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仲間たちとの旅行
第38話 クルーズの旅路へ
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旅行の話が持ち上がったのは、数ヶ月前のことだった。皆が揃って出かける機会を作ろうと言っていたけれど、各々の忙しさや配信活動に紛れて具体化されずにいた。だが、ようやく全員のスケジュールに空きが生まれることになった。
星華の仕事が一段落して、まとまった休暇が取得できるようになった。そのタイミングに合わせて、ハヤトはシールド・エージェントの上司に休暇を申請。城介も投資会社の業務を一時的に休むことにした。学校が夏休みに入っていた莉々も参加できる。剛は少し無理を言って仕事を調整し、なんとか5人全員が揃う貴重な機会が実現した。
「これだけ苦労して休みの時間を合わせたんだ。せっかくだから、豪勢に行こう」
城介の提案で決まったのは、7泊8日のクルーズ旅行。東京を出発し、アジア各国に寄港する豪華客船の旅だった。折角の休みだからと剛が手配した最上級の船室は、まさに浮かぶ5つ星ホテルと呼ぶにふさわしいものだという。
数週間の準備期間を経て、旅行当日がやってきた。ハヤトはトランクケースを片手に港へと到着した。朝の光を浴びた海面がきらきらと輝き、潮の香りが鼻をくすぐる。遠くには、巨大な白い客船が見える。
船体に『オーシャン・パラダイス・クルーズ』という名前が青く輝いていた。
「ハヤト! こっち!」
「星華。莉々も」
声のする方に目をやると、すでに星華と莉々が到着していた。星華は爽やかな白のワンピース姿で、彼女の瞳が朝日に照らされて美しく輝いていた。莉々は夏らしい軽やかな服装。大きな船を見上げ、目を輝かせている。
「見て下さい、ハヤト。凄く大きな船!」
「確かに、凄い大きいな」
見上げるほど巨大。豪華客船をこんな近くで見たのは初めてだ。もちろん、乗るのも初めて。頭上では、カモメの群れが鳴き声を上げながら旋回していた。
「城介と剛も、すぐ来るって」
星華が言った。海風が彼女の髪を優しくなびかせる。それに付け加えて、莉々が教えてくれる。
「剛さんは、家族も一緒だそうですよ」
「そういえば、言っていたね」
実は、既婚者だった剛。ハヤトたちは剛から家族のことを聞いていたが、彼の家族と顔を合わせるのは今回が初めてだった。
「おう、待たせたな」
振り返ると、城介が颯爽と歩いてくるところだった。洗練されたサングラスをかけ、ブランド物と思われる軽量キャリーケースを引いている。麻のジャケットにカジュアルなシャツという、クルーズ旅行に似合う洒落た服装。
とても慣れた様子の格好だ。
「この船か」
城介はしばらく船を眺め、何かを計算するように目を細めた。
「この会社の株を少し持ってるんだ。最近、業績好調らしい。アジア地域のクルーズ需要も急増しているからな」
「へぇ、そうなのか」
本当に、色々な情報を持っているなと感心するハヤト。
「さすが情報通」
「ただの投資家の視点だよ」
星華と城介の会話を聞きながら、莉々と一緒に船を見上げていた。
「あ、剛さんが来ましたよ」
しばらくして、莉々が港の入り口に向かって手を振った。
「すまん。待たせたか?」
せわしなく歩いてくる剛の隣には、上品な雰囲気の女性と二人の子どもがいた。剛は普段のビジネススーツから解放され、リラックスした表情を浮かべていた。
「いや、手続きの予定時間まで、もう少しあるから大丈夫」
時計を確認しながら、ハヤトが答えた。
「初めまして、皆さん。剛の妻の楓と申します」
その女性は、ハヤトたちに向けて綺麗な仕草で頭を下げた。凛とした美しさを持つ彼女の傍らには、小学校低学年らしき男の子と、さらに幼い女の子が立っていた。
「鉄村陸です。よろしくおねがいします」
「葵です」
二人とも、年齢の割にしっかりとした口調で挨拶をする。陸は剛に似た凛々しい顔立ちで、葵は母親譲りの優雅さを持っていた。しっかりとした教育を受けているのが伺える。
「初めまして、楓さん。陸くんに葵ちゃん。佐藤隼人です」
ハヤトは柔らかい笑顔で応える。
「高橋莉々です。どうぞよろしく」
莉々は子どもたちの目線に合わせるように少し前かがみになりながら、優しく微笑みかけた。
「森下星華です。楽しい旅行にしましょうね」
星華は上品に頭を下げる。
「影野城介だ。よろしく」
城介も感じのいい笑顔で挨拶した。
「すまんな。俺だけ家族も連れてきてしまって」
剛が少し申し訳なさそうに言った。
「いやいや、全然いいよ。むしろ、家族水入らずの方がよかったんじゃ」
遠慮する剛に、ハヤトは問題ないと答えた。むしろ逆で、彼らの方が剛の家族旅行に割り込んでいるようで気が引けた。だが、それを強く否定したのは楓だった。
「いいえ、そんなことありません。私は嬉しいです。夫にこんな素敵なご友人がいたなんて知りませんでした」
楓も見たことのなかった、友人と自然体で接する剛の姿。彼は妻の楓に仲間たちのことを簡単に説明していたものの、異世界という非現実的な繋がりは説明していなかった。
楓の目にはしっかりと、夫が心を開いて付き合える数少ない友人たちとしてハヤトたちの姿が映っているようだった。
「これからも、夫とは仲良く付き合って下さい」
「それは、もちろん」
星華が穏やかに言った。
「当然」
城介が自信たっぷりに頷いた。
「大事な仲間だから」
莉々が心からの笑顔で微笑んだ。
ハヤトも当然だと頷く。異世界での戦いを通じて培われた彼らの絆は特別なものだ。死をも超えて繋がった魂の絆。この絆が切れることはないと、全員が確信していた。
「パパのおともだち?」
「そうだ。とても大事なお友達だよ」
小さな葵が剛の背中に隠れながら、ハヤトたちの顔をじっくりと見る。無邪気な子どもの目には、彼らの間に流れる特別な空気が見えているのかもしれない。陸は、船のほうに興味があるようで好奇心いっぱいの表情を浮かべていた。
「おっきな船」
「そうだね」
城介がにっこりと笑い、子どもの目線に合わせるように少し屈んだ。
「全長約330メートル、重さは15万トン以上もある。東京タワーをほぼ横にしたのと同じぐらいの長さで、巨大なビルが海に浮かんでいるようなものさ」
「すごい!」
陸の目が輝いた。
「船内には、プールや映画館、それに子ども向けのゲームセンターやウォータースライダー、天文台まであるんですよ」
莉々が子どもたちに船の設備を説明し始めた。彼女の丁寧な語り口に、子どもたちは瞳を輝かせながら聞き入っている。
「この船、医療設備も充実していると聞いている。興味あるわね」
星華はこれから乗り込む豪華客船について、専門家らしい視点で言った。
「しかし船を見ていると、あの時のことを思い出す」
豪華客船を見る剛が、ポツリと呟いた。彼の表情には懐かしさと共に、遠い記憶の痛みが混じっていた。
「ああ、あの時の」
ハヤトは言葉を口には出さず、剛と同じ記憶を思い出す。異世界の旅の途中であった命がけの航海。嵐の中、朽ちかけた船で大海原を渡った時のこと。仲間と共に死線を潜り抜けた記憶が、今でも鮮明に蘇る。
「今回は、豪華なクルーズか」
「あの時大変だった分、今回は楽しもうぜ」
城介が剛とハヤトの肩を叩いた。その言葉に、剛の表情が明るくなる。
「そうだな」
ハヤトも微笑んだ。かつての苦難を乗り越えた彼らには、この平和な時間が何よりの報酬だった。
「そろそろ、乗船の手続きをする時間かな。行こうか」
城介の一言で、一行は客船に向かって歩き始めた。剛は子どもたちの手を取り、船の中での過ごし方について話し合う。陸は城介に色々な質問を投げかけ、葵は剛の手を握って無邪気に笑っていた。
星華と楓は女性同士で会話を弾ませ、城介は時々スマートフォンをチェックしながらも周囲を警戒するように視線を配っていた。
ハヤトは少し後ろから、この光景を眺めていた。異世界での壮絶な戦いから始まった縁が、こうして平和な時間へと繋がっている。それは不思議な感覚だったが、確かな幸せでもあった。
