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第2章 学園編
第09話 始業式の朝
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目覚めてから、一ヶ月が経っていた。
この一ヶ月は、ほとんど家で過ごす日々だった。僕が倒れたのは、ちょうど期末のテストも終わって、春休みに入る前だった。
だから進級するのに問題は無いが、念のために春休みが終わるまで療養という形で休学になっていたらしい。
また倒れると危ないので、外出も控えるようにしていた。外出するときは、家族の誰かが一緒について近所を散歩するぐらい。春休みも終わって、始業式の日。体調も万全だったので、今日から通学を始めることに。
朝、起きて通学の準備をする。制服は昨夜、確認してからクローゼットの中にあるハンガーに掛けてあった。
取り出して、改めて見てみる。制服はブレザーで、当然のようにスカートだった。一ヶ月経過したが、やはりまだスカートを履くという行為に多少の違和感を覚える。だが、スカートを脱いでズボンを履きたくても、クローゼットには一枚も無いのだ。
何日か前に、香織さんにそれとなくズボンが履きたいと言ってみた。そうすると、男の子の履くものじゃないわよ、とバッサリ切り捨てられた。なので、ズボンを履くのは断念した。
今日は始業式だけなので、カバンの中には筆箱とノート以外は何も入っていない。教科書が入っていない分、軽い。
カバンを持って、一階に降りる。台所に掛けてあるエプロンを身につける。昨夜の内に炊飯器にセットしておいた、朝のご飯を確認する。
しっかりと炊けているのを確認して、味噌汁と野菜炒めに焼き魚を作る。味噌汁のためのだしを取る。その間に、チンゲン菜とハムの炒めものを作っている。すると、春お姉ちゃんがダイニングルームに入ってきた。
「おはよう、春お姉ちゃん」
「あぁ、おはよう。優」
春お姉ちゃんは、朝食ができるまでテーブルに着き新聞を読み始める。野菜炒めを作り終えて、味噌汁を作り終えると次に葵がダイニングルームに入ってくる。
「おはよう、葵」
「ッ! お、おはよう……」
挨拶を投げかけると、一応小さな返事が返ってくる。チョコンと、春お姉ちゃんの隣に座ってぼーっとする。彼女には、まだ警戒されているようだ。特に何も言わないけれど、ちょっと悲しい。
魚を焼き終えると、ドタドタと大きな音が聞こえてくる。そして、沙希姉ちゃんが扉を開けて入ってきた。先ほどの大きな音は、彼女の仕業。
「あさごはんっ!」
「おはよう、そこにあるから持ってって」
「おう!」
沙希姉ちゃんは、限界まで寝てから朝の部活練習に行く。なので、朝ごはんを家で食べない。いつものように、夜の内に作っておいたサンドイッチを持っていく。
「じゃあ、いってきま~す」
「いってらっしゃい」
慌ただしく出て行く沙希姉ちゃんを見送って、朝ごはんを皿に盛り付けテーブルに並べていく。
エプロンを取って、僕も席につく。朝ごはんの準備が出来たので、春お姉ちゃんが読んでいた新聞を折りたたみ脇に置く。息を大きく吸い込み、まだ寝ているのだろう紗綾お姉ちゃんに向けて、大きな声で言う。
「紗綾! 朝ごはんが、出来たぞッ! ……よし、これですぐに降りてくるだろう。私達は先に、ご飯をいただくか」
三人で手を合わせる。
「「いただきます」」
「……いただきます」
そして、朝食が始まった。
食べていると、紗綾お姉ちゃんが入ってくる。かなり眠そうだ。のっそりと半寝の状態で、席に着き寝ぼけ眼でご飯を食べ始める。これで家で食べる組の4人が揃ったことになる。
香織さんは朝がとっても早い。なので沙希姉ちゃんと同じく、事前に作った弁当を朝出るときに、持って行ってもらうようにしている。
香織さんと沙希姉ちゃんの2人は、通勤と通学してから食べる組だった。
「ごちそうさま」
