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第12話 結末
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その後、アンセルムや彼の取り巻き達は転落人生を送っているようだ。
王室から除名されたアンセルムは、王都から追い出されて国境近くにある街に移り住んだようだ。現在も、他国に行くこともなく王国内で暮らしているらしい。聞いた噂によると、安酒場に通って酒浸りの自暴自棄な毎日を送っているそうだ。
真実の愛で結ばれたはずのディアヌは、アンセルムを捨てて別の男と一緒になったらしい。しかし、その男が凶悪犯罪者だったらしくて、一緒に捕縛された。その後、まとめて処刑されたという。
実はまだ生きていて、新しい高貴な男性に近づこうと奮闘している、というような話も聞いた。どれが本当なのか分からない。あまり興味もなかったので、調べたりはしなかった。
騎士団長のご子息ウォーレン、大司教様のご子息であるクライド、伯爵家を継いだアンディ。彼らは全員、重要な地位を剥奪されることになった。引き継ぐ予定だった騎士団長や大司教の地位は別の兄弟に。伯爵家は取り潰しとなった。
そして、私は。
「私と、結婚してほしい? それは、本気で言っているの?」
「もちろんだよ、ミレイユ。嘘で、そんな事を言うはずがない」
「それはそうだけど……」
婚約破棄から三年後、私はエリオットに告白された。
理不尽な理由だったとはいえ、私は婚約を破棄された過去がある令嬢。あの後に、婚約を申し込んでくるような人は居なかった。未婚のまま随分と時間も過ぎていき、それでも結婚してくれるような相手は見つからなかった。
このまま、誰とも結ばれずに私は死ぬんだろうと思っていた。
なのに、エリオットから結婚してくれと告白された。信じられなかった。彼が私に告白するなんて、予想もしていなかった。
つい先日、若くして王宮魔法士の長になった彼ならば、婚約の申し込みが殺到しているだろう。彼と関係を結びたい貴族は無数に居るはず。それに比べて私は、彼とは釣り合わない。だから、断ろうと思った。
「私と結婚なんてしちゃ駄目よ。エリオットなら、もっと良い人が見つかるはず」
「いいや、君じゃなきゃ駄目なんだ」
断ったのに、エリオットは決して諦めなかった。彼の目は本気だ。
「私が結婚してほしい相手は、幼い頃からずっと一緒に過ごしてきた、私が恋をしたミレイユなんだ」
「恋……」
まさか、エリオットがそんな事を思っているなんて知らなかった。
「ミレイユがあの人に夢中になっていたように、私も君に夢中だった」
ずっと前から、私のことを密かに恋い慕っていたという。思いを隠していたのは、私が王子と婚約していたから。
婚約破棄の直後、私の心は酷く傷ついていた。その傷も三年という月日が過ぎて、ようやく癒えてきた。そんな私の状態を見て、彼は告白したという。
私が立ち直るまで、エリオットは待ち続けていた。傷ついた私の心につけこむ形で思いを告げるのは、絶対に嫌だったそうだ。それで、三年間も待たせてしまった。
「過去の出来事や、周りの状況なんて何も気にしなくていい。君がどうしたいのか、本心だけ聞かせてくれ」
「私は――」
エリオットは、とても魅力的な男性だった。そんな人に好きだと言われて、とても嬉しく思う。早鐘を打つ胸が苦しくて、でも幸せを感じていた。
アンセルムを好きだった気持ちは本当だ。だけど、失恋した。随分と時間が経ち、新しい恋をしても許されるんじゃないかな。そう思えるぐらい、余裕は出来た。
今はまだ、気持ちの整理が出来ていない。好かれているだなんて、知らなかった。だけどエリオットなら、絶対に好きになれる自信がある。私は、彼と一緒になっても良いのだろうか。
エリオットは、私の本心を聞かせてほしいと言った。それなら。
「私は、これからもエリオットと一緒に居たい。結婚してほしい」
「ミレイユッ……!」
