捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん

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第13話「世界一のマイホーム」

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 使節団の反応は、予想通り……いや、予想以上だった。
 緊張した面持ちで城に入ってきた彼らは、一歩足を踏み入れた瞬間に骨抜きにされた。
「な、なんだこの床は……!」
「雲の上を歩いているようだ……」
「この椅子、座った瞬間に腰痛が消えたぞ!?」
 殺気立っていた騎士たちは、待合室のソファに沈み込み、五分で寝息を立て始めた。
 外交官たちは、出されたハーブティーとパンケーキに涙を流して感動した。
 そして、私とザルドリス様が並んで現れた時、彼らは平伏した。
 恐怖からではない。
 二人から溢れ出る、圧倒的な「幸せオーラ」に当てられたのだ。
「魔王様、そして……お妃様」
 使者の代表が震える声で言った。
「我々は、完全に誤解しておりました。ここは地獄などではなく、地上の楽園だったのですね」
「その通りだ」
 ザルドリス様は私の肩を抱き寄せ、堂々と言い放った。
「ここは私の妻、リノが作り上げた最高の城だ。争いなどという野蛮な行為で、この空気汚すことは許さん」
「は、はい! 直ちに不可侵条約を……いや、友好条約を結ばせてください! そして、できればこのクッションの作り方を教えていただけないでしょうか!?」
 交渉は、あっという間にまとまった。
 人間界と魔界の間に、歴史的な和平が結ばれたのだ。
 その立役者が「人をダメにするクッション」だったことは、後の歴史書に記される……かどうかは定かではない。

 それから数年。
 魔王城は、さらに進化を遂げていた。
「巣」は城全体に留まらず、城下町にまで広がっていた。
 私の考案したインテリアや寝具は、魔界の特産品として人間界にも輸出され、莫大な利益を生み出していた。
 その利益で、さらに良い素材を買い、城を改装する。
 その無限ループだ。
「リノ、そろそろ休まないか」
 工房で新しいデザインを考えていると、ザルドリス様が迎えに来た。
「あと少しだけ……」
「ダメだ。今日は結婚記念日だぞ」
「あ、そうでした!」
 私はペンを置き、彼に駆け寄った。
 ザルドリス様は私を軽々と抱き上げ、寝室へと運んでいく。
「今日は特別に、一日中ベッドから出さないからな」
「ええーっ、それは困ります」
「困らない。……どうせお前も、私の匂いが恋しいんだろう?」
 図星を突かれて、私は顔を赤くした。
 寝室に入ると、そこには私たちが最初に作った、あの継ぎ接ぎのクッションが大切に飾られていた。
 全ての始まり。
 寒くて、怖くて、絶望していたあの日。
 でも、今は違う。
「……幸せです、ザルドリス様」
「私もだ、リノ」
 私たちは、世界一フカフカのベッドに身を沈めた。
 窓の外には、平和な魔界の風景が広がっている。
 かつて「生贄」として捨てられた私は、今、世界で一番愛される「魔王の妻」として、この温かい巣の中心にいる。
 オメガの巣作り本能。
 それは、ただ場所を作るだけじゃない。
 愛する人と共に生きる、幸せな世界を作る力だったのだ。
 私はザルドリス様の胸に顔を埋め、満ち足りた気持ちで目を閉じた。
 明日もまた、ここで新しい「何か」を作ろう。
 大好きな人と一緒に。
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