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第4話
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「それで、本当のところはどうなんだ?」
ルシャード様が、私の顔を覗き込んで問いかける。それよりも先に、下ろしてくれないだろうか。恥ずかしいんだけど。
彼が当たり前のように抱えたままで話を進めるので、私も抱えられたまま仕方なく答える。
「ルシャード様。私は、シャイト子爵令嬢をイジメた覚えはございません。おそらく勘違いなされているのだと思います。なので、どうかここは穏便に」
「何が穏便に、だッ! イジメた覚えはないだと!? 殿下にまで嘘を付くなんて、恥を知れッ!」
「そうよ! ルシャード様に嘘をつくなんて、どこまで卑劣な女なの!」
テスタ伯爵令息が割り込んで、シャイト子爵令嬢が必死に援護する。駄目だ、この二人は。ルシャード様が、不敵な笑みを浮かべる。表情と感情が噛み合っていない。
それなのに、二人はホッと安心していた。ルシャード様は、イジメがあったんだと認めた、なんて思い違いをしているようね。
「恥を知るべき、か」
「そうです! ルシャード様は、その女に現実を認めさせて下さい!」
私の顔を睨みながら、シャイト子爵令嬢が主張する。しかも、目をウルウルとさせながら。ルシャード様に身体を寄せて、服の裾まで掴む。
「そうだな。では、まずお前。誰の許可を得て私に触れ、私の名を呼んでいる?」
「え?」
ルシャード様が一段と低い声で言いながら、シャイト子爵令嬢に掴まれていた裾を強引に振りほどく。私の身体も、ブンと揺れた。ちょっと怖かった。
そして、振りほどかれたマレイラ嬢は理解不能、という表情。
「な、なんで? ルシャード様……?」
「不敬であるぞ。コイツを取り押さえろ」
「ハッ!」
「キャッ!?」
ルシャード様の命令で、観衆の中から数名の近衛が出てきた。シャイト子爵令嬢を両側から抑え込む。注意したのに、即座に名前を呼んで。それは駄目でしょう。
「離してッ! どうしてなの! 私は、ルシャード様の寵愛を受けているのに!?」
「私の寵愛? ハッ! 馬鹿馬鹿しい。私が愛してるのは、過去も現在も未来もこのクリス一人だけだ。お前のことなど、まるで眼中にない」
普段のルシャード様なら、絶対に口には出さない言葉。何か吹っ切れたかのように、人前で言ってのけた。
愛しているとハッキリ言われて、ますます私は恥ずかしい。二人だけのときには、いつも言ってくれる。けれど、人前で言うのは初めてのこと。顔も熱くなってきた。周りの目も気になるし。
「そんな……。だって、私のことを可愛らしいって。面白い、って言ってくれたじゃないですか!!」
「そんなこと、私が言ったのか?」
記憶を探り、いつも行動を共にしている近衛にも尋ねる。聞かれた近衛が、事実を答えた。
「いえ、直接はおっしゃっておりません。周りの方々にシャイト子爵令嬢を紹介されて、その時に『可愛らしい方でしょう?』という話になりました。それで、殿下は『そうだな』と答えたと記憶しております。面白いとおっしゃられたのは、シャイト子爵令嬢があまりにも教養がないために、皮肉でそのようにお答えしてらっしゃいました。それを彼女が曲解して、都合の良いように受け取ったのでしょう」
「思い出した。確か、そうだったな」
おそらく、近衛が語ったことが真実なのだろう。
ルシャード様が、私の顔を覗き込んで問いかける。それよりも先に、下ろしてくれないだろうか。恥ずかしいんだけど。
彼が当たり前のように抱えたままで話を進めるので、私も抱えられたまま仕方なく答える。
「ルシャード様。私は、シャイト子爵令嬢をイジメた覚えはございません。おそらく勘違いなされているのだと思います。なので、どうかここは穏便に」
「何が穏便に、だッ! イジメた覚えはないだと!? 殿下にまで嘘を付くなんて、恥を知れッ!」
「そうよ! ルシャード様に嘘をつくなんて、どこまで卑劣な女なの!」
テスタ伯爵令息が割り込んで、シャイト子爵令嬢が必死に援護する。駄目だ、この二人は。ルシャード様が、不敵な笑みを浮かべる。表情と感情が噛み合っていない。
それなのに、二人はホッと安心していた。ルシャード様は、イジメがあったんだと認めた、なんて思い違いをしているようね。
「恥を知るべき、か」
「そうです! ルシャード様は、その女に現実を認めさせて下さい!」
私の顔を睨みながら、シャイト子爵令嬢が主張する。しかも、目をウルウルとさせながら。ルシャード様に身体を寄せて、服の裾まで掴む。
「そうだな。では、まずお前。誰の許可を得て私に触れ、私の名を呼んでいる?」
「え?」
ルシャード様が一段と低い声で言いながら、シャイト子爵令嬢に掴まれていた裾を強引に振りほどく。私の身体も、ブンと揺れた。ちょっと怖かった。
そして、振りほどかれたマレイラ嬢は理解不能、という表情。
「な、なんで? ルシャード様……?」
「不敬であるぞ。コイツを取り押さえろ」
「ハッ!」
「キャッ!?」
ルシャード様の命令で、観衆の中から数名の近衛が出てきた。シャイト子爵令嬢を両側から抑え込む。注意したのに、即座に名前を呼んで。それは駄目でしょう。
「離してッ! どうしてなの! 私は、ルシャード様の寵愛を受けているのに!?」
「私の寵愛? ハッ! 馬鹿馬鹿しい。私が愛してるのは、過去も現在も未来もこのクリス一人だけだ。お前のことなど、まるで眼中にない」
普段のルシャード様なら、絶対に口には出さない言葉。何か吹っ切れたかのように、人前で言ってのけた。
愛しているとハッキリ言われて、ますます私は恥ずかしい。二人だけのときには、いつも言ってくれる。けれど、人前で言うのは初めてのこと。顔も熱くなってきた。周りの目も気になるし。
「そんな……。だって、私のことを可愛らしいって。面白い、って言ってくれたじゃないですか!!」
「そんなこと、私が言ったのか?」
記憶を探り、いつも行動を共にしている近衛にも尋ねる。聞かれた近衛が、事実を答えた。
「いえ、直接はおっしゃっておりません。周りの方々にシャイト子爵令嬢を紹介されて、その時に『可愛らしい方でしょう?』という話になりました。それで、殿下は『そうだな』と答えたと記憶しております。面白いとおっしゃられたのは、シャイト子爵令嬢があまりにも教養がないために、皮肉でそのようにお答えしてらっしゃいました。それを彼女が曲解して、都合の良いように受け取ったのでしょう」
「思い出した。確か、そうだったな」
おそらく、近衛が語ったことが真実なのだろう。
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