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第10話「魔王の断罪と修復の魔法」
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目を閉じている間、周囲では絶叫と破壊音が響き渡っていた。
しかし、不思議と恐怖はなかった。
私を抱きしめるザルドリス様の腕が、あまりにも温かく、安定していたからだ。
「……終わったぞ」
しばらくして、静寂が戻った。
恐る恐る目を開けると、そこには信じられない光景が広がっていた。
勇者アルヴィンとその仲間たちは、部屋の隅で一塊になって縛り上げられていた。
それも、ただの縄ではない。
私が作りかけていた「失敗作の超粘着性スライムクッション」の中身に絡め取られ、身動き一つ取れない状態になっていたのだ。
「な、なんだこれは……取れない!?」
「ベタベタして気持ち悪いぃぃ!」
彼らは情けなく喚いている。
ザルドリス様は冷ややかな目で彼らを見下ろした。
「殺しはしない。死よりも重い労働を与えてやる」
彼は指をパチンと鳴らした。
すると、床から影のような手が伸び、勇者たちをズルズルと引きずり始めた。
「城の地下牢だ。リノが以前いた場所よりも、遥かに環境の悪い最下層へ案内しろ。そこで一生、この城の魔力炉の燃料となる石炭を掘り続けろ」
「や、やめろ! 俺は勇者だぞ!」
「勇者? 知らんな。私の城を汚したただの害虫だ」
ザルドリス様は一顧だにせず、彼らを排除した。
声が遠ざかり、完全に聞こえなくなると、彼はふぅと息を吐いて私に向き直った。
その瞳から赤い光が消え、いつもの琥珀色に戻っている。
「……怪我はないか」
「はい、私は大丈夫です。でも……」
私は周囲を見渡した。
無惨に焼け焦げた部屋。
灰になった家具たち。
私が丹精込めて作った「巣」は、見る影もなかった。
ショックで膝から崩れ落ちそうになる。
「ああ、私の……クッションが……カーテンが……」
涙がまた滲んでくる。
ザルドリス様は、そんな私の前にしゃがみ込み、私の手を取った。
「泣くな」
「で、でも……全部、燃えちゃいました……」
「また作ればいい」
彼は事もなげに言った。
「材料ならいくらでも用意する。魔界中の最高級品を集めてやる。お前の好きなように、何度でも」
「……魔王様」
「それに、見てみろ」
彼が指差した先では、ギルをはじめとする魔物たちが、煤だらけになりながらも起き上がり、瓦礫を片付け始めていた。
「リノ様! この椅子、脚は折れてますが、クッション部分は無事です!」
「こっちのラグも、洗えば使えそうです!」
彼らは誰一人として、諦めていなかった。
むしろ、「またリノ様と一緒にリフォームができる」とでも言いたげな、前向きな活気に満ちていた。
「……みんな」
胸が熱くなる。
ここは、物だけの場所じゃなかった。
ここにいるみんなとの絆こそが、本当の「巣」だったんだ。
「リノ」
ザルドリス様が、私の頬に手を添えた。
「この城は、お前の城だ。お前がいる限り、ここは何度でも蘇る」
その言葉は、どんな魔法よりも強力に、私の心を修復してくれた。
「……はい!」
私は涙を拭った。
そうだ、泣いている場合じゃない。
前よりずっと素敵に、もっと快適に作り直してやる。
防炎加工もバッチリ施して、二度と燃えない最強の巣を作ってやるんだ。
「魔王様、覚悟してくださいね。今度は予算、青天井で請求しますから!」
私が冗談めかして言うと、ザルドリス様は楽しそうに目を細めた。
「望むところだ。私の財産を使い切るつもりでやれ」
こうして、魔王城の「大改装計画・フェーズ2」が幕を開けたのだった。
それは、単なる修復作業ではなく、私たち二人の、そして城のみんなの新たな絆を紡ぐ作業でもあった。
しかし、不思議と恐怖はなかった。
私を抱きしめるザルドリス様の腕が、あまりにも温かく、安定していたからだ。
「……終わったぞ」
しばらくして、静寂が戻った。
恐る恐る目を開けると、そこには信じられない光景が広がっていた。
勇者アルヴィンとその仲間たちは、部屋の隅で一塊になって縛り上げられていた。
それも、ただの縄ではない。
私が作りかけていた「失敗作の超粘着性スライムクッション」の中身に絡め取られ、身動き一つ取れない状態になっていたのだ。
「な、なんだこれは……取れない!?」
「ベタベタして気持ち悪いぃぃ!」
彼らは情けなく喚いている。
ザルドリス様は冷ややかな目で彼らを見下ろした。
「殺しはしない。死よりも重い労働を与えてやる」
彼は指をパチンと鳴らした。
すると、床から影のような手が伸び、勇者たちをズルズルと引きずり始めた。
「城の地下牢だ。リノが以前いた場所よりも、遥かに環境の悪い最下層へ案内しろ。そこで一生、この城の魔力炉の燃料となる石炭を掘り続けろ」
「や、やめろ! 俺は勇者だぞ!」
「勇者? 知らんな。私の城を汚したただの害虫だ」
ザルドリス様は一顧だにせず、彼らを排除した。
声が遠ざかり、完全に聞こえなくなると、彼はふぅと息を吐いて私に向き直った。
その瞳から赤い光が消え、いつもの琥珀色に戻っている。
「……怪我はないか」
「はい、私は大丈夫です。でも……」
私は周囲を見渡した。
無惨に焼け焦げた部屋。
灰になった家具たち。
私が丹精込めて作った「巣」は、見る影もなかった。
ショックで膝から崩れ落ちそうになる。
「ああ、私の……クッションが……カーテンが……」
涙がまた滲んでくる。
ザルドリス様は、そんな私の前にしゃがみ込み、私の手を取った。
「泣くな」
「で、でも……全部、燃えちゃいました……」
「また作ればいい」
彼は事もなげに言った。
「材料ならいくらでも用意する。魔界中の最高級品を集めてやる。お前の好きなように、何度でも」
「……魔王様」
「それに、見てみろ」
彼が指差した先では、ギルをはじめとする魔物たちが、煤だらけになりながらも起き上がり、瓦礫を片付け始めていた。
「リノ様! この椅子、脚は折れてますが、クッション部分は無事です!」
「こっちのラグも、洗えば使えそうです!」
彼らは誰一人として、諦めていなかった。
むしろ、「またリノ様と一緒にリフォームができる」とでも言いたげな、前向きな活気に満ちていた。
「……みんな」
胸が熱くなる。
ここは、物だけの場所じゃなかった。
ここにいるみんなとの絆こそが、本当の「巣」だったんだ。
「リノ」
ザルドリス様が、私の頬に手を添えた。
「この城は、お前の城だ。お前がいる限り、ここは何度でも蘇る」
その言葉は、どんな魔法よりも強力に、私の心を修復してくれた。
「……はい!」
私は涙を拭った。
そうだ、泣いている場合じゃない。
前よりずっと素敵に、もっと快適に作り直してやる。
防炎加工もバッチリ施して、二度と燃えない最強の巣を作ってやるんだ。
「魔王様、覚悟してくださいね。今度は予算、青天井で請求しますから!」
私が冗談めかして言うと、ザルドリス様は楽しそうに目を細めた。
「望むところだ。私の財産を使い切るつもりでやれ」
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