春お姉ちゃんがいち早く食べ終わり、洗い場へ食器を持っていく。
「……ごちそうさま」
次に、葵が食べ終わる。洗い場へ食器を置くと、すぐ部屋を出て行く。
「…ご…そう……ま…」
ほとんど寝ている状態で、食べ終わる紗綾お姉ちゃん。危ないので、僕が代わりに食器を片付ける。
みんなの食べ終わった食器を洗い、食器棚に片付ける。
(明日からは、お弁当も作りたいからもうちょっと早めに起きないといけないな)
皿洗いが終わった頃、家を出る予定の時間になっていたのでカバンを持って部屋を出る。
靴を履いていると、春お姉ちゃんが声を掛けてきた。
「優、気を付けてな」
「うん、わかった」
「危なそうなら、途中まで送るが」
「大丈夫だよ」
靴を履き終えて、玄関扉に手をかける。
「じゃあ、いってきます」
「あぁ、いってらっしゃい。本当に気をつけてな」
久々の1人で外出だ。一ヶ月間は、また倒れると危ないので外出は控えるようにと言われたので、なかなか外には出られなかった。
今日からは、もう少し自由に外出する事ができそう。
(雨が降らなくてよかったな)
空を見て、晴れていることを確認する。地図で教えてもらった道を歩く。迷わずに近くの駅まで辿り着けたので、ほっとする。
切符を買って、改札を抜けた。
(帰りに、定期を買わなくちゃいけないんだっけ)
忘れないように、帰りにしなければいけないことを繰り返し思い出した。そして、階段を上がった所で電車を待つ。
“男性車両”と駅のコンコースに書かれているのを確認した所に立って電車の到着を待つ。
車両には、“男性車両”と“女性車両”というのがあるらしい。僕の記憶にあるような女性専用だけではなく、完全に男性と女性の乗る車両を分けているらしい。これも、僕の感覚とは違う要素。
列車が到着したので、乗り込む。
乗客は僕一人だけのようだった。車両内に数名の乗客がいた。全員学生のようで、僕と同じブレザーの制服を着ている。スカートも履いている。つまり、乗客は男性。
隣の車両を見てみると、結構な人数の女性達が電車に乗っているのがわかる。前の記憶の満員電車での通勤を思い出した。
それに比べたら、今のガラガラに空いた車両がすごくありがたい。空いている席に座って、窓の外を見る。ちょっと罪悪感。空いているから、こっちに乗ればいいのにと思うけれど、それは出来ないのだろう。
目的の駅で電車を降りる。駅の改札を通り、学園へ向かう。地図で教えてもらったルートを思い出しつつ、多分同じ学園に行くんだろうと先ほどの同じ制服を着ていた人達の後を、それとなく付いて行く。こっちに目的の学園があるはず。
事前に教えてもらったルートを思い出しながら、前の人を気にして歩く。すると、だんだんブレザーを着た女の子が増えてきた。女子生徒たちはもちろんズボンを履いていた。この道で合っているようだ。
駅から数分程歩いた所で、大きな校舎が見えた。あれが今日から通う学園だろう。前の記憶で通っていた学校とは違う。ちょっと不安を感じる。この学園で合っているのか。
校門を抜けて、校舎に入っていく。まず先に職員室まで来るようにと言われているが、場所がわからない。
壁に掛けてあった時計を見ると、時間がちょっとやばいかもしれない。場所は人に聞くことにする。
「あの、職員室ってどこですか?」
周りを見回して男子生徒が居ないので、近くにいたメガネを掛けた女子生徒に尋ねてみた。
「あっ、えっ? わたし? しょ、あの、えっと……」
かなり、驚かれた。
(ありゃ、やばかったかな)
「あの……、しょくいんしつ、あっちです」
顔を俯かせ指を向けて、場所を教えてくれる。
「ありがとう」
良かった。テンパっていたけれど、ちゃんと教えてくれた。彼女にお礼を言って、職員室を目指して歩き出す。
女子生徒に教えてもらった方向へ歩いて、一度突き当りを右に曲がる。そこには、ちゃんと職員室があった。
「失礼します!」
ノックをしてから、ガラッと扉を横にスライドさせて開ける。
この一ヶ月は、ほとんど家で過ごす日々だった。僕が倒れたのは、ちょうど期末のテストも終わって、春休みに入る前だった。
だから進級するのに問題は無いが、念のために春休みが終わるまで療養という形で休学になっていたらしい。
また倒れると危ないので、外出も控えるようにしていた。外出するときは、家族の誰かが一緒について近所を散歩するぐらい。春休みも終わって、始業式の日。体調も万全だったので、今日から通学を始めることに。
朝、起きて通学の準備をする。制服は昨夜、確認してからクローゼットの中にあるハンガーに掛けてあった。
取り出して、改めて見てみる。制服はブレザーで、当然のようにスカートだった。一ヶ月経過したが、やはりまだスカートを履くという行為に多少の違和感を覚える。だが、スカートを脱いでズボンを履きたくても、クローゼットには一枚も無いのだ。
何日か前に、香織さんにそれとなくズボンが履きたいと言ってみた。そうすると、男の子の履くものじゃないわよ、とバッサリ切り捨てられた。なので、ズボンを履くのは断念した。
今日は始業式だけなので、カバンの中には筆箱とノート以外は何も入っていない。教科書が入っていない分、軽い。
カバンを持って、一階に降りる。台所に掛けてあるエプロンを身につける。昨夜の内に炊飯器にセットしておいた、朝のご飯を確認する。
しっかりと炊けているのを確認して、味噌汁と野菜炒めに焼き魚を作る。味噌汁のためのだしを取る。その間に、チンゲン菜とハムの炒めものを作っている。すると、春お姉ちゃんがダイニングルームに入ってきた。
「おはよう、春お姉ちゃん」
「あぁ、おはよう。優」
春お姉ちゃんは、朝食ができるまでテーブルに着き新聞を読み始める。野菜炒めを作り終えて、味噌汁を作り終えると次に葵がダイニングルームに入ってくる。
「おはよう、葵」
「ッ! お、おはよう……」
挨拶を投げかけると、一応小さな返事が返ってくる。チョコンと、春お姉ちゃんの隣に座ってぼーっとする。彼女には、まだ警戒されているようだ。特に何も言わないけれど、ちょっと悲しい。
魚を焼き終えると、ドタドタと大きな音が聞こえてくる。そして、沙希姉ちゃんが扉を開けて入ってきた。先ほどの大きな音は、彼女の仕業。
「あさごはんっ!」
「おはよう、そこにあるから持ってって」
「おう!」
沙希姉ちゃんは、限界まで寝てから朝の部活練習に行く。なので、朝ごはんを家で食べない。いつものように、夜の内に作っておいたサンドイッチを持っていく。
「じゃあ、いってきま~す」
「いってらっしゃい」
慌ただしく出て行く沙希姉ちゃんを見送って、朝ごはんを皿に盛り付けテーブルに並べていく。
エプロンを取って、僕も席につく。朝ごはんの準備が出来たので、春お姉ちゃんが読んでいた新聞を折りたたみ脇に置く。息を大きく吸い込み、まだ寝ているのだろう紗綾お姉ちゃんに向けて、大きな声で言う。
「紗綾! 朝ごはんが、出来たぞッ! ……よし、これですぐに降りてくるだろう。私達は先に、ご飯をいただくか」
三人で手を合わせる。
「「いただきます」」
「……いただきます」
そして、朝食が始まった。
食べていると、紗綾お姉ちゃんが入ってくる。かなり眠そうだ。のっそりと半寝の状態で、席に着き寝ぼけ眼でご飯を食べ始める。これで家で食べる組の4人が揃ったことになる。
香織さんは朝がとっても早い。なので沙希姉ちゃんと同じく、事前に作った弁当を朝出るときに、持って行ってもらうようにしている。
香織さんと沙希姉ちゃんの2人は、通勤と通学してから食べる組だった。
「ごちそうさま」
春お姉ちゃんがいち早く食べ終わり、洗い場へ食器を持っていく。
「……ごちそうさま」
次に、葵が食べ終わる。洗い場へ食器を置くと、すぐ部屋を出て行く。
「…ご…そう……ま…」
ほとんど寝ている状態で、食べ終わる紗綾お姉ちゃん。危ないので、僕が代わりに食器を片付ける。
みんなの食べ終わった食器を洗い、食器棚に片付ける。
(明日からは、お弁当も作りたいからもうちょっと早めに起きないといけないな)
皿洗いが終わった頃、家を出る予定の時間になっていたのでカバンを持って部屋を出る。
靴を履いていると、春お姉ちゃんが声を掛けてきた。
「優、気を付けてな」
「うん、わかった」
「危なそうなら、途中まで送るが」
「大丈夫だよ」
靴を履き終えて、玄関扉に手をかける。
「じゃあ、いってきます」
「あぁ、いってらっしゃい。本当に気をつけてな」
久々の1人で外出だ。一ヶ月間は、また倒れると危ないので外出は控えるようにと言われたので、なかなか外には出られなかった。
今日からは、もう少し自由に外出する事ができそう。
(雨が降らなくてよかったな)
空を見て、晴れていることを確認する。地図で教えてもらった道を歩く。迷わずに近くの駅まで辿り着けたので、ほっとする。
切符を買って、改札を抜けた。
(帰りに、定期を買わなくちゃいけないんだっけ)
忘れないように、帰りにしなければいけないことを繰り返し思い出した。そして、階段を上がった所で電車を待つ。
“男性車両”と駅のコンコースに書かれているのを確認した所に立って電車の到着を待つ。
車両には、“男性車両”と“女性車両”というのがあるらしい。僕の記憶にあるような女性専用だけではなく、完全に男性と女性の乗る車両を分けているらしい。これも、僕の感覚とは違う要素。
列車が到着したので、乗り込む。
乗客は僕一人だけのようだった。車両内に数名の乗客がいた。全員学生のようで、僕と同じブレザーの制服を着ている。スカートも履いている。つまり、乗客は男性。
隣の車両を見てみると、結構な人数の女性達が電車に乗っているのがわかる。前の記憶の満員電車での通勤を思い出した。
それに比べたら、今のガラガラに空いた車両がすごくありがたい。空いている席に座って、窓の外を見る。ちょっと罪悪感。空いているから、こっちに乗ればいいのにと思うけれど、それは出来ないのだろう。
目的の駅で電車を降りる。駅の改札を通り、学園へ向かう。地図で教えてもらったルートを思い出しつつ、多分同じ学園に行くんだろうと先ほどの同じ制服を着ていた人達の後を、それとなく付いて行く。こっちに目的の学園があるはず。
事前に教えてもらったルートを思い出しながら、前の人を気にして歩く。すると、だんだんブレザーを着た女の子が増えてきた。女子生徒たちはもちろんズボンを履いていた。この道で合っているようだ。
駅から数分程歩いた所で、大きな校舎が見えた。あれが今日から通う学園だろう。前の記憶で通っていた学校とは違う。ちょっと不安を感じる。この学園で合っているのか。
校門を抜けて、校舎に入っていく。まず先に職員室まで来るようにと言われているが、場所がわからない。
壁に掛けてあった時計を見ると、時間がちょっとやばいかもしれない。場所は人に聞くことにする。
「あの、職員室ってどこですか?」
周りを見回して男子生徒が居ないので、近くにいたメガネを掛けた女子生徒に尋ねてみた。
「あっ、えっ? わたし? しょ、あの、えっと……」
かなり、驚かれた。
(ありゃ、やばかったかな)
「あの……、しょくいんしつ、あっちです」
顔を俯かせ指を向けて、場所を教えてくれる。
「ありがとう」
良かった。テンパっていたけれど、ちゃんと教えてくれた。彼女にお礼を言って、職員室を目指して歩き出す。
女子生徒に教えてもらった方向へ歩いて、一度突き当りを右に曲がる。そこには、ちゃんと職員室があった。
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ノックをしてから、ガラッと扉を横にスライドさせて開ける。
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