17 / 24
第16話「最後の遺物の在処」
しおりを挟む
魔の森の城へと帰還したカイルは、レイルに二つ目の遺物「忘却の遺跡の羅針盤」を手渡した。羅針盤の力はレイルの魂に働きかけ、英雄に裏切られたという過去の記憶の痛みを和らげた。
彼の呪いは今やかなり弱まり、日中であれば城の中を自由に歩き回れるほどに回復していた。
「これで残るは一つだな」
レイルは穏やかな表情でカイルに告げる。
「はい。最後の遺物は『守護の宝剣』……それがどこにあるのか、この羅針盤が示してくれるはずです」
カイルが羅針盤に魔力を込めると、針はゆっくりと、しかし真っ直ぐに一つの方向を指し示した。南東――そこは、カイルが追放された王国の方向だった。
「やはり……そうか」
カイルの表情が曇る。一縷の望みを持っていたが、羅針盤は無情にも古文書の記述が正しいことを示していた。自分を陥れ、絶望の底に突き落とした王城の宝物庫。あの場所へ戻らなければならないのだ。
「……行きたくないのなら、無理強いはしない」
カイルの葛藤を察したレイルが、優しい声で言う。
「お前の心が癒えぬうちに、辛い場所へ行かせるわけにはいかない。他の方法を探そう」
その言葉は嬉しかった。だが、カイルは静かに首を横に振った。
「ううん、行きます。あなたを完全に救うためには、避けては通れない道だから」
それに、とカイルは続ける。
「リリアンナが俺を追放した理由も、ずっと気になっていました。彼女の力の秘密と、最後の遺物には、何か関係があるのかもしれない」
カイルの瞳には、もはや過去への恐怖はなかった。あるのは、レイルを救うという固い決意と、真実を突き止めようとする強い意志だけだ。
「俺はもう、一人じゃない。レイルさん、あなたがついていてくれるから」
その言葉に、レイルは愛おしそうに目を細めた。
「当然だ。今度はお前一人にはさせん。我も行こう」
「えっ、でも、あなたの体は……」
「呪いはほとんど弱まっている。それに、この姿ならば問題あるまい」
レイルがそう言うと、彼の体が黒い靄に包まれた。そして靄が晴れた時、そこに立っていたのは魔王の姿ではなく、黒髪に深い青色の瞳を持つ、穏やかな雰囲気の青年の姿だった。
人間に化ける魔法だ。魔王の気配は完全に消え、誰も彼の正体に気づくことはないだろう。
「これなら、お前の護衛としてそばにいられる」
そう言って悪戯っぽく笑うレイルに、カイルは驚きながらも、心が温かくなるのを感じた。
「決まりですね。二人で王国へ乗り込みましょう」
カイルは力強く頷いた。
レイルを完全に救うため。そして、自らの過去に決着をつけるため。
二人の最後の旅が、今、始まろうとしていた。
彼の呪いは今やかなり弱まり、日中であれば城の中を自由に歩き回れるほどに回復していた。
「これで残るは一つだな」
レイルは穏やかな表情でカイルに告げる。
「はい。最後の遺物は『守護の宝剣』……それがどこにあるのか、この羅針盤が示してくれるはずです」
カイルが羅針盤に魔力を込めると、針はゆっくりと、しかし真っ直ぐに一つの方向を指し示した。南東――そこは、カイルが追放された王国の方向だった。
「やはり……そうか」
カイルの表情が曇る。一縷の望みを持っていたが、羅針盤は無情にも古文書の記述が正しいことを示していた。自分を陥れ、絶望の底に突き落とした王城の宝物庫。あの場所へ戻らなければならないのだ。
「……行きたくないのなら、無理強いはしない」
カイルの葛藤を察したレイルが、優しい声で言う。
「お前の心が癒えぬうちに、辛い場所へ行かせるわけにはいかない。他の方法を探そう」
その言葉は嬉しかった。だが、カイルは静かに首を横に振った。
「ううん、行きます。あなたを完全に救うためには、避けては通れない道だから」
それに、とカイルは続ける。
「リリアンナが俺を追放した理由も、ずっと気になっていました。彼女の力の秘密と、最後の遺物には、何か関係があるのかもしれない」
カイルの瞳には、もはや過去への恐怖はなかった。あるのは、レイルを救うという固い決意と、真実を突き止めようとする強い意志だけだ。
「俺はもう、一人じゃない。レイルさん、あなたがついていてくれるから」
その言葉に、レイルは愛おしそうに目を細めた。
「当然だ。今度はお前一人にはさせん。我も行こう」
「えっ、でも、あなたの体は……」
「呪いはほとんど弱まっている。それに、この姿ならば問題あるまい」
レイルがそう言うと、彼の体が黒い靄に包まれた。そして靄が晴れた時、そこに立っていたのは魔王の姿ではなく、黒髪に深い青色の瞳を持つ、穏やかな雰囲気の青年の姿だった。
人間に化ける魔法だ。魔王の気配は完全に消え、誰も彼の正体に気づくことはないだろう。
「これなら、お前の護衛としてそばにいられる」
そう言って悪戯っぽく笑うレイルに、カイルは驚きながらも、心が温かくなるのを感じた。
「決まりですね。二人で王国へ乗り込みましょう」
カイルは力強く頷いた。
レイルを完全に救うため。そして、自らの過去に決着をつけるため。
二人の最後の旅が、今、始まろうとしていた。
112
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜
たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
身代わりの出来損ない令息ですが冷酷無比な次期公爵閣下に「離さない」と極上の愛で溶かされています~今更戻ってこいと言われてももう遅いです〜
たら昆布
BL
冷酷無比な死神公爵 × 虐げられた身代わり令息
この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!
ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。
ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。
これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。
ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!?
ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19)
公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年の乙女ゲー転生BLです。
【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。
明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。
新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。
しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…?
冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる