16 / 60
第1章 姉妹編
閑話07 佐藤沙希とのスポーツ観戦
しおりを挟む
「わっはっはっは!」
テンションが上がりっぱなしで気分良く、意味不明な笑い声をあげていると、優が注意してくる。
「沙希姉さん、そんな大声出してたら近所迷惑だよ」
「良いんだよ! 今日は、シーズン開幕戦だろ。特別な日なんだから、許してくれ。それよりも、私のことを呼ぶときはあ・ね・き、だろ」
「えっと、あ、あねき、ご飯は?」
まだ呼び方には慣れていないようだったが、いつかはこの呼び方を定着させたいと何度もそう呼ばせる。
優に言われたことを考える。
「んっと、試合を見ながら食べたいからさ、お皿こっちに持ってきてよ」
「もう、仕方ないなぁ……」
母さんや春姉さんが居たなら、テレビを見ながら食べるのは、行儀が悪いと言って止められる。だが今日は、家には居ないからOK。なんといってもシーズン開幕戦を後回しにすることは出来ない。一秒たりとも見逃せないから。
今年もやってきた、開幕戦を前にテンションが上がりっぱなしである。試合の前の練習が中継される中、解説が今日の試合のスターティングメンバーを読み上げる。
本当は球場で見たかった。けど、今年は優が大変だったのでチケットを買い忘れてしまったのだ。
優は倒れてから、色々と変わった。料理をするようになったし、優しくもなった。男らしく、キレイにもなった。
しばらくすると、テレビの前に置いてあるテーブルの上に、優が運んできたお皿を並べてくれる。相変わらず、食欲をそそる豪華な夕食に腹がなりそうになる。ただ、いつもよりも量が多い。
「あれっ? お皿多くないか?」
「僕も、こっちで食べようかと思って」
確かに二人分あるようだったが、おかしいことに気づく。
「紗綾と葵は?」
「紗綾姉さんは、用があるからってさっき出かけて行っちゃった。葵は部屋で寝てるみたいで、呼んでも来なかったから。それで今日は、二人きり」
「んー……、そっか。じゃ、先に食べちゃおうか」
二人でいただきますと手を合わせて、夕食を開始する。その時にちょうど、選手の守備練習が終わって、もうすぐ試合が始まる。
しかし、いつものように試合に集中できない。私の横に座って、優も一緒に夕食を食べながら試合を見ている。なんていうか、良い。男と一緒に野球観戦なんて、夢のようなシチュエーション。
「な、なぁ。優も、野球とか興味あるのか?」
「えっ? うーん、そうだなぁ。見るよりも、やる方がいいかも」
「ほ、ほんとか!? じゃぁさ、今度一緒にキャッチボールやるか?」
会話の内容が、なんとなく恋人のような雰囲気を想像させて内心で赤面する。
「いいよ、明日にでもやろう」
「そ、そうか。やるか!」
約束を取り付けて、胸中で喜びながら夕食に手を付ける。明日は、とても良い日になりそうだ。
ご飯を食べ終わり、優と一緒に試合を見る。
俺が途中で解説を加えると、優は感心したように頷いてくれた。興味深そうに試合を一緒に見てくれていた。
球場が熱気にあふれているのが、テレビを見ていても伝わってくる。
球場に行けなかったことを、やっぱり残念に思った。だが、今日一緒に優と試合を見れて良かったとも思う。
いつか優と一緒に、球場まで足を運んで試合を見に行きたいな、と思った。
「やったぁ。勝ったね!」
俺の贔屓にしているチームが勝利して、優が嬉しそうにこちらを見て言う。
「ははっ、このチームは開幕戦だけは強いからなぁ! この勢いに乗って、シーズン通して頑張ってもらいたいけどな」
そう言うと、でもやったねと何度も言って喜んでくれる。
うちの家族は、あまりスポーツを見ない。だから、こんなに共感してくれることはなかったので、家族と一緒に試合を見るというのも良い物だと思った。
「な、なぁ優。もしよかったら、明日の試合も一緒に見ないか?」
「うん、いいよ! 明日もチームを応援しよう!」
なんだか、いろいろと約束を取り付けて悪い気がした。だが、それでもうれしさの方が大きくて、優が嫌な顔をせずに約束してくれたことに女としての喜びを感じる。
やっぱり優は変わった。以前に比べて優しくなったし、以前ダメだったこともするようになった。
このままずっと、今の優のままで居てくれと願う。とりあえず、明日のために優のグローブを準備しようかな。
テンションが上がりっぱなしで気分良く、意味不明な笑い声をあげていると、優が注意してくる。
「沙希姉さん、そんな大声出してたら近所迷惑だよ」
「良いんだよ! 今日は、シーズン開幕戦だろ。特別な日なんだから、許してくれ。それよりも、私のことを呼ぶときはあ・ね・き、だろ」