「行きましょう、ハヤト」
莉々が振り返り、声を掛ける。
「ああ」
そして、ハヤトも彼らと一緒に歩き出した。
星華の仕事が一段落して、まとまった休暇が取得できるようになった。そのタイミングに合わせて、ハヤトはシールド・エージェントの上司に休暇を申請。城介も投資会社の業務を一時的に休むことにした。学校が夏休みに入っていた莉々も参加できる。剛は少し無理を言って仕事を調整し、なんとか5人全員が揃う貴重な機会が実現した。
「これだけ苦労して休みの時間を合わせたんだ。せっかくだから、豪勢に行こう」
城介の提案で決まったのは、7泊8日のクルーズ旅行。東京を出発し、アジア各国に寄港する豪華客船の旅だった。折角の休みだからと剛が手配した最上級の船室は、まさに浮かぶ5つ星ホテルと呼ぶにふさわしいものだという。
数週間の準備期間を経て、旅行当日がやってきた。ハヤトはトランクケースを片手に港へと到着した。朝の光を浴びた海面がきらきらと輝き、潮の香りが鼻をくすぐる。遠くには、巨大な白い客船が見える。
船体に『オーシャン・パラダイス・クルーズ』という名前が青く輝いていた。
「ハヤト! こっち!」
「星華。莉々も」
声のする方に目をやると、すでに星華と莉々が到着していた。星華は爽やかな白のワンピース姿で、彼女の瞳が朝日に照らされて美しく輝いていた。莉々は夏らしい軽やかな服装。大きな船を見上げ、目を輝かせている。
「見て下さい、ハヤト。凄く大きな船!」
「確かに、凄い大きいな」
見上げるほど巨大。豪華客船をこんな近くで見たのは初めてだ。もちろん、乗るのも初めて。頭上では、カモメの群れが鳴き声を上げながら旋回していた。
「城介と剛も、すぐ来るって」
星華が言った。海風が彼女の髪を優しくなびかせる。それに付け加えて、莉々が教えてくれる。
「剛さんは、家族も一緒だそうですよ」
「そういえば、言っていたね」
実は、既婚者だった剛。ハヤトたちは剛から家族のことを聞いていたが、彼の家族と顔を合わせるのは今回が初めてだった。
「おう、待たせたな」
振り返ると、城介が颯爽と歩いてくるところだった。洗練されたサングラスをかけ、ブランド物と思われる軽量キャリーケースを引いている。麻のジャケットにカジュアルなシャツという、クルーズ旅行に似合う洒落た服装。
とても慣れた様子の格好だ。
「この船か」
城介はしばらく船を眺め、何かを計算するように目を細めた。
「この会社の株を少し持ってるんだ。最近、業績好調らしい。アジア地域のクルーズ需要も急増しているからな」
「へぇ、そうなのか」
本当に、色々な情報を持っているなと感心するハヤト。
「さすが情報通」
「ただの投資家の視点だよ」
星華と城介の会話を聞きながら、莉々と一緒に船を見上げていた。
「あ、剛さんが来ましたよ」
しばらくして、莉々が港の入り口に向かって手を振った。
「すまん。待たせたか?」
せわしなく歩いてくる剛の隣には、上品な雰囲気の女性と二人の子どもがいた。剛は普段のビジネススーツから解放され、リラックスした表情を浮かべていた。
「いや、手続きの予定時間まで、もう少しあるから大丈夫」
時計を確認しながら、ハヤトが答えた。
「初めまして、皆さん。剛の妻の楓と申します」
その女性は、ハヤトたちに向けて綺麗な仕草で頭を下げた。凛とした美しさを持つ彼女の傍らには、小学校低学年らしき男の子と、さらに幼い女の子が立っていた。
「鉄村陸です。よろしくおねがいします」
「葵です」
二人とも、年齢の割にしっかりとした口調で挨拶をする。陸は剛に似た凛々しい顔立ちで、葵は母親譲りの優雅さを持っていた。しっかりとした教育を受けているのが伺える。
「初めまして、楓さん。陸くんに葵ちゃん。佐藤隼人です」
ハヤトは柔らかい笑顔で応える。
「高橋莉々です。どうぞよろしく」
莉々は子どもたちの目線に合わせるように少し前かがみになりながら、優しく微笑みかけた。
「森下星華です。楽しい旅行にしましょうね」
星華は上品に頭を下げる。
「影野城介だ。よろしく」
城介も感じのいい笑顔で挨拶した。
「すまんな。俺だけ家族も連れてきてしまって」
剛が少し申し訳なさそうに言った。
「いやいや、全然いいよ。むしろ、家族水入らずの方がよかったんじゃ」
遠慮する剛に、ハヤトは問題ないと答えた。むしろ逆で、彼らの方が剛の家族旅行に割り込んでいるようで気が引けた。だが、それを強く否定したのは楓だった。
「いいえ、そんなことありません。私は嬉しいです。夫にこんな素敵なご友人がいたなんて知りませんでした」
楓も見たことのなかった、友人と自然体で接する剛の姿。彼は妻の楓に仲間たちのことを簡単に説明していたものの、異世界という非現実的な繋がりは説明していなかった。
楓の目にはしっかりと、夫が心を開いて付き合える数少ない友人たちとしてハヤトたちの姿が映っているようだった。
「これからも、夫とは仲良く付き合って下さい」
「それは、もちろん」
星華が穏やかに言った。
「当然」
城介が自信たっぷりに頷いた。
「大事な仲間だから」
莉々が心からの笑顔で微笑んだ。
ハヤトも当然だと頷く。異世界での戦いを通じて培われた彼らの絆は特別なものだ。死をも超えて繋がった魂の絆。この絆が切れることはないと、全員が確信していた。
「パパのおともだち?」
「そうだ。とても大事なお友達だよ」
小さな葵が剛の背中に隠れながら、ハヤトたちの顔をじっくりと見る。無邪気な子どもの目には、彼らの間に流れる特別な空気が見えているのかもしれない。陸は、船のほうに興味があるようで好奇心いっぱいの表情を浮かべていた。
「おっきな船」
「そうだね」
城介がにっこりと笑い、子どもの目線に合わせるように少し屈んだ。
「全長約330メートル、重さは15万トン以上もある。東京タワーをほぼ横にしたのと同じぐらいの長さで、巨大なビルが海に浮かんでいるようなものさ」
「すごい!」
陸の目が輝いた。
「船内には、プールや映画館、それに子ども向けのゲームセンターやウォータースライダー、天文台まであるんですよ」
莉々が子どもたちに船の設備を説明し始めた。彼女の丁寧な語り口に、子どもたちは瞳を輝かせながら聞き入っている。
「この船、医療設備も充実していると聞いている。興味あるわね」
星華はこれから乗り込む豪華客船について、専門家らしい視点で言った。
「しかし船を見ていると、あの時のことを思い出す」
豪華客船を見る剛が、ポツリと呟いた。彼の表情には懐かしさと共に、遠い記憶の痛みが混じっていた。
「ああ、あの時の」
ハヤトは言葉を口には出さず、剛と同じ記憶を思い出す。異世界の旅の途中であった命がけの航海。嵐の中、朽ちかけた船で大海原を渡った時のこと。仲間と共に死線を潜り抜けた記憶が、今でも鮮明に蘇る。
「今回は、豪華なクルーズか」
「あの時大変だった分、今回は楽しもうぜ」
城介が剛とハヤトの肩を叩いた。その言葉に、剛の表情が明るくなる。
「そうだな」
ハヤトも微笑んだ。かつての苦難を乗り越えた彼らには、この平和な時間が何よりの報酬だった。
「そろそろ、乗船の手続きをする時間かな。行こうか」
城介の一言で、一行は客船に向かって歩き始めた。剛は子どもたちの手を取り、船の中での過ごし方について話し合う。陸は城介に色々な質問を投げかけ、葵は剛の手を握って無邪気に笑っていた。
星華と楓は女性同士で会話を弾ませ、城介は時々スマートフォンをチェックしながらも周囲を警戒するように視線を配っていた。
ハヤトは少し後ろから、この光景を眺めていた。異世界での壮絶な戦いから始まった縁が、こうして平和な時間へと繋がっている。それは不思議な感覚だったが、確かな幸せでもあった。
「行きましょう、ハヤト」
莉々が振り返り、声を掛ける。
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そして、ハヤトも彼らと一緒に歩き出した。
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