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第3話
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やっぱり助けに来てくれた!
先程までの嫌な気分が、一気に吹き飛ぶ。ルシャード様が側にいることで、全てが良くなった。
「ありがとうございます、ルシャード様」
もっと抱きついていたかった。けれど、周りの視線がある。この姿を、他の人にも見られてしまう。だから私は急いで、彼から離れて立とうとした。だけど。
「ッ!?」
「怪我をしたのか、クリス!? 左足首が赤くなっている!」
彼から離れようとして地面に足をつけると、痺れるような痛みが走った。頭や背中に冷や汗が流れたようで、顔が歪む。
「あっ」
殿下が私の腰をグッと抱えて、足が地面につかないように浮いていた。私の身体を横向きにして、抱き上げられたのだ。
「る、ルシャード様……」
彼の顔が近い。グッと、お肌が触れ合いそうになるほどの距離まで覗き込まれた。とても恥ずかしい。でも真剣な表情で、とても心配してくれているのが分かる。
だから、もう何も言えない。
「すぐに、医務室に連れて」
「ルシャード様! 貴方は王子として、国の為に嫌った相手と結婚しないといけないのでしょう。でも、それって間違っています! 好きでもないのに結婚するなんて、そんなの辛いでしょう!?」
ルシャード様が話している途中で、マレイラ嬢が言葉を被せる。そして、グイッと詰め寄ってくる。彼の、面倒そうな視線に気が付かないのか。
「そうですよ、殿下! しかも、その女は殿下が寵愛しているマレイラ嬢をイジメていたようなのです! そんな女が、王妃になるなんて駄目でしょう?」
「クリスが、そこにいるマレイラ嬢をイジメていたと? それは本当なのか?」
私はルシャード様に抱えられたまま、会話が続いていく。抱えられた私を挟んで、普通に会話しないで! 先に、私を地面に下ろしてほしい!
とっても恥ずかしいわ!?
「はい! 本当です! 私のことを、階段から突き落とそうとしたんですよ!」
「なるほど。それは酷いな」
「そうでしょ!」
ルシャード様が信じたと思って、マレイラ嬢が嬉しそうに笑う。いやいや、そんな喜んでいられないでしょ。彼のことを、ちゃんと見なさい。ルシャード様のオーラが徐々にどす黒く染まっていくのが分からないのかしら。
彼は、とんでもなく怒っている。ヤバいかも……。
「それが、本当だとしたらな」
「ほ、本当です!」
ルシャード様が視線を向けると、マレイラ嬢とリカルドの二人がビクッと震えた。ようやく、ルシャード様の様子を少しだけ理解したみたい。だけど理解が足りない。怒った彼は、もっと怖いんだから。
「ならば、教えてもらおうか」
「はい! なんでしょうか?」
マレイラ嬢は、ビクビクしながらルシャード様の質問に答えようと構える。
「階段から突き落とされたのは、いつだ?」
「え、えっと。3ヶ月ほど前です」
「ほう、3ヶ月前。事件が起きた現場は?」
「が、学園の階段です」
「ならば、オカシイな。3ヶ月前、クリスは公務で学園を休んでいた」
ルシャード様が質問して、矛盾している部分を指摘する。3ヶ月前は、公務だったかしら。そういえば、そうだったかもしれない。
私は忘れていたのに、彼がしっかりと覚えてくれていたらしい。それで、あっさり嘘がバレた。しかも、バレて気まずそうな表情を浮かべるマレイラ嬢。嘘だったことが、顔を見ても明らかだ。
それなのに、彼女は諦めないようだった。
「あ、ち、違いました。えっと、2ヶ月前だったかもしれません」
「ほうほう、なるほど! 2ヶ月前ね」
「はい、そうです!」
ある意味、マレイラ嬢はスゴイわ。こんなに威圧してくるルシャード様に対して、まだ嘘をつこうとするなんて。だけど、往生際が悪い。
「それで、その時に怪我をしたのか?」
「そうなんです! とっても大きな怪我です。それで、私はトラウマになって」
「なるほど。では、どこで治療を受けたのだ?」
「え、えっと……」
「怪我をしたなら、どこかで治療を受けたのだろう。その時の記録が残っているはずだから、それで確認しよう」
「あ、いえ。治療は、えっと……」
「それも、分からないのか?」
あまりにも簡単にボロが出て、ルシャード様も呆れていた。少し突くだけで、すぐ崩れていく。事前に考えていなかったのか。偽の記録とか用意してなかったの?
というか、私はいつまで彼に抱えられたままなのかしら。
先程までの嫌な気分が、一気に吹き飛ぶ。ルシャード様が側にいることで、全てが良くなった。
「ありがとうございます、ルシャード様」
もっと抱きついていたかった。けれど、周りの視線がある。この姿を、他の人にも見られてしまう。だから私は急いで、彼から離れて立とうとした。だけど。
「ッ!?」
「怪我をしたのか、クリス!? 左足首が赤くなっている!」
彼から離れようとして地面に足をつけると、痺れるような痛みが走った。頭や背中に冷や汗が流れたようで、顔が歪む。
「あっ」
殿下が私の腰をグッと抱えて、足が地面につかないように浮いていた。私の身体を横向きにして、抱き上げられたのだ。
「る、ルシャード様……」
彼の顔が近い。グッと、お肌が触れ合いそうになるほどの距離まで覗き込まれた。とても恥ずかしい。でも真剣な表情で、とても心配してくれているのが分かる。
だから、もう何も言えない。
「すぐに、医務室に連れて」
「ルシャード様! 貴方は王子として、国の為に嫌った相手と結婚しないといけないのでしょう。でも、それって間違っています! 好きでもないのに結婚するなんて、そんなの辛いでしょう!?」
ルシャード様が話している途中で、マレイラ嬢が言葉を被せる。そして、グイッと詰め寄ってくる。彼の、面倒そうな視線に気が付かないのか。
「そうですよ、殿下! しかも、その女は殿下が寵愛しているマレイラ嬢をイジメていたようなのです! そんな女が、王妃になるなんて駄目でしょう?」
「クリスが、そこにいるマレイラ嬢をイジメていたと? それは本当なのか?」
私はルシャード様に抱えられたまま、会話が続いていく。抱えられた私を挟んで、普通に会話しないで! 先に、私を地面に下ろしてほしい!
とっても恥ずかしいわ!?
「はい! 本当です! 私のことを、階段から突き落とそうとしたんですよ!」
「なるほど。それは酷いな」
「そうでしょ!」
ルシャード様が信じたと思って、マレイラ嬢が嬉しそうに笑う。いやいや、そんな喜んでいられないでしょ。彼のことを、ちゃんと見なさい。ルシャード様のオーラが徐々にどす黒く染まっていくのが分からないのかしら。
彼は、とんでもなく怒っている。ヤバいかも……。
「それが、本当だとしたらな」
「ほ、本当です!」
ルシャード様が視線を向けると、マレイラ嬢とリカルドの二人がビクッと震えた。ようやく、ルシャード様の様子を少しだけ理解したみたい。だけど理解が足りない。怒った彼は、もっと怖いんだから。
「ならば、教えてもらおうか」
「はい! なんでしょうか?」
マレイラ嬢は、ビクビクしながらルシャード様の質問に答えようと構える。
「階段から突き落とされたのは、いつだ?」
「え、えっと。3ヶ月ほど前です」
「ほう、3ヶ月前。事件が起きた現場は?」
「が、学園の階段です」
「ならば、オカシイな。3ヶ月前、クリスは公務で学園を休んでいた」
ルシャード様が質問して、矛盾している部分を指摘する。3ヶ月前は、公務だったかしら。そういえば、そうだったかもしれない。
私は忘れていたのに、彼がしっかりと覚えてくれていたらしい。それで、あっさり嘘がバレた。しかも、バレて気まずそうな表情を浮かべるマレイラ嬢。嘘だったことが、顔を見ても明らかだ。
それなのに、彼女は諦めないようだった。
「あ、ち、違いました。えっと、2ヶ月前だったかもしれません」
「ほうほう、なるほど! 2ヶ月前ね」
「はい、そうです!」
ある意味、マレイラ嬢はスゴイわ。こんなに威圧してくるルシャード様に対して、まだ嘘をつこうとするなんて。だけど、往生際が悪い。
「それで、その時に怪我をしたのか?」
「そうなんです! とっても大きな怪我です。それで、私はトラウマになって」
「なるほど。では、どこで治療を受けたのだ?」
「え、えっと……」
「怪我をしたなら、どこかで治療を受けたのだろう。その時の記録が残っているはずだから、それで確認しよう」
「あ、いえ。治療は、えっと……」
「それも、分からないのか?」
あまりにも簡単にボロが出て、ルシャード様も呆れていた。少し突くだけで、すぐ崩れていく。事前に考えていなかったのか。偽の記録とか用意してなかったの?
というか、私はいつまで彼に抱えられたままなのかしら。
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