うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

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第5章 戦争

開戦前のようです

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 僕達は、『器』に戻ったセラ様に向かって崇拝するように頭を垂れるニンムス達に、セラ様の意向を伝え、普通に喋ってもらうようお願いしていた。
 結構な時間を説明に使ったが、最終的に皆も恐る恐るではあるが了承してくれたので助かった。
 誰もが、眼前に創造神が現れるなど予想することはできないはずだ。

 皆から見れば、普通に接している僕達の方が異常だと思ってしまうだろう。

「セラ様、それではセラ様がご自身を原因と仰った理由は何でしょうか?」

 すっかり緊張した面持ちで、ニンムスが慣れない敬語でセラ様に話しかけた。

「はい、皆様には難しいお話かもしれませんが、神界では私より先に神となった、アマラという女神がいます」

 セラ様はそう言うと、背中に力を込めると純白の翼を出現させた。

「私は、後から産まれた神。アマラにとって私は妹の様な存在だったのでしょう。とてもよく気にかけてくれました⋯⋯」

 過去を懐かしむように、セラ様が視線を落とした。

「ですが、先程セフィラム教の教会で、神界と繋がった時に、アマラに言われたんです。『本当は貴女が憎かった』って。だから、これは私を消滅させるための彼女の策だったのです、それに私は子供達である皆さんを巻き込んでしまった」

 セラ様の表情からは、自分のことよりも、自分が産み出した世界の住人を巻き込んでしまった、自責の念が浮かんでいた。

「あの時アマラ様はあんなにセラ様のことを気にかけていたはずなのに」

 エラリアのやり取りを思い返せば、未だに信じられない思いだ。

「心当たりはあります。元老院から神格を告げる儀があるのですが、その時に一瞬だけですが、アマラが凄い形相をしたのです。数十億年前の出来事でその一瞬。その後、アマラはユズキさんが見た通りの、優しい姉として接してくれていました。──表向きは」

 セラ様は立ち上がると、窓辺に向かって歩を進める。

「彼女は神界でも、神格が高く序列は第2位でした。ですが、元老院が下した裁定で私は第1位。きっとプライドが高い彼女はそれが許せなかったのだと思います」

 そこまで言うと、セラ様は僕達の方へと向き直った。

「私が、もっとしっかりした神ならば、彼女も納得したのでしょう。でも、ユズキさんは知っていると思いますが、私の神としての資質は潜在能力が評価されてのこと。それが、余計彼女の嫉妬と怒りを買ったのです。──ですから」

 セラ様は何かを口に出そうとしたが、その言葉は飲み込まれた。

「私に力を貸して下さい!今の私は、この『器』に入っているため、神としての能力はほとんど使えません。この世界の為にも、人族と魔族の衝突だけは避けなければいけないのです!」

 必死に訴えるセラ様の姿は、有翼族の少女でしかない。
 だけど、先程の光景とニンムスの狼狽えた姿を目にした室内にいる一同から、彼女を只の少女であると捉える者は誰もいなかった。

「──話は分かりました。だが、この戦争を仕向けたのが、貴女と違う女神だとして、どうして人と魔族の戦争が、貴女に関係があるのです?」

 ベスは、言葉を選びながらもセラ様に質問を口にした。

「この『器』には、私の神としての能力が全て入っています。そして、それは人族の一生を終えるまで、私は死ぬことはありません。──ですが、魔族には。いえ、もしかしたら人族にも私を根本から『消滅』させる手段があるのかもしれません」

「そんなバカな!神を殺すということは、親を殺す様なものじゃ!」

 ニンムスが、激昂した。
 しかし、セラ様は悲しそうに顔を横に振った。

「さすが、森の守護者、大地の語り部と言われるエルフです。その信仰の強さは、とても嬉しいです。ですが、この世界には、今や色んな信仰や信念が溢れています。ドミナントの『魔王』、メナフは『神』すらも踏み台にして、この世界を統べようと考えていました」

 淀みなく話すセラ様からは、普段の少しうっかりしている所は、まるで感じなかった。

「私としては、信仰してくれることは有り難いですが、子はいずれ成長していくもの。信仰は廃れど、人々の営みの中に時折、私のことを感じてくれたら、その程度でも神としては嬉しいのです。──ですが信仰心が大好きな神様もいますから、私は少し変わっているのかもしれませんね」

 セラ様は少し茶目っ気を見せると、はにかみながら笑った。
 確かに、セラ様が産んだ神を奉るラクサス教の成り立ちについては、嘘八百だと怒ることはあったが、その後ラクサス教の教え自体を否定することはなかった。
 アマラ様が『戦い』や『闘争』に主眼を置いているとすれば、セラ様は『調和』に重きを置いているのだろう。

「ですが、セラ様。ワシの力を持ってしてもグリドールの駐屯を止めるには、我々の血をもって止めるしかありません。争えどグリドールは我々を飲み込んでレーベンへ向かうでしょう」

 ニンムスの言葉にセラ様は頷いた。そして、その後僕の顔を見ると、申し訳なさそうに頭を下げた。

「そうなんです。今の私には何の力も持ち合わせておりません。ごめんなさい、ユズキさん。貴方の人生を2度も巻き込んでしまって。これは、私のわがままになってしまうのですが、私はこの世界の子供達の為にも、アマラに殺される訳にはいきません。ユズキさん、私を守ってくれますか?」

 セラ様は僕に、守ってほしいとは言わなかった。
 それは、断っても良いという選択肢も与えられているということだ。
 きっと、さっきセラ様が何かを言い淀んだことと関係があるのだろう。
 だけど、初めから僕の答えは決まっていた。

「勿論です。セラ様のお陰で、僕はこの世界で大切な人達と出会うことができました。ですから、セラ様とセラ様が愛しているこの世界を何があっても守りますよ」

 僕の言葉に、セラ様は目の端にうっすらと涙を浮かべると、深々と頭を下げた。

「ありがとうございます、ユズキさん。人の肉体を得た今、加護を授けることはできませんが、貴方のご恩に報いるため、この身が人として滅びるまで、側にいることを誓いましょう」

 まるで結婚の告白のような言葉に、思わずドキリとしてしまう。

「⋯⋯お前、こうやって女性を増やしてた──ガハッ」

 ベスの言葉を遮るように、サユリがベスの腹部に肘鉄をくらわせたのが視界に写った。

 さて、覚悟は整った。
 後は、どうすれば戦争を防げるかだ。
 眼を閉じて思案していたニンムスが、意を決した様に眼を見開いた。

「ウォーレン!今すぐトナミカ中の冒険者を集めるんじゃ!それから、エラリア及び西方諸国連合への書簡をしたためよ。ワシは頭でっかちの区長の元へ顔を出すぞ。ウォーレン、30分で書をかけ。良ければ、早馬でエラリアへ向かって急行せよ!これより、本ギルドは緊急事態態勢へと移行。トナミカ危機対策本部として機能することを宣言する!」

 ベスが、ニンムスの宣言に驚愕した。

「グリドールと交わした約束をここでひっくり返すのか!?それこそ戦争になるぞ!」

 ベスの言葉にニンムスは、苦笑した。

「なーに、元よりグリドールが進軍すれば、力によってここは自治領とは名ばかりの属領となることは明白じゃった。しかし、その大義が嘘っぱちであったのなら、我々が悪あがきをするのも良かろう。それに──、その悪あがきが、そこのユズキとやらのお陰で、案外悪くない賭けになるのやもしれぬぞ?」

 ニンムスはそう言うと、僕の顔を見てニヤリと笑うのだった。





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