「えっと、あ、あねき、ご飯は?」
まだ呼び方には慣れていないようだったが、いつかはこの呼び方を定着させたいと何度もそう呼ばせる。
優に言われたことを考える。
「んっと、試合を見ながら食べたいからさ、お皿こっちに持ってきてよ」
「もう、仕方ないなぁ……」
母さんや春姉さんが居たなら、テレビを見ながら食べるのは、行儀が悪いと言って止められる。だが今日は、家には居ないからOK。なんといってもシーズン開幕戦を後回しにすることは出来ない。一秒たりとも見逃せないから。
今年もやってきた、開幕戦を前にテンションが上がりっぱなしである。試合の前の練習が中継される中、解説が今日の試合のスターティングメンバーを読み上げる。
本当は球場で見たかった。けど、今年は優が大変だったのでチケットを買い忘れてしまったのだ。
優は倒れてから、色々と変わった。料理をするようになったし、優しくもなった。男らしく、キレイにもなった。
しばらくすると、テレビの前に置いてあるテーブルの上に、優が運んできたお皿を並べてくれる。相変わらず、食欲をそそる豪華な夕食に腹がなりそうになる。ただ、いつもよりも量が多い。
「あれっ? お皿多くないか?」
「僕も、こっちで食べようかと思って」
確かに二人分あるようだったが、おかしいことに気づく。
「紗綾と葵は?」
「紗綾姉さんは、用があるからってさっき出かけて行っちゃった。葵は部屋で寝てるみたいで、呼んでも来なかったから。それで今日は、二人きり」
「んー……、そっか。じゃ、先に食べちゃおうか」
二人でいただきますと手を合わせて、夕食を開始する。その時にちょうど、選手の守備練習が終わって、もうすぐ試合が始まる。
しかし、いつものように試合に集中できない。私の横に座って、優も一緒に夕食を食べながら試合を見ている。なんていうか、良い。男と一緒に野球観戦なんて、夢のようなシチュエーション。
「な、なぁ。優も、野球とか興味あるのか?」
「えっ? うーん、そうだなぁ。見るよりも、やる方がいいかも」
「ほ、ほんとか!? じゃぁさ、今度一緒にキャッチボールやるか?」
会話の内容が、なんとなく恋人のような雰囲気を想像させて内心で赤面する。
「いいよ、明日にでもやろう」
「そ、そうか。やるか!」
約束を取り付けて、胸中で喜びながら夕食に手を付ける。明日は、とても良い日になりそうだ。
ご飯を食べ終わり、優と一緒に試合を見る。
俺が途中で解説を加えると、優は感心したように頷いてくれた。興味深そうに試合を一緒に見てくれていた。
球場が熱気にあふれているのが、テレビを見ていても伝わってくる。
球場に行けなかったことを、やっぱり残念に思った。だが、今日一緒に優と試合を見れて良かったとも思う。
いつか優と一緒に、球場まで足を運んで試合を見に行きたいな、と思った。
「やったぁ。勝ったね!」
俺の贔屓にしているチームが勝利して、優が嬉しそうにこちらを見て言う。
「ははっ、このチームは開幕戦だけは強いからなぁ! この勢いに乗って、シーズン通して頑張ってもらいたいけどな」
そう言うと、でもやったねと何度も言って喜んでくれる。
うちの家族は、あまりスポーツを見ない。だから、こんなに共感してくれることはなかったので、家族と一緒に試合を見るというのも良い物だと思った。
「な、なぁ優。もしよかったら、明日の試合も一緒に見ないか?」
「うん、いいよ! 明日もチームを応援しよう!」
なんだか、いろいろと約束を取り付けて悪い気がした。だが、それでもうれしさの方が大きくて、優が嫌な顔をせずに約束してくれたことに女としての喜びを感じる。
やっぱり優は変わった。以前に比べて優しくなったし、以前ダメだったこともするようになった。
このままずっと、今の優のままで居てくれと願う。とりあえず、明日のために優のグローブを準備しようかな。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます
neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。
松田は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。
PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。
↓
PS.投稿を再開します。ゆっくりな投稿頻度になってしまうかもですがあたたかく見守ってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる