芙蓉は後宮で花開く

速見 沙弥

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出会い

52話

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 蓮花は今度は自宅に届いた綉礼の文からの誘いによって再び宋家の屋敷を訪ねていた。

 綉礼の部屋に入ると部屋のあちらこちらに衣服が飾られていた。以前の部屋の様子との違いに驚いていると綉礼が慌てて寄ってくる。

「蓮花さん、お出迎え出来ず申し訳ありません」
「いえ、気になさらないでください。それよりどこかにお出掛けですか?」 

 蓮花は綉礼にこの部屋の状況の理由を聞く。すると綉礼は恥ずかしそうにもじもじとしながら教える。

「そ、それが……、雲嵐様が今度うちにいらっしゃるんです。夕食をこちらで召し上がるようで」
「あ、そうなんですね」
「気が早いとは重々承知しているんですが、今からとても緊張してしまって……」

 ほう――と息を吐く彼女の様子から興奮しているのが伝わる。

「幼馴染であればそういう機会は今まであったんじゃ?」
「昔はよくあったんです。でも私は最近は羽州の方にいましたので、長時間雲嵐様と同じ空間にいること自体が久しぶりなんです」

 事情を聞いて綉礼の緊張具合に納得がいった蓮花は、雲嵐の気持ちをこの前知ってしまったこともありとても微笑ましい気持ちになる。

「それで、もし蓮花様がよろしければ一緒に服を考えてくださいませんか? 自分の服の善し悪しはよく分からなくて」
「私で良ければ喜んで! あ、でも私がお勧めしたものでも綉礼様が着たいって思っていただけた服にして下さいね」
「わ、分かりました。でも何故ですか? 私の主観より他の方から見て一番の服がいいと思うのですが」

 蓮花の言葉に不思議そうに首を傾げる綉礼。

「確かに、周りから見て似合っているものもいいです。でも大事なのは綉礼様が来てて楽しいとか気分が上がるものがいいと思うんです。だって自分が好きな服や飾りをを着たり付けているとそれだけでにこにこできませんか?」
「確かに、お気に入り物を付けている時は目に入る度に頬が緩んでいるかもしれません」
「きっと雲嵐様にも無理に綺麗な服を着るより、そういうにこにこした表情を見せた方が喜ばれると思います」

 ね?と綉礼に笑いかけると、彼女もうんうんと首を大きく縦に振った。

「では、よろしくお願いします!」

 ずらりと並べられた衣服、宝飾品を見て蓮花は感嘆の声をもらす。やはり上級貴族の方のものは一級品ばかりで手に取るのも恐る恐るになってしまいそうだ。

「では、綉礼様がこれは絶対に外せないというものはありますか?」
「外せないもの……。――この腕輪でしょうか」

 綉礼は自身の腕に付けているものを蓮花に見せる。
 指二本分くらいの幅で銀の細やかな細工に、中心には乳白色の丸い宝石がはまっている。その周囲には同じようなにごりをして薄桃色の小さめの石が適度にちりばめられていた。綉礼の柔らかな雰囲気にとてもよく似合っている。

「とても綺麗ですね。これはご自分で?」
「いえ、雲嵐様が三年ほど前にくださいました。私の十五歳の誕生日に。セラム王国には誕生日当日にお祝いをする文化があるようでそれを真似てみたと仰っていました」
「それは素敵ですね――ではそれは決定ということで、他のものを決めていきましょう」

 この数の服から決めるのは大変そうだと思いながら、蓮花は綉礼と服を選んでいるこの状況が楽しかった。
 気合を入れて袖まくりをして蓮花は服の群れに向き合った。



 
  
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