かすれた声で思いを告げると、エリオットに強く抱きしめられていた。暖かくて、心地の良い彼の腕の中に。
王室から除名されたアンセルムは、王都から追い出されて国境近くにある街に移り住んだようだ。現在も、他国に行くこともなく王国内で暮らしているらしい。聞いた噂によると、安酒場に通って酒浸りの自暴自棄な毎日を送っているそうだ。
真実の愛で結ばれたはずのディアヌは、アンセルムを捨てて別の男と一緒になったらしい。しかし、その男が凶悪犯罪者だったらしくて、一緒に捕縛された。その後、まとめて処刑されたという。
実はまだ生きていて、新しい高貴な男性に近づこうと奮闘している、というような話も聞いた。どれが本当なのか分からない。あまり興味もなかったので、調べたりはしなかった。
騎士団長のご子息ウォーレン、大司教様のご子息であるクライド、伯爵家を継いだアンディ。彼らは全員、重要な地位を剥奪されることになった。引き継ぐ予定だった騎士団長や大司教の地位は別の兄弟に。伯爵家は取り潰しとなった。
そして、私は。
「私と、結婚してほしい? それは、本気で言っているの?」
「もちろんだよ、ミレイユ。嘘で、そんな事を言うはずがない」
「それはそうだけど……」
婚約破棄から三年後、私はエリオットに告白された。
理不尽な理由だったとはいえ、私は婚約を破棄された過去がある令嬢。あの後に、婚約を申し込んでくるような人は居なかった。未婚のまま随分と時間も過ぎていき、それでも結婚してくれるような相手は見つからなかった。
このまま、誰とも結ばれずに私は死ぬんだろうと思っていた。
なのに、エリオットから結婚してくれと告白された。信じられなかった。彼が私に告白するなんて、予想もしていなかった。
つい先日、若くして王宮魔法士の長になった彼ならば、婚約の申し込みが殺到しているだろう。彼と関係を結びたい貴族は無数に居るはず。それに比べて私は、彼とは釣り合わない。だから、断ろうと思った。
「私と結婚なんてしちゃ駄目よ。エリオットなら、もっと良い人が見つかるはず」
「いいや、君じゃなきゃ駄目なんだ」
断ったのに、エリオットは決して諦めなかった。彼の目は本気だ。
「私が結婚してほしい相手は、幼い頃からずっと一緒に過ごしてきた、私が恋をしたミレイユなんだ」
「恋……」
まさか、エリオットがそんな事を思っているなんて知らなかった。
「ミレイユがあの人に夢中になっていたように、私も君に夢中だった」
ずっと前から、私のことを密かに恋い慕っていたという。思いを隠していたのは、私が王子と婚約していたから。
婚約破棄の直後、私の心は酷く傷ついていた。その傷も三年という月日が過ぎて、ようやく癒えてきた。そんな私の状態を見て、彼は告白したという。
私が立ち直るまで、エリオットは待ち続けていた。傷ついた私の心につけこむ形で思いを告げるのは、絶対に嫌だったそうだ。それで、三年間も待たせてしまった。
「過去の出来事や、周りの状況なんて何も気にしなくていい。君がどうしたいのか、本心だけ聞かせてくれ」
「私は――」
エリオットは、とても魅力的な男性だった。そんな人に好きだと言われて、とても嬉しく思う。早鐘を打つ胸が苦しくて、でも幸せを感じていた。
アンセルムを好きだった気持ちは本当だ。だけど、失恋した。随分と時間が経ち、新しい恋をしても許されるんじゃないかな。そう思えるぐらい、余裕は出来た。
今はまだ、気持ちの整理が出来ていない。好かれているだなんて、知らなかった。だけどエリオットなら、絶対に好きになれる自信がある。私は、彼と一緒になっても良いのだろうか。
エリオットは、私の本心を聞かせてほしいと言った。それなら。
「私は、これからもエリオットと一緒に居たい。結婚してほしい」
「ミレイユッ……!」
かすれた声で思いを告げると、エリオットに強く抱きしめられていた。暖かくて、心地の良い彼の腕の中に。
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