芙蓉は後宮で花開く

速見 沙弥

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出会い

53話

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 服の選定に入った蓮花はとりあえず全体の雰囲気から決めることにする。

「綉礼様は当日髪型を纏めるか下ろされる、どうされます?」
「纏めようと思っています」
「わかりました」

 綉礼の鮮やかな髪色は下ろしていると濃色だと映えないものもあるだろう。しかし纏めるのであれば髪の赤が服の印象に影響することもあまりないので、多少の濃色は問題ないだろう。
 食事は夕食だというから少し落ち着いた色味のものでもよさそうだと蓮花は考えて服を見ていく。
 その中で梔子くちなし色のおう上衣じょうい)を見つけた。襖を濃色にしようかと考えていたが、その梔子色の衣を見たとき綉礼の髪色に映えると直感的に感じる。施されている刺繡もあまり主張しすぎない絵柄だった。
 蓮花はその襖を取るとこの服を身につけたときの綉礼の姿を頭に浮かべながらそれに合うくん下裳かしょう)を探す。
 夜の落ち着いた雰囲気を出すのであれば青や黒系統か――緑の裙をめくるとそこには群青の裙が出てきた。
質素だが裾の方にある花の刺繍には銀糸が所々に使われており光を反射によってきらりと程よい輝きを見せる。

 綉礼の赤髪には一見合わないように見えるが間に梔子色の襖があることで上手く間を馴染ませている。

 蓮花はこの組み合わせに納得して綉礼へと提案する。

「綉礼様、こちらはいかがでしょうか。髪は後ろで一つにまとめたものを、挙げずにそのまま団子を作らず垂らしておくと襖と綉礼様の髪色が綺麗に映えると思いました」

 綉礼は蓮花の提案した組み合わせを見て笑みが浮かぶ。友人が自分のことを思って提案してくれたという喜びもあるが、綉礼も蓮花の選んだ梔子色と群青の組み合わせがとても素敵で着てみたいと思った。

「素敵です……これにします! ありがとうございます蓮花さん」

 蓮花の両手を握り満面の笑顔を見せる綉礼に蓮花も嬉しくなり口角が上がる。

 髪飾りは綉礼が自分で選び、蓮花と綉礼二人でで考えた服装が完成した。

「これで雲嵐様に会うのが楽しみです」
「いっぱいお話できたらいいですね」
「はい!」

 心配の種が減った綉礼はおやつを用意してもらい蓮花とゆっくりお茶会を楽しむことにした。

 綉礼の服でどの服のここがいい、あの髪飾りはこういう場面で映える、と情報を二人で話しているとすっかりに日も落ち始め窓の外は夕焼けに染まっていた。

 蓮花は綉礼に見送られ宋家の邸を後にする。帰路につきながら綉礼の服の多さと趣味の良さに感服した。
 蓮花の家にも公式の場で着れるような服は二着程あるが、普段着は汚れてもいいような麻の布の服が多い。
 蓮花も綺麗な格好に憧れがない訳では無かったが綉礼の服を見れただけでも充分楽しかったので満足だ。

 綺麗な服に触れられた蓮花は足取り軽く家路を辿って行った。
 
 
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