追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました

水凪しおん

文字の大きさ
16 / 24

第15話「聖女の焦り」

しおりを挟む
 二つ目の遺物である羅針盤がカイルの手に渡った瞬間、王国の聖女リリアンナは、自室で激しい目眩に襲われていた。

「……うっ……また、力が……!」

 彼女の力の源である呪具は、魔王レイルの呪いから漏れ出す魔力を利用している。その呪いが二つの遺物によって弱められたことで、呪具の力が著しく低下し、それに伴ってリリアンナの「聖女の力」も失われつつあったのだ。

 もはや、軽い傷を癒すことすらままならない。奇跡を求める民衆の声に応えられず、彼女への不信感は日増しに高まっていた。

「いったい、魔の森で何が起きているの……!? あの追放者、まさか本当に……!」

 リリアンナの美しい顔が、焦りと憎悪で歪む。このままでは、自分が偽りの聖女であることが露見してしまう。それは、彼女のプライドが絶対に許さなかった。

「こうなったら……」

 リリアンナは決意を固め、秘密の通路を通って城の地下深くへと向かった。そこには、彼女と宰相だけが知る、禁忌の研究室があった。

 研究室の中央には、黒く禍々しいオーラを放つ祭壇が鎮座しており、その上に鎮座するのが、彼女の力の源である呪具――『簒奪の聖杯』だった。

「リリアンナ様、お待ちしておりました」

 祭壇の傍には、腹心の部下である宰相が待っていた。

「宰相、もう待てませんわ。あの男がこれ以上何かをする前に、全てを終わらせるのです」

「しかし、まだ準備が……。あの儀式は危険すぎます」

「黙りなさい! 私が偽物だとバレるくらいなら、死んだほうがマシですわ!」

 リリアンナはヒステリックに叫ぶ。追い詰められた彼女は、もはや正常な判断力を失っていた。

 彼女がやろうとしている最後の手段。それは、呪具の力を暴走させ、大陸中に残る魔王の魔力の痕跡を強制的に集め、全てを自分の力へと変換する禁断の儀式だった。

 成功すれば、彼女は真の聖女をも超える絶大な力を手に入れることができる。しかし、失敗すれば、暴走した呪力が王国そのものを飲み込み、大惨事を引き起こす危険な賭けでもあった。

「儀式の準備を急がせなさい。そして、最後の遺物……『守護の宝剣』をこの祭壇へ。あれを生贄に捧げれば、儀式の成功率は格段に上がるはず」

「かしこまりました……」

 宰相は深々と頭を下げたが、その顔にはリリアンナにも見せない野心が浮かんでいた。彼は、彼女が手に入れるであろう強大な力を、いずれは自分が乗っ取ろうと画策していたのだ。

 二人の欲望が渦巻く中、王国の運命を左右する邪悪な儀式の準備が、着々と進められていく。偽りの聖女の焦りが、世界を新たな混沌へと導こうとしていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

【完結】マジで婚約破棄される5秒前〜婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ悪役令息は一体どうしろと?〜

明太子
BL
公爵令息ジェーン・アンテノールは初恋の人である婚約者のウィリアム王太子から冷遇されている。 その理由は彼が侯爵令息のリア・グラマシーと恋仲であるため。 ジェーンは婚約者の心が離れていることを寂しく思いながらも卒業パーティーに出席する。 しかし、その場で彼はひょんなことから自身がリアを主人公とした物語(BLゲーム)の悪役だと気付く。 そしてこの後すぐにウィリアムから婚約破棄されることも。 婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ一体どうしろと? シナリオから外れたジェーンの行動は登場人物たちに思わぬ影響を与えていくことに。 ※小説家になろうにも掲載しております。

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした

和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。 そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。 * 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵 * 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

無愛想な氷の貴公子は臆病な僕だけを逃さない~十年の片想いが溶かされるまで~

たら昆布
BL
執着ヤンデレ攻め×一途受け

【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした

エウラ
BL
どうしてこうなったのか。 僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。 なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい? 孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。 僕、頑張って大きくなって恩返しするからね! 天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。 突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。 不定期投稿です。 本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。

大工のおっさん、王様の側室になる

くろねこや
BL
庶民のオレが王様の側室に?! そんなのアリかよ?! オレ男だけど?! 王妃様に殺されちまう! ※『横書き』方向に設定してお読みください。 ※異母兄を『義兄』と表記してしまっておりました。『兄』に修正しました。(1/18・22:50)

処理中です...