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第12話「魔王城の新たな主」
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番の契約を結んでからの変化は劇的だった。
まず、私が城内で「魔王妃」として扱われるようになったことだ。
「リノ様、本日のご予定は?」
「リノ様、新しい献上品が届いております」
ギルをはじめとする魔物たちは、以前にも増して私を崇拝し、甘やかしてくる。
「魔王妃って柄じゃないんだけどなぁ……」
私が困惑していると、ザルドリス様が背後から抱きついてくるのが日課になった。
「気にするな。実質、この城を支配しているのはお前だ」
「それは言い過ぎです」
「いや、本当だ。お前が『このクッションの配置はこっち』と言えば、私も部下も絶対服従だからな」
彼は私の首筋に顔を埋め、深呼吸する。
番になってから、彼のスキンシップは激しさを増していた。
執務中でも隙あればくっついてくるし、寝る時は絶対に私を離さない。
「ザルドリス様、重いです」
「充電中だ。……お前の匂いを嗅いでいないと、落ち着かん」
完全な「分離不安」状態である。
あの冷徹だった魔王様が、今では私の後ろをついて回る大型犬のようだ。
でも、それが嫌じゃない。
むしろ、愛おしい。
ある日、私は城の中庭を改装することにした。
殺風景だった岩場を、花と緑で溢れる庭園に変える計画だ。
「ここに東屋を建てて、昼寝ができるようにしましょう」
「いいな。そこでお茶を飲もう」
ザルドリス様もノリノリだ。
私たちは二人で土をいじり、種を撒いた。
魔界の植物は成長が早く、数日もすれば色とりどりの花が咲き乱れた。
その庭で、魔物たちがピクニックをしているのを見た時、私は本当にここに来てよかったと思った。
かつては恐怖の象徴だった魔王城が、今では笑い声の絶えない、世界一平和な場所になっている。
「リノ」
ザルドリス様が、咲いたばかりの一輪の花を摘んで、私の髪に挿してくれた。
「似合うぞ」
「ありがとうございます。……ふふ、魔王様も」
私はお返しに、彼の角に花飾りを引っ掛けた。
「……おい」
「似合いますよ、可愛い魔王様」
彼は呆れたように溜息をついたが、その花飾りを外そうとはしなかった。
そんな穏やかな日々が、何よりの宝物だった。
そして、ある報告が入った。
人間界から、新たな使者が来たというのだ。
今度は勇者ではない。
「和平交渉」を求める、王国の使節団だった。
勇者一行が行方不明になったこと(地下で労働中だが)、そして魔王城から溢れ出る「強大な幸福のオーラ」に恐れをなした人間たちが、敵対するよりも手を取り合うことを選んだらしい。
「どうする? 追い返すか?」
ザルドリス様が面倒くさそうに言う。
私は少し考えて、答えた。
「会いましょう。そして、見せつけてやるんです」
「何をだ?」
「私たちがどれだけ幸せか、そしてこの城がどれだけ素晴らしいかを。……戦うよりも、ここのクッションで寝た方がいいって、教えてあげましょう」
ザルドリス様はニヤリと笑った。
「なるほど。それはいい復讐であり、最高の布教だな」
こうして、私たちは使節団を迎えることにした。
もちろん、最高のおもてなしと、人をダメにするクッションを用意して。
まず、私が城内で「魔王妃」として扱われるようになったことだ。
「リノ様、本日のご予定は?」
「リノ様、新しい献上品が届いております」
ギルをはじめとする魔物たちは、以前にも増して私を崇拝し、甘やかしてくる。
「魔王妃って柄じゃないんだけどなぁ……」
私が困惑していると、ザルドリス様が背後から抱きついてくるのが日課になった。
「気にするな。実質、この城を支配しているのはお前だ」
「それは言い過ぎです」
「いや、本当だ。お前が『このクッションの配置はこっち』と言えば、私も部下も絶対服従だからな」
彼は私の首筋に顔を埋め、深呼吸する。
番になってから、彼のスキンシップは激しさを増していた。
執務中でも隙あればくっついてくるし、寝る時は絶対に私を離さない。
「ザルドリス様、重いです」
「充電中だ。……お前の匂いを嗅いでいないと、落ち着かん」
完全な「分離不安」状態である。
あの冷徹だった魔王様が、今では私の後ろをついて回る大型犬のようだ。
でも、それが嫌じゃない。
むしろ、愛おしい。
ある日、私は城の中庭を改装することにした。
殺風景だった岩場を、花と緑で溢れる庭園に変える計画だ。
「ここに東屋を建てて、昼寝ができるようにしましょう」
「いいな。そこでお茶を飲もう」
ザルドリス様もノリノリだ。
私たちは二人で土をいじり、種を撒いた。
魔界の植物は成長が早く、数日もすれば色とりどりの花が咲き乱れた。
その庭で、魔物たちがピクニックをしているのを見た時、私は本当にここに来てよかったと思った。
かつては恐怖の象徴だった魔王城が、今では笑い声の絶えない、世界一平和な場所になっている。
「リノ」
ザルドリス様が、咲いたばかりの一輪の花を摘んで、私の髪に挿してくれた。
「似合うぞ」
「ありがとうございます。……ふふ、魔王様も」
私はお返しに、彼の角に花飾りを引っ掛けた。
「……おい」
「似合いますよ、可愛い魔王様」
彼は呆れたように溜息をついたが、その花飾りを外そうとはしなかった。
そんな穏やかな日々が、何よりの宝物だった。
そして、ある報告が入った。
人間界から、新たな使者が来たというのだ。
今度は勇者ではない。
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勇者一行が行方不明になったこと(地下で労働中だが)、そして魔王城から溢れ出る「強大な幸福のオーラ」に恐れをなした人間たちが、敵対するよりも手を取り合うことを選んだらしい。
「どうする? 追い返すか?」
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「会いましょう。そして、見せつけてやるんです」
「何をだ?」
「私たちがどれだけ幸せか、そしてこの城がどれだけ素晴らしいかを。……戦うよりも、ここのクッションで寝た方がいいって、教えてあげましょう」
ザルドリス様はニヤリと笑った。
「なるほど。それはいい復讐であり、最高の布教だな」
こうして、私たちは使節団を迎えることにした。
もちろん、最高のおもてなしと、人をダメにするクッションを用意して。
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