偽りの罪で追放された俺の【緑の手】は伝説級の力だった。不毛の地で運命の番に溺愛され、世界一の穀倉地帯を作って幸せになります

水凪しおん

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番外編「収穫祭と二人の約束」

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 グリューネヴァルト建国後、初めての秋。国中が、黄金色の輝きと、人々の喜びに満ち溢れていた。
 一年で最も大きな祭りである「収穫祭」の日。広場には、山と積まれたカボチャや、色とりどりの野菜、果物が並べられ、中央では大きな焚火がぱちぱちと音を立てて燃えている。その周りでは、領民たちが楽器を奏で、手を取り合って踊っていた。

「エリアス、無理するな。こっちに座っていろ」

 カイは、大きくなった僕のお腹を気遣って、広場の隅に用意された見晴らしの良い席へと導いてくれた。ふかふかのクッションが置かれた椅子に腰を下ろすと、彼は僕の肩に暖かい毛布をかけてくれる。その過保護っぷりには、思わず苦笑が漏れた。

「大丈夫ですよ。私も、少しは皆さんとお話ししたいです」

「ダメだ。お前と、腹の子の体が一番大事だ」

 有無を言わさぬ口調だが、その声には深い愛情がこもっている。僕は、素直に彼の言うことを聞くことにした。
 広場では、宴がたけなわだった。僕の育てた小麦で作ったパン、甘いカボチャのスープ、鹿肉の豪快な丸焼き、そして芳醇な果実酒。誰もが満ち足りた笑顔で、大地の恵みに感謝していた。
 子供たちが、僕の元へ駆け寄ってくる。その手には、野の花で作った可愛らしい花冠があった。

「エリアス様!これ、僕たちで作ったんだ!お腹の赤ちゃんにプレゼント!」

「まあ、ありがとう。とても綺麗ですね」

 僕は、その花冠を優しく受け取り、自分のお腹の上にそっと置いた。お腹の子が、ぽこん、と応えるように動く。子供たちは、それを見て「わぁ!」と歓声を上げた。
 その微笑ましい光景を、カイが父親のような優しい目で見守っている。
 彼がこの国の王で、僕がその伴侶で、そして、この温かい民が、僕たちの家族。血の繋がりはなくとも、僕たちは確かに、一つの大きな家族だった。
 夜が更け、祭りの喧騒が少し落ち着いた頃。
 カイは、僕を連れて、少しだけ広場から離れた丘の上へとやってきた。そこからは、祭りの灯りと、満天の星空の両方を見渡すことができる、僕たち二人だけのお気に入りの場所だった。

「綺麗……」

 眼下に広がるオレンジ色の光の絨毯と、頭上で瞬く星々のダイヤモンド。その美しさに、僕は思わずため息をついた。

「エリアス」

 カイは、僕を後ろから優しく抱きしめた。彼のたくましい腕が、僕とお腹の子をすっぽりと包み込む。彼の胸に背中を預けると、とくん、とくん、という力強い心音が伝わってきて、とても安心した。

「ん?」

「……一年前の今頃は、想像もしてなかったな。こんな未来が来るなんて」

 彼の言葉に、僕も一年前のことを思い出す。絶望の淵にいた、孤独な自分。あの頃の僕が、今のこの光景を見たら、きっと信じられないだろう。

「ええ、本当に。……私、カイに会うまで、幸せになることを諦めていましたから」

「馬鹿なことを言うな」

 カイは、僕の肩に顎を乗せ、囁いた。

「お前は、幸せになるために生まれてきたんだ。俺と出会うために、ここまで来てくれたんだ」

「……カイ」

「約束する、エリアス。俺は、生涯をかけて、お前と、生まれてくる俺たちの子を、必ず幸せにする。この国の民も、この豊かな大地も、全て、俺が守り抜く」

 それは、王としての誓いであり、一人のアルファが、愛する番に捧げる、魂からの約束だった。
 僕は、彼の腕の中で振り返り、その唇にそっと自分の唇を重ねた。

「私も、約束します。私も、生涯をかけて、貴方を愛し続けます。この国を、貴方と一緒に、もっともっと豊かにしていきます」

 どちらからともなく、笑みがこぼれた。
 僕たちの未来には、きっと、たくさんの喜びと、もしかしたら少しの困難が待ち受けているかもしれない。けれど、二人で、そして、この国の皆と一緒なら、どんなことでも乗り越えていける。
 僕たちは、しばらくの間、何も言わずに、ただ眼下に広がる国の灯りを見つめていた。
 それは、僕たちがこれから築いていく、温かくて幸せな未来の光、そのものだった。
 遠くから、領民たちの陽気な歌声が、優しい夜風に乗って聞こえてくる。僕のお腹の中で、小さな命が、再び、ぽこりと幸せそうに揺れた。
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