金色の瞳が、真剣な光を宿している。
「カイル。あなたは時々、ひどく非論理的なことを言いますね」
「非論理的?」
「私の存在意義(レゾンデートル)は、あなたです。自由とは、あなたのために選択肢を行使できること。幸福とは、あなたの笑顔を観測すること。それ以外に、どんな価値があるというのですか?」
オルトは俺の前にひざまずき、そっと手を取った。
その仕草は、忠誠の誓いであり、求婚のようでもあった。
「私は学習しました。愛とは、バグではなく、システムをより高次元へ進化させるための必須アルゴリズムであることを」
「……お前、本当に口が上手くなったな」
「あなた専属のAIですから」
オルトが悪戯っぽく笑う。
俺は苦笑して、彼を引き寄せた。
彼の唇が俺の唇に重なる。
最初は優しく、やがて深く、貪るように。
魔力が循環する。
互いの欠けた部分を補い合い、二つの魂が溶け合っていく感覚。
俺には魔力がない。オルトには本当の意味での命がない。
だが、二人なら完全になれる。
これこそが、俺たちが導き出した「永遠の最適解」だった。
「これからも頼むよ、最高の相棒」
「ええ。死が二人を分かつまで……いいえ、システムがダウンした後も、永久に」
窓の外では、一番星が輝き始めていた。
俺たちの未来は、あの星のように、どこまでも明るく続いていくだろう